sensibilia

4月2日(土)
あらま,明日で終わりやん,と気がついたのが,滋賀近代美術館で開催中の展覧会「sensibilia」.長い期間やってると思ってたのになぁ.Refined Colorsで一緒にやっている南君が参加しているsoftpadが,「演出」していると言っていいだろう展覧会.
とりあえず,仕事を置いて,バスに乗り電車に乗りまたバスに乗り美術館へ.しかし,土曜の午後の京都は,どこもかしこも人人人...それを掻き分け,滋賀へ向かう.
展覧会は,美術館側がよくsoftpadをフォローしている感じで,面白かったしその思いっきりのよさに驚きもした.
たまたま展示室に入ったタイミングだろうが,とにかく最初は部屋が真っ暗.何だか変な床だなぁ,と思いながら歩いていると,カール・アンドレの作品の上に立っていた.こりゃいかんと思いながら手探りで進むと,椅子のような物にぶつかったので腰掛けようとしたら,ソル・ルイットの作品だった.えらく大きな空調の穴が壁にあると思ったら,リチャード・セラだし,巨大な4面マルチ映像の部屋に入った時も,ちょうど暗くて,両手を前に突き出しながら恐る恐る進む始末.そのうちドナルド・ジャッドの作品の映像がずるずると伸び始めたのを感心してみていたら,真後ろに椅子があって人が座っているのに気がついた.
時間的なリミットがあって,マルチ画面の映像を一通り見られなかったのは心残りだが,softpadらしい果敢な試みで,危うく死蔵されてしまいそうな美術作品に,新たな可能性を示したと言えるだろう.滋賀県民の税金で買ってるんだよな,あれ.どれだけの県民が,自分たちがああいう作品を「持ってる」事を知っているんだろう.今回のような試みがどんどん増えればいいと思う.
でも,遠いわ滋賀近美.
人里離れた山の中に「文化」施設作ったら,人が来るようになるなんて,いったい誰が言い出して何処のお間抜けさんが信じたんだろう?
別に,信じたわけじゃなくて,綺麗な建前か...
「文化」は,人が暮らす混沌の中にしか,成立し得ないやん.

lucky !

昨日の昼の便でパリへ.
ダムのツアー,CHALONS EN CHAMPAGNE/France,NIMES/FranceとLINZ/Austriaの3カ所で公演の予定.その後,別の仕事でパリに数日滞在してから帰国.たまたまこの頃にヨーロッパにいるということで,仕事が入ったが,こういうのはとても面白い.普段と違う場所で,新しい人達と一緒に働くのも,新鮮でいいかなと思う.
それで,とにかく昨日関空に向かったが,チェックイン・カウンターで,受付のオネーサンの様子が少しおかしい.「お一人ですか?」とか質問されたり,隣の少しえらそうなオネーサンと,何やら記号で話したり.
これは,,,もしや「あれ」かも!!!と思っていたら,ビンゴ!
「今日はエコノミーが満席なので,ビジネスに移っていただきます.」とのこと.やったぁー,やったーぁ,人生で3回目くらいのラッキーである.
しかも確か全部AF(エールフランス).嬉しいなっ,と.
そのかわり,逆にAFには,フライトキャンセルを食らったこともある.ある朝,空港まで行ったら,この便は飛びませんと言われ,他の人達が大阪のホテルに返送されるのを尻目に,さんざん粘って,東京経由で,ロンドンか何処かまで飛び,それからまた乗り換えて,Toulouseに行った辛い思い出...あとは,フライトが遅れて,乗り継ぎに間に合わず,ニース郊外の周りに何にもないホテルで一泊,ということもあった.
まあ,良いことも悪いこともあると...全体的に,つまりはいい加減なわけだが,それが裏目ばかりに出るわけではない(少なくとも僕にとっては)ということ.
ビジネスは,とにかく座席を倒したら,足を思いっきり伸ばしてほぼ寝ながら飛べる.食事も,ワインも豪華.エコノミーの苦行ではなくて,ゴロゴロしながら本を読んだり映画を観る時間を,12時間ほど与えられたようなもの.
楽チンでした.
しかし,後が怖い...忘れた頃に,いきなり今度は飛ばなかったりするわけだ.願わくば,それが,あまり切迫したスケジュールの時で,ありませんように.

