Refined Colors@Studio21

京都造形大Studio21でのRefined Colors公演も,先週に無事終了.
ドイツから帰って,あっという間に仕込み・ワークショップ・クリエーションと過ぎて,一気に本番.メンバーのほとんどが京都に住んでいるだけに,客席には知った顔も多い.ありがたいことです.
内容も,これまで各地で現地のダンサーを交えて展開していたゲストシーンを廃して,最初から最後まで3人のパフォーマーだけで通した.そのために新たに作ったパートも,何とか収まった感じ.最後に,ぎりぎりまで粘って音を作ってくれていた,大度君のがんばりが結構効いている.
その他のシーンも,幾つかブラッシュアップされて,全体的にずいぶん良くなってきたと思う.ただし,照明はちょこちょこ手を加えすぎて,細かなエフェクトが多くなりすぎたきらいがある.次回からは,余分なものを削ぎ落とすような思考に替えていきたい.
日曜の公演が終わったら,次はダム倉庫の引っ越しで,これも2日ほどかけて何とか一段落.ようやくオフィスと倉庫のモノモノ全てが,新しい場所に運び込まれた.
木曜には,近江八幡にあるボーダレスギャラリーNO-MAに「ものと思い出」展を観に行く.娘を連れて,家族3人での初めての小旅行.といっても,近江八幡は案外近い.実は,この春に取り壊した北大路の家がウクレレになって,この展覧会に展示されている.展覧会の趣旨に添って,個人の住居を保存したウクレレばかりを選んで展示してあり,その中の一本.こちらへの引き渡しの前の展示となったので,まだ僕たちも写真でしか見ていなかったウクレレに,NO-MAでご対面.そのうち手元に来るのかと思うと,かなり嬉しい.
その後,八幡堀を半時間程で巡る屋形船に乗る.かなり良いです.他に客も居ず,3人で貸し切り状態.周りの景色が素晴らしい.録音された音声ガイドが,こちらの会話が難しいくらい大きすぎるのが玉に瑕.どうも,ボリューム調節ができないっぽい.それでも,満足できるくらい,気持ちの良い時間でした.
昨晩は,11月に開かれるというアートサミットのプレイベントを見に行く.
http://artists-summit.jp/program/pre/
(このURL,artistsと複数形になっているため,うろ覚えだと検索しづらい.アートサミットとかアーチストサミットでは,googleでもヒットしないので,ちょっと難あり.)
パネリストが,
タナカノリユキ(クリエイティブディレクター、アートディレクター、映像ディレクター)
黛まどか(俳人)
茂木健一郎(脳科学者)
山下泰裕(柔道家、東海大学教授)
それにモデレーターが椿昇という,いかにも椿さんが選んだ感じの方々が集う.
少々寒かったが,ちゃんと雰囲気の作られた野外で,面白い話が聞けた.しかも無料.
京都も,捨てたもんじゃない.

LED lecture

Refined Colorsの副次的な影響というか,5日に造形大の椿さんのクラスで,LED照明に関して話をした.
3回生が,この年末に某ホテルのライティングデコレーションを実際に担当してみるという企画が進んでいて,それがLEDを使ったモノだという事.
まずは,コンピューターでLEDを制御するというところから話をしようと思ったら,あまりコンピューターを使った作品を作ること自体が身近でないということで,ほんのさわりながら二進法の話からする.でも,あまり準備が的確でなく,PBG4の画面をS端子経由でプロジェクションすることになり,見にくい映像でレクチャーすることに.すいません,申し訳ない.
でも,それよりももっとショックだったのは,「電気の作り方,知ってる人」という質問に,20数名の誰も答えなかったこと.ホントに知らなかったのかなぁ...

Ea sola

明日から,新しい作品に参加.
今年の年始に,香港で出会ったアーティストの新作パフォーマンスに,LED照明を持って加わる.ベトナム人で,パリ在住のEa Solaさんの作品で,僕にとっては全くの未知数.彼女は,この5年間劇場作品を作るのは休止していたということで,僕はDVD以外では彼女の作品を知らない.それでも,彼女との会話とその映像を見て,参加を決めた.
ハノイ/ベトナムで作って,グローニンゲン/オランダでリハーサル,パリ/フランスとその他2都市で公演.結構長い旅になる.
初めて一緒に仕事をするので,コレがどういうふうに進むのかも分からないが,彼女は極めて明確なヴィジョンを持っていて,それを現実化していくような人だという印象を受けたので,今まで僕が思いもしなかったようなLEDの使い方ができるかもしれない.つまり,僕のイメージが先行するという作り方じゃなく,まず彼女から何か課題が出てくる可能性が大きい.
未知の人との仕事は,不安もあるが楽しみだ.
11月の上旬は,パリで公演.
とりあえず,明日はトランジットで,クアラルンプールに一泊.
去年,Refined Colors公演でお世話になった人達と,再会の予定.
時間があれば,チャイナタウンのマッサージ屋にも寄りたいなっと.

