Hanoi 1

10月13日,まずはクアラルンプールへ.
そんなに混んでないだろうし,空港で1時間半もあれば大丈夫かと思って,少しゆっくり家を出ると,いきなり踏切の故障ではるかが止まる.
最初は漫画を読んでいて,ぜんぜん気がつかなかったのだが,新大阪の手前の駅で長い間動かない.結局30分遅れで動き出したが,関空に近づくにつれ,今度は何かが踏切を横断したといっては,何度も停車する.どうやら閉まったままの遮断機を越えて,無理矢理人などが横断すると,それを感知して停車信号が出る模様.
そんなに踏切があるのかと思って,改めて窓の外を眺めると,あるわあるわ岸和田の近くだと思うが,細い道を断ち切るように線路が走っていて,数十メートルおきに踏切が続く.こりゃ,長い間遮断機が閉まったままだと,ぶち切れて渡り出す人もいるだろう.事実,ちょっと広い道には,長い車の列ができている所もあった.正に悪循環.
結局1時間遅れではるかは関空に到着.マレーシアエアラインのカウンターに走ると,今まさに窓口が閉まったところ.エアラインの表示をはずしているスタッフに,柵の外から声をかけて,何とかチェックイン.そのままスタッフ付き添いでセキュリティー・パスコンと通ることになり,本や雑誌はおろか風邪薬も買えず機内に.
クアラでは,チャイナタウンの真ん中に一泊.去年何度か通ったマッサージ屋のすぐ近くなので,さっそく覗きに行くが,店が跡形もない.楽しみにしていたのに,ショック...
夜は,去年お世話になった交流基金の方と,懐かしの屋台でビールがぶがぶ.
10月14日,ハノイへ.
マレーシアエアラインなので,KLcentralステーションでチェックイン.大きな荷物を預けて身軽に空港へ向かう.
昼過ぎにハノイ着.9年ぶり.3年前くらいにも一度ベトナムに来たが,そのときはサイゴン滞在のみだった.
ハノイは,街路樹というには大きすぎるくらいの木々が街中に茂って,相変わらず美しい.これで,バイクや車のクラクションがなければ,世界でも有数の素晴らしい町かもしれない.
めっきり自転車やシクロは減って,街中はバイクの洪水.おまけに信号はあまり見かけず,車も増えて,それらが有機的にお互いを避けながら動いていく姿は,えもいわれずダイナミック.
ホテルに着いてしばらくしたら,Soがリハーサル場へ案内してくれるために,向かえに来てくれる.彼も今日香港から着いたとのことだが,もう既に何度もリハーサルを観に来ていて,よく事情が分かっている.香港−ハノイ間は飛行機で1時間半とかで,僕が思っていたより近い.日本はやはり東の果てだ.
夜20時から,衣装を付けての通しリハ.
ダンサー達は,知ってはいたがすごく若い.Eaさんは彼/彼女らと3ヶ月,扇風機のみでエアコンがない練習場に籠もって,灼熱の中この作品を作り上げていったとのこと.すごい情熱だと思う.
作品は非常に面白い.Soは「まったく今までになかったユニークな作品だ」というが,僕としては必ずしもそうとは言えない.でも,いま世界の何処で公演しても,遜色のないものだとは思う.
今年になって観た幾つかの作品の中で,気になった公演と何処か通じるものがあるのだ.それは,「まったく新しい」ものではないと思うが,的確にいま必要な何かを内包している.
10月15日
ゆっくり寝ようと思っていたら,朝早くからホテルの部屋を引っ越しすることに.
どの部屋も広くて良いのだが,唯一ある窓の外が隣の壁で,ほとんど日が射さない部屋だったので文句を言ったら,一階上に替えてくれた.外の壁が途切れて,空が見えるのは良いが,朝9時から,さあ移れすぐ移れとせき立てるのは,どうよ?
そのまま勢いに乗って,部屋の模様替え.住み心地のよいスモールオフィスへ.
午後にはまたSoが向かえに来てくれて,欧米旅行者御用達のMOCA CAFEに寄ったあと,練習場へ.
まだ作品の流れが掴めていない僕のために,Eaさんの解説込みで全員で流れだけ通してくれる.数人のダンサーの顔とキャラクターが認識できた.
その後,音の編集のため,ハノイでコンテンポラリー・ミュージックの作曲等をしているという,ミュージシャンの自宅へ.僕は作業があったわけではないが,物見遊山でついていく.
10月16日
昼食に招いてもらって,幸せな午後を過ごす.メニューは若鶏のオーブン焼き一人一羽ずつ.小振りの鶏でちょうど良いボリューム.お腹に餅米と蓮の実が詰めてあって,えもいわぬ滋味.
Eaさんは,ダンサー達への小さなプレゼントをパッキングしている.
今晩もフル・リハーサル.連日の通しリハとその後のミィーティングは,稽古というよりは,ヨーロッパ公演に向けてのある種イニシエーションのようなものなのかも?なんといっても,ほとんどのダンサーにとっては,初めての国外公演.しかもコンテンポラリーダンスの公演.ハノイ国立バレエで学んでいる/いた彼らにとっては,自分たちがちゃんと理解して作品を踊っているのかどうか,ずいぶん不安が残っている模様.加えて,見学に来ていたハノイバレエの関係者らしき人々は,おしなべてコメントせずに帰っていく.
それでも作品の強度が保たれているのは,この三ヶ月でEaさんと彼らの間に信頼関係が築かれているからだろう.

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