Paris_Theatre de la ville 1

Ea Sola Poster

2日にパリに移動.
フローニンゲン(現地の人の発音は,「グ」じゃなくて「フ」に聞こえる)の公演は,公開リハーサルということで,100名程度の観客だったけれど,反応はとても良かった.LEDと普通の劇場照明との絡みは,まだまだ手を加えられるが,それでもそんなに悪くないと思う.どうしてもLEDの光量が足らなくて,他の照明が入ると色がぼけたりするが,通常照明には無い波長があって,割りと明るくしてもなんだか変に見える色もある.これからいろいろ試してみるのが楽しみだ.
パリへの移動は,まずバスでアムステルダムへ.スキポール空港のKLMとエアフランスのカウンターは,ほぼ半分くらいe-チケットの端末になっていて,乗客が自分でチェックインする.うまく動くようになったら便利だろうが,まだ乗客も慣れていなくて(そんなに飛行機ばかり乗る人も多くないだろうし),各端末には長い列と説明するスタッフの姿が...結局今のところ,人件費の削減には繋がっていなさそう.
パリCDG空港からは,ダンサーやミュージシャンも含めたみんなでバス移動.これがまた,渋滞に次ぐ渋滞で,市内に着くのに2時間ほどかかる.地下鉄の方が,よっぽど便利.
ホテルは,パリに来たらいつも一度は行く,ベトナム料理屋さんの近く.Place d’Italleから程近いこのあたりは,中華とベトナム料理レストランが無数に広がる地域.さっそくお気に入りのHawai(なぜだか,イタリア広場にあるベトナム料理屋さんの名前がハワイ)に行くが,どうも前ほど活気がない.どうやら,増殖している他の店に押されてきて,あまりクォリティーを保てなくなってきているみたい.時間のある時に,他の店にも行ってみようと思う.
会場のTheatre de la villeは,数多くの興味深い公演を重ねてるだけあって,スタッフもてきぱき動くし,いろいろ考えてアドバイスもしてくれる.(ただし,昼食後はワインのせいか,元気がなくなる)
でも,ユニオンも強くて,仕込み初日の昨晩も,18時になったらほとんどのスタッフがさっさと帰ってしまった.なんだか,働いてはいけないそうな...
まあ,それでも劇場から追い出されないだけましだし,カルロスは数名の照明スタッフとフォーカスを続けていた.この辺の事情は,僕にはよく分からないが,パリでも場所によっていろいろコンディションは違うみたい.いつも僕らが公演しているCreteilは,話しさえ通しておけばずいぶん遅くまで働いてくれるし...
フランスの劇場は,市立だったり国立だったり,公務員の働いているところが多いと思うんだけど,それにしては全体的に日本よりずいぶんましだと思う.でも,昨日聞いた話だと,パリ市内の有名な劇場でも,時間が来たらいきなり電源のスイッチを切られるところもあるのだそうな.何処も,スタッフ次第ということかな.
それで今日は仕込み2日目.明後日6日の夜に,最終ドレスリハーサルの予定.
7日からは,いよいよ4日間の本公演.

Paris_Theatre de la ville 2

昨日、Theatre de la villeでの初日が開けた.
日本を発ってから25日,ハノイも含めれば長かったような,あっという間だったような.1000人以上入る客席は満席,木曜の千秋楽までチケットは完売.5年ぶりの新作,多くの人が待っていたのでしょう.
此処の劇場は作りが変わっていて,いわゆるバルコニー(2階席や3階席)が無い.客席最前列から,急なスロープでブワァーと客席が迫り上がっている.なので,一番後ろに設けてある,照明のオペレーションテーブルまで上がるのは,毎回大変.
今回,一番厳しそうだったのは,音響担当のマークで,僕と同じくEaさんと組むのは初めてらしく,なかなか彼女の望む音が作れない.しかも基本は生演奏のドラム(ベトナムの伝統楽器の太鼓)で,端から見ていてもマイク等の調節が難しそう.おまけに,基本的にマークは音響屋さんと言うよりも,彼自身コンポーザーとしてやっているみたいで,ちょっと求められている資質とずれている気がする.
この作品のコンポーザーとしては,もう長いことEaさんと組んでいるSon君というベトナム人音楽家がいて,曲は全てベトナムで作られているし...マーク,とってもいいヤツなんだけどなぁ.
でも,最終的には何とか調整し,本番はうまく行っているところが多かった.僕は,もう少し低音が効いている方が好きだけれど.
照明も,カルロスとの二人三脚は,うまく行っている.ただちょっとまだキュー数が多いところがあって,変化がせわしないので,それをどう削るかが問題.
どうしても,シーンごとに分けて照明を作っていくと,その中でも変化を付けたくなるし,そのあたりはほとんどEaさんが練習中に次々と注文を付けてくるのだけれど,あとで繋いでみてみるとキューの割りが細かすぎることがある.でも彼女の希望なので,そうそう勝手に削るわけにも行かず,また僕らも,まだ操作に必死なところもあって,何となくおかしかったところは覚えているんだけど,何処をどうするというところまで整理できていない段階.
それでも,昨日の公演後は,お客さんの反応も上々.客席最後尾にいる僕らにも,十分舞台上の熱気は伝わってきたし,これからが楽しみな作品には仕上がってきたと思う.