Hanoi 1

10月13日,まずはクアラルンプールへ.
そんなに混んでないだろうし,空港で1時間半もあれば大丈夫かと思って,少しゆっくり家を出ると,いきなり踏切の故障ではるかが止まる.
最初は漫画を読んでいて,ぜんぜん気がつかなかったのだが,新大阪の手前の駅で長い間動かない.結局30分遅れで動き出したが,関空に近づくにつれ,今度は何かが踏切を横断したといっては,何度も停車する.どうやら閉まったままの遮断機を越えて,無理矢理人などが横断すると,それを感知して停車信号が出る模様.
そんなに踏切があるのかと思って,改めて窓の外を眺めると,あるわあるわ岸和田の近くだと思うが,細い道を断ち切るように線路が走っていて,数十メートルおきに踏切が続く.こりゃ,長い間遮断機が閉まったままだと,ぶち切れて渡り出す人もいるだろう.事実,ちょっと広い道には,長い車の列ができている所もあった.正に悪循環.
結局1時間遅れではるかは関空に到着.マレーシアエアラインのカウンターに走ると,今まさに窓口が閉まったところ.エアラインの表示をはずしているスタッフに,柵の外から声をかけて,何とかチェックイン.そのままスタッフ付き添いでセキュリティー・パスコンと通ることになり,本や雑誌はおろか風邪薬も買えず機内に.
クアラでは,チャイナタウンの真ん中に一泊.去年何度か通ったマッサージ屋のすぐ近くなので,さっそく覗きに行くが,店が跡形もない.楽しみにしていたのに,ショック...
夜は,去年お世話になった交流基金の方と,懐かしの屋台でビールがぶがぶ.
10月14日,ハノイへ.
マレーシアエアラインなので,KLcentralステーションでチェックイン.大きな荷物を預けて身軽に空港へ向かう.
昼過ぎにハノイ着.9年ぶり.3年前くらいにも一度ベトナムに来たが,そのときはサイゴン滞在のみだった.
ハノイは,街路樹というには大きすぎるくらいの木々が街中に茂って,相変わらず美しい.これで,バイクや車のクラクションがなければ,世界でも有数の素晴らしい町かもしれない.
めっきり自転車やシクロは減って,街中はバイクの洪水.おまけに信号はあまり見かけず,車も増えて,それらが有機的にお互いを避けながら動いていく姿は,えもいわれずダイナミック.
ホテルに着いてしばらくしたら,Soがリハーサル場へ案内してくれるために,向かえに来てくれる.彼も今日香港から着いたとのことだが,もう既に何度もリハーサルを観に来ていて,よく事情が分かっている.香港−ハノイ間は飛行機で1時間半とかで,僕が思っていたより近い.日本はやはり東の果てだ.
夜20時から,衣装を付けての通しリハ.
ダンサー達は,知ってはいたがすごく若い.Eaさんは彼/彼女らと3ヶ月,扇風機のみでエアコンがない練習場に籠もって,灼熱の中この作品を作り上げていったとのこと.すごい情熱だと思う.
作品は非常に面白い.Soは「まったく今までになかったユニークな作品だ」というが,僕としては必ずしもそうとは言えない.でも,いま世界の何処で公演しても,遜色のないものだとは思う.
今年になって観た幾つかの作品の中で,気になった公演と何処か通じるものがあるのだ.それは,「まったく新しい」ものではないと思うが,的確にいま必要な何かを内包している.
10月15日
ゆっくり寝ようと思っていたら,朝早くからホテルの部屋を引っ越しすることに.
どの部屋も広くて良いのだが,唯一ある窓の外が隣の壁で,ほとんど日が射さない部屋だったので文句を言ったら,一階上に替えてくれた.外の壁が途切れて,空が見えるのは良いが,朝9時から,さあ移れすぐ移れとせき立てるのは,どうよ?
そのまま勢いに乗って,部屋の模様替え.住み心地のよいスモールオフィスへ.
午後にはまたSoが向かえに来てくれて,欧米旅行者御用達のMOCA CAFEに寄ったあと,練習場へ.
まだ作品の流れが掴めていない僕のために,Eaさんの解説込みで全員で流れだけ通してくれる.数人のダンサーの顔とキャラクターが認識できた.
その後,音の編集のため,ハノイでコンテンポラリー・ミュージックの作曲等をしているという,ミュージシャンの自宅へ.僕は作業があったわけではないが,物見遊山でついていく.
10月16日
昼食に招いてもらって,幸せな午後を過ごす.メニューは若鶏のオーブン焼き一人一羽ずつ.小振りの鶏でちょうど良いボリューム.お腹に餅米と蓮の実が詰めてあって,えもいわぬ滋味.
Eaさんは,ダンサー達への小さなプレゼントをパッキングしている.
今晩もフル・リハーサル.連日の通しリハとその後のミィーティングは,稽古というよりは,ヨーロッパ公演に向けてのある種イニシエーションのようなものなのかも?なんといっても,ほとんどのダンサーにとっては,初めての国外公演.しかもコンテンポラリーダンスの公演.ハノイ国立バレエで学んでいる/いた彼らにとっては,自分たちがちゃんと理解して作品を踊っているのかどうか,ずいぶん不安が残っている模様.加えて,見学に来ていたハノイバレエの関係者らしき人々は,おしなべてコメントせずに帰っていく.
それでも作品の強度が保たれているのは,この三ヶ月でEaさんと彼らの間に信頼関係が築かれているからだろう.