Kim Maeja and Keito Oono

4月7日
パリ日本文化会館で,韓国の舞踊家「金梅子(キム・メジャ)」さんと、日本の舞踏家の大野慶人さんの公演を観る.金さんの,派手なところはほとんど無いのに,ひしひしと伝わってくる動きが素晴らしい.積み重ねられた訓練なのか,時間なのか,一挙手一投足の後ろに,何か確かなモノがある.
大野さんは,その金さんをたてて,ひたすら脇というか後ろにいるように務められていた感じ.そのわりに,白塗りなので,真っ黒な飾りっ気のない舞台の中で,嫌でも形が目立つ.どうしても,何処でも,何が何でも白塗りで踊らなければいけない,ということはないと思うんだけれどなぁ.
あと,劇場の設備のことだが,もう少し良いスピーカーを揃えるべきだと思う,韓国の伝統音楽は,打楽器系のインパクトが大事だと思うが,それがどうにも頼りない音だった.それとヨーロッパは何処でもそうだけど,非常灯の明かり,何とかならないかなあ.暗転で,板付く姿が,丸見え.
4月8日
これからCDGに戻って,夕方に着くダムと合流.Chalons en champagneへ向かう.
Voyageの公演スケジュールは,以下の通り.

11 April 2006
@ La Comete
5, rue des Fripiers, 51000 Chalons en champagne, France

15 April 2006
@ Theatre de Nimes
Place de la Calade, 30000 NIMES, France

20 April 2006
@ Posthof – Big Hall
Posthofstr. 43, 4020 Linz, Austria

@Linz

フランス2カ所での公演が終わって,昨晩Linzに移動.
Posthoffという劇場のレジデンス施設に泊まっているのだが,まあ学生寮みたいなところ.しかし,さすがARS ELECTRONICAの地だけあって,ネットには快適に接続できる.でもできれば,昨日まで滞在していた,Nimes/Franceにもう数日留まっていたかった.
南仏のNimesはもう暖かくて,古い街並みと美味しい料理・ワインが揃っていて,ホテルも味わいのある豪勢な部屋で,思わず仕事を忘れたくなってしまった.まるでスペインのような気楽さも兼ね備えた街で,それだけ魅力がある証拠に,観光客もすごかった.
フランスの底力というか,有名な観光地ではあるんだろうけれど,決して大都会ではない街の劇場が,日本からカンパニーを喚んで,しかもテクニカルもきちんと対応できる人材を揃えて,そして公演をしてお客さんが600人程度は来るという状況に,改めて感心した.素晴らしい街ではあるけれど,決して大きくはない,旧市街は30分もあればひと周りできるようなところでこういう事ができるとは...日本では難しいだろうなぁ.
最初の公演地Chalonsにしても,街の規模は同じくらい.スタッフや設備も申し分なかったし,客席も満員だった.
そしてLinz.今日はイースターのお休みなので,どこもかしこも閉まっているらしい.その街に出るのも,ちょっと面倒な場所で,ネットだけは自由に通じるというのも,何やら皮肉な感じ.
写真は,ChalonsとNimesの劇場とスタッフ,そしてホテルの部屋.