Paris 3

パリでの公演最終日.
ダムのコンポーザーでもある池田君が,ちょうどパリに来ていて再会.
明日から劇場のネットが使えなくなるので,メールチェックも難しい状況になる.何せホテルの部屋の電話は壁にくっついていて,線を繋ぎたくてもどうしようもない.
明日は,ポンピドゥであるEmio Grecoのパフォーマンスを観る予定.
明後日は,バスティーユ・オペラ座である「トリスタンとイゾルテ」を観たいんだけれど,どうしてもチケットが手に入らない.映像担当がBill Violaで,5時間の長尺もの.去年パリで初演されて,とても評判がよかったらしい.とりあえず,劇場前に行ってみようかと思っている.(フランスでは,のみ行為が禁止されていて,チケット表記の金額以上で切符を転売してはいけないらしい.それで余ったチケットを持っている人が,定価で売ってくれることがあるとのこと.)
15日はパリ近郊のCombs la villeで,17日はAngoulemeで公演.それで今回のツアーは終了.
さっそく来年の予定が入ってきているが,他とのスケジュール調整が大変になりそう.僕としては,どれもちゃんと回りたいけれど,どうなるかなぁ.
とにかく,これから最終公演.さあ,がんばろっと.

Paris 4

ポンピドゥの近くに,ナイスなネットカフェを発見.
なんと,IPを設定して,自分のコンピューターをネットに繋がせてくれる.何処でもこうだと良いのに.
毎日pb15を持ってシャトレまで出るのはちょっと億劫だけれど,でもデータのやりとりの心配や,いちいち日本語フォントをダウンロードしてインストールする手間を考えると,こっちの方が楽.どうせこの辺までは,毎日出てくるし.
昨日のEmio Grecoは,勅使河原三郎の影響からはぜんぜん脱していなくって,まるまるコピーかと思うところもあったけれど,まだまだガンガン身体が動くので,ダンスはとても良かった.照明も,舞台中に変な塊として吊られていて,それもまあまあ.
でも,これは僕が悪いのだが,どうも現代音楽を聴くと,眠くなるという癖があって,直球勝負な生音に,瞼が重くなる.センサーを使って,何かインタラクティブに音を出していたみたいだけど,ステージに目と耳がちゃんと付いているプロの演奏家が何人もいて,おまけに指揮者までいる中で踊っているわけで,何も機械でセンシングしなくったって,ちゃんとミュージシャンがフォーローしてくれるだろうと思うと,ご大層なシステムを客席奥に組んでまで,無理矢理インタラクティブに何を動かしているのか,あまり意味が分からなかった.
僕としては,もっとノイズとかでEmio Grecoがガンガン踊っているのが,見たかったなぁ.それが例え,コピーだとしても.

Bastille, Combs la ville, Angouleme

バスティーユ・オペラの「トリスタンとイゾルテ」は,凄かった.舞台上にあるのは,装置としてはベットのような四角い台だけ.後は奥を全面被っている黒いスクリーンに映される,Bill Violaの映像のみ.(黒いスクリーンと書いたが,本番では黒の幕が上下左右に開いて,その裏に白いスクリーンがあったのかもしれない.映像のチェック時は確かに黒の上に投射していたが,本番中は地の色が黒なのか白なのか,眩しくてよく分からなかった.)
横型の16(横):9(縦)と4(横):3(縦),それに縦型の16(縦):9(横)の映像を使い分けていて,映写室を覗いたらBARCOが2台あったのだけれど,縦型と横型の映像用に使い分けているのか,それとも1台は予備機で,あのプロジェクターが内蔵シャッターでどうとでも映像を切れるのか,どちらか分からなかった.
あと,たぶんアクティングエリアの床あての照明も,天井に吊ったビデオプロジェクターのようで,綺麗に4:3の大きさでエリアが切られていて,時々映像にあわせて色が変わっていた.もちろん,フロントからのフォローとか,幾つか通常照明も使ってはいたけれど...
それで,間の休憩2回を抜いても,4時間あまりたっぷりBill Violaの映像を堪能できる.端的に言えば,大きなスクリーンに無茶明るいプロジェクターで投影したビデオインスタレーションに,豪華なフルオーケストラと,上手なオペラ歌手がくっついているような物だった.
そしてオフが終わったら,怒濤の地方巡業で,パリから車で1時間半程度の町 Combs la villeへ,朝早くから出かけてセットアップ,夜中にパリに戻って翌朝またその町へ.そして公演してバラして,またパリに戻って,翌朝早くにモンパルナス駅に向かい,TGVで2時間程度のボルドーの町 Angoulemeに直行.10時過ぎに着いてセットアップ.で,翌日公演とバラシ,というスケジュール.
ところが,何とTGVが霧のため途中で止まって,1時間ほど動かない.何だかなぁ,日本を発つ時にも同じようなことが...結局,Angoulemeの劇場に着いたのは,昼を少しまわった頃.この3月にダムの公演できた時も,香港から一度日本経由で,ふらふらになりながら,他のメンバーより半日遅れで,この劇場に入ったんだった.どうして,こういうことに...
でも,列車の中から電話で指示を出していたこともあって,それほど深刻な遅れはなく,あと数時間後には今ツアー最終公演が始まる.
この劇場は,照明室からネットに繋がるので,とりあえずこのページも更新.
前にも書いたかもしれないが,古い建物の内部だけを劇場にリノベーションしたところで,非常にうまくできている.
写真は,劇場上層階側面に,新しく造られた通路.古い建物だし,内部の壁をぶち抜いて通路を一本通すより,この方が良いかも.眺めも抜群.