Hanoi 2

昨日20日は,ハノイに来てから初めてのオフ.稽古もないし,誰かと会う予定も連絡が入る約束もない.
だいたい,1日の行動のパターンも決まってきて,朝がかなり遅くなってきているので,昼過ぎくらいまではホテル周辺をうろうろ,その後旧市街の散策に.町の真ん中にあるHOAN KIEM湖北側の職人通りが残るエリアを,歩き回る.このあたりはハノイ屈指の観光エリアでもあり,おみやげ物やさんも多く並ぶが,判子屋さんや墓石屋さんや名物料理屋なども,並木の茂る細い通りに軒を並べている.
ちなみにメモ代わりに現在の物価のことなど書いておくと,朝(といってもかなり遅いが)起きて,朝食は日本でも知られているPho(米の幅広か,割りと太い麺)やBun(米の細い麺)やMien(小麦の半乾燥麺)の汁麺.牛肉がのっていたり生ハーブたっぷりだったり,ワンタンが入っていたりして,だいたい10,000ドン(現在約74円).
それからカフェに行って,コンデンスミルク抜きのコーヒーを頼む.お馴染みのアルミ・フィルターで出てくるが,この頃はサービス競争も激化しているようで,コーヒーが落ちるのを待つ間の繋ぎとして,蓮の実のお茶が付いてきたり,コーヒーが冷めないように深めの受け皿にお湯をはってそこにカップが入っていたりする.この苦くてまったりしたコーヒーがだいたい7,000ドン.
それで,一息入れたら,ネットカフェへ.街中のネットカフェはほぼADSL接続なようで,そこそこ速い.何処に行ってもネットゲームにはまっている子供だらけ.
僕の泊まっているあたりでは日本人旅行者をあまり見かけず,まずはマイクロソフトのダウンロードサイトから,日本語フォントを落として入れることから始めなければいけないが,別に誰もインストールするのを咎めるでもなくプロテクトがかかっているでもない.それで1時間ほどメールチェックやニュースサイトを回って,3,000ドン.なんと25円程度.
しかし,日本語をうつのはなかなか難しく,仕方がないのでホテルの自室からアナログ回線/iPass経由で繋いでいるが(ベトナム国内では,僕の使える他のもう少し安い接続ポイントがない),これが1分20数円の料金がかかる.実に街中の60倍!!!他人の弱みにつけ込んだ,悪徳商法としか思えない.
その他,もし街中で売っているDVDを買うと16,000ドン(120円).全身マッサージ1時間,110,000ドン.旅行者相手の綺麗なカフェで,お洒落な定食とビールで56,000ドンくらい.
今日21日は,最終リハ.
僕はフランスの照明スタッフから仕込み図が送られてくるのを,待っている状態.まだ直接彼らと話したことがないので,どういう経過になっているのか,はっきり分からない.言うなれば僕は,あとから組み込まれた形なので,彼らとしてもLEDの詳細などが分からず,戸惑っているのかもしれない.
とにかく,あと数日のハノイ滞在.少し時間に余裕があるのが嬉しい.
写真は,カフェとDJ屋さんとホテルの部屋.DJ屋さんというのは,外から見ててっきりレコード屋さんかと思って入ったら,ぽつんとPCがあるだけ.どうやら客のリクエストに沿って曲を選んで繋ぎながら,CD-Rに焼いてくれるらしい.らしいというのは,言葉が通じず会話が成り立たなかったので...今度誰か通訳代わりを見つけて,もう一度尋ねてみたい.

Hanoi 3

10月24日
あっという間のハノイ滞在だったが,今日オランダのGroninguen市に向かう.現地のグランドシアターで27日から装置・照明・音響も含めてのリハーサル.パリからフランス人テクニカルチーム,ドイツから映像担当の人も合流する.
実は最初26日からリハと聞いていたので,今日の出発便を押さえたのだが,いつの間にか27日に変わっていた.でもまあ今更変更も出来ないので,僕だけ1日早くGroninguen入りすることに.
このグランドシアターは,不思議な縁で,ダムのダンサーである川口さんが2001年に彼のソロを作ったところでもある.その彼の作品を日本で上演することになり,その時の照明デザインを僕が担当させてもらって,初めてLED照明を使った.そのLED照明が縁で,香港でEaさんと会い今回の仕事になって,今からGrand theatre de Groningenに向かうわけである.
さてさて,パリとハノイとあと実は香港でも動いている人がいて,ちょっとプロダクションのコミュニケーションが悪い感じだが,ついにほとんどのメンバーがオランダに集合する.どうなることか,楽しみだなあ.

Passed 10 years

Stage

Teijiが逝ってから十年.
節目といっても,どういう区切りなんだか,よく分からないけれど,とりあえず今もこうやって,劇場で面白い作品の制作に関わっていられるのは,良いんじゃないかと思う.
ベトナム語とフランス語が飛び交い,時たまちょろっと英語が混じる環境にずっといると,なんだかやけに昔のことを思い出してしまう.脳がちょっと逃避状態になっているのかもしれない.
でも,一緒にやってるフランス人スタッフは,なかなかいい人ばかりで,特に照明を担当しているカルロスは興味深い人物だ.僕はLED照明のみを動かしていて,それ以外は彼がデザインとオペレートをしているが,結構分かるところが多い.
なので,そんなに疎外感があるわけでもないのだが...
まあとにかく,今こうやってオランダの劇場にいて,ダムのではないけれど,新作の立ち上げに関わっているというのは,それなりの十年だと思うし,これからもがんばりたいと思うわけです.
公開リハーサルまで,あと4日.

Groningen

Grand Theatre

ついに着るものがなくなって,朝も早よからコインランドリーへ.朝7時半から開いているということだったのに,8時になってもドアが開かない.
1人で怒りながらホテルへ朝食をとりに戻ると,なんとまだ朝7時.昨日の深夜,オランダの夏が終わったらしい.こんなに寒くて暗くても,まだ夏やったんかい,と突っ込みたくもなるが,まあ1時間儲けたということで,時計を1時間戻して冬時間へ.
ハノイからクアラルンプール経由でアムステルダムまで飛び,そこから列車でGroningenにたどり着くのに,空港での待ち時間も合わせて,ほぼ24時間かかった.
さすがに着いた当日は,日本から送った荷物の確認と劇場をざっと下見するだけで,ダウン.ホテルの横のバーで,人生で一番味無いトンカツ(ウィンナー・シュニッツェルとメニューには書いてあったが,厚さ1センチのスリッパくらいの豚肉に5ミリくらいの衣を付けて,ぱさぱさになるまで揚げた代物)を食べ,ビールを飲んで,夕方5時くらいから翌朝5時まで寝ていた.
劇場は,元映画館とかで,インディペンデントでやんちゃな感じ.アートセンターぽくって面白いが,予算が少ないのか打ち合わせが出来ていないのか,集中して働いてくれるスタッフが少なくて,仕込みも結構行き当たりばったり.でもこれはどうも劇場側のせいではなく,こちら側から明確なプランが出せていないためだと思う.もちろんまだ作っている最中なので,試してみないと分からないことの方が多いが,それにしては動けるスタッフが少なすぎる.舞台・音響・照明,各1人ずつこちらのテクニカルがパリから来ているが,それだけでは当然足りない.ヨーロッパでは照明と舞台を兼ねているスタッフが多いが,此処もそうで,舞台に人手が取られると照明が進まず,また逆もあって,ちょっと大変.
でも何とか仕込み2日目夕方には,舞台の体裁が整う.
今回は初めて全てのLED灯体を,日本でいうボーダーライトのように天井バトンに吊っている.他の照明との関係で,7.5mくらいの高さまで上げなければいけないので,各明かりはずいぶん弱いが,それでも舞台全体を染める分には何とかなっている.ただ色が付くだけでは別になんということもないので,どうやってLEDの特性を生かしていくのか,これからが思案のしどころ.