CDG-KL-KIX

Angoulemeからパリに戻り,18日はオフ.
19日の昼にCDG空港を発ってクアラルンプールへ.翌20日朝にKLに着いて,大阪への出発は同日夜の23:55.つまり,ほぼ1日マレーシアに滞在.チケットをお願いした旅行代理店のがんばりで,マレーシアエアラインのトランジットホテルサービスをゲット.朝早く現地に着いて出発が夜中ということは,もしホテルに滞在するとなると,2日間の宿泊になる.それはあんまりなので,ということだと思うのだけれど,朝から同日夜までのホテルが割り当てられるサービスがある.希望者が多いと,必ず泊まれるとは限らないらしいが...
無料のサービスなので,たぶん空港近くの辺鄙なホテルか,KL市内の安宿だろうと予想していたが,実際は予想を超えていた.
空港で乗り込んだシャトルは,走る走る.何度かKL市内まで車で走ったことがあるけれど,どうも道が違う.そのうち高速にのるが,標識が出るたびに,Kuala Lumpurと別方向にあるJohor Bahru方向へ向かう.
1時間ほど走って着いた先はSeremban.KL市内からも,1時間ほどかかるところらしい.ここに,もとHiltonホテルで,今はRoyal Adelphiという名前のホテルがある.
此処の部屋に泊めてもらいました.はい.
部屋は良いです,今回のツアー1ヶ月半で初めて,バスタブのお湯に浸かりました.ぎりぎり間に合った朝ご飯も,お粥やカレーなどマレーシアらしくバラエティーに富んでいてナイス.しかも夕方までゆっくり眠れる.
ただねぇ,ちょっと約束してたんですよ,クアラルンプールの住人と.帰りに寄るから,その時は...
まあ,ちょっとした旅行気分でした(仕事とは違う個人的な旅行).しかもわざわざ,KLから約束していた人が訪ねて来てくれて,見知らぬ町のニョニャ(マレー・中国混血の人)レストランで夕食.なんだか嬉しかったです.
しかし何だってHiltonはあんなところにホテルを建てたのか?マレーシア政府に騙されたのかな?
それで,夜中にKLを発って,翌21日朝に関空到着.
久々に会った娘は,この1ヶ月半の間に段違いに言葉が増えていて,「○○が××したの.」というように助詞を使うようになっていた.今回出発前は,「〜する」とか,「堅い(彼女の意思としては,難しいという意味)」とか,単語でしか話さなかったのに,帰ってきたらちゃんと文章を話している.鸚鵡返しに言葉を模倣しているのではなくて,どうもちゃんと会話が成り立つ.
いやいや,人間の脳は凄いなぁ.
今回,パリのルーブル近くのKEIBUNSYAで,初めて日本語の本を買った.どうも値段が高いのが悔しくて,海外で日本語の書店に行くのは避けてたんだけど,今回は行きの関空で時間がなくて何も本が買えず,活字に飢えてました.ネットで見る日本語と本の活字は別物です.
それで迷いに迷って買ったのが,野村進さんの「脳が知りたい!」.面白かったです.3回も読んじゃいました.決して暇だったからではなく,いろいろインスパイアされました.野村さんの「コリアン世界の旅」も凄く面白かったけれど,一見ぜんぜん畑違いに見える「脳」の話しも,まさにプロフェッショナルなノンフェクションライターといった仕事です.買って良かった.
その中に助詞の話や,LEDにも関係のある色や動きなどの視覚の話も出てきて,色んな興味が広がった.何たって,脳は誰でも持ってるし,他でもない自分のことでもあるんだから.
娘の脳も,色んな能力を獲得しているようです.

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