When I live in the theater

劇場に棲むと,公演ツアー中の場合,ほとんどそこから一歩も出ないことが判明.
いままで,公演会場と一番近かったのは,ストックホルムでの公演のホテルで,劇場の真横,つまり隣だった.2回公演に喚んでもらったことがあるが,2回とも同じホテル,一度は真冬でそれこそ凍り付くような寒さだったので,仕事場が住処と近いのは,とてもありがたかった.なにせ,レストランに食事に行く方が,遠くて辛い.
しかし今回は,その記録をはるかに上回り,滞在先は劇場の中.上手奥の階段を上がり,舞台袖上を奥に進んでドアを開けると,楽屋兼食堂.そして,その周りに寝室と事務仕事のできる部屋がある.しかも,街の賑やかな場所までは,タクシーを呼んで数分かかる.
こうなると,本当に何処にも出なくなる.まあ舞台が少々やっかいな構造で,仕込みに時間がかかり,しかも照明機材のトラブルなんかもあって,いつもより時間に追い立てられたこともあるが...レストランまで隣り棟にあるので,後半の2日間は,ほとんど外に出なかった.朝食を摂りに,プラプラ歩いて角を曲がったすぐの処にある,無愛想なねーちゃんがキビシイ食堂に行ったっきり,それ以外は同じ敷地の中で過ごした.
そして,20日の木曜日に公演.客席は,満員.こんなに人が来るなら,もう1日公演させてくれれば楽なのに,と少々愚痴りながらも,公演後はさっさとバラシ.
0時にはバラシ・パッキング・積み込みも終わり,わざわざ開けて待っていてくれたレストランで乾杯.
午前2時には就寝し,4時に起床.パリで別の仕事を任せてもらっているので,ダムから離れて空港へ向かう.
4時半にタクシーを予約していたのだが,本当に来るか少々心配していた.周りに人気のない場所だし,来なかったらすごく大変そうだったので.
しかし!4時15分頃に,門を開けてトランクを転がしながら出て行くと,とたんに少し先の角に止まっていた車がヘッドランプを灯す.さっすがドイツ系,頑固で理屈っぽすぎるところもあるけれど,しっかりしてます.4時過ぎには向かえに来ていて,出てくるのを待っていてくれた模様.
おかげさまで,余裕を持ってチェックイン.Linz-Frankfurt-Parisと飛んで,無事にパリ到着.

Book 2006 04 23

旅に,本は欠かせない.
去年Eaさんの公演でパリにいた時には,野村進さんの「脳が知りたい!」がすごく面白かったけれど,今回また良い本に出会った.それも2冊.この頃は,こういう出会いは滅多にない.たぶん,僕の読書量が激減しているせいだと思うが...
まずは,Ken Grimwoodの「REPLAY」.
SFである.サイエンス・フィクションというと,荒唐無稽で何でもありなような気もするが,実はそれなりにきちんとつじつまを合わせておかないと,たちまち興ざめして読む気を失う.昔は,その説明がなかなかうまくできずに大変だったけれど,いまならシミュレーション・ゲームを例に取れば分かりやすいか.幾ら起こりえないような.つまり今まで想定されなかったようなことが起こったとしても,そこにはある種のルールがあって,それが貫かれていないと現実感は保てないし,そうなるとたちまち読み手はついてこなくなる.
その点,この「REPLAY」は,むちゃくちゃな設定なのに,いつの間にか本の世界のルールを納得し,しかも最初は(僕の)予想の範疇内だった展開をはるかに上回り,しかも最後まで落胆せずに読めた.関空の書店で見かけた時に,「本の雑誌(か何か)の,この数十年回のベストスリー」というようなポップに惹かれて買ったのだけど,それだけのことはありました.今までにもたくさんの人を楽しませてきたというのを,十分納得しました.面白かったです.
2冊目は,和田伸一郎「メディアと倫理」.
画面は慈悲なき世界を救済できるか,というサブタイトルが付いている.
少々言い切りすぎというか,断定的な見方が鼻につく部分もあるけれど,それを我慢して読み進んでよかった.僕のように哲学にあまり詳しくない読者にまで分かるように,噛んで含めるように,ビリリオからハイデッガーまで多くの引用を交えて,少々付け過ぎなくらい傍点を付けて,今の危機を解き明かしてくれている.
日頃どっぷりネットに浸かりながら,それでも何とか世界の状況にコミットしていきたいと思ってきたんだけど,その難しさを改めて理解しました.でもね,「映画」(もちろん全ての映画がではない)だけが,観る者を救済するというのは,違うと思うぞ.断じて,[だけが]ということはない.
もっとも,著者も言葉としては「映画だけが」といっているわけではなく,読後感としてそんな感じを受けるだけで,逆に「そんな断定はしていません」と,突っ込まれそうだけど...
でもとにかく,インターネットという超巨大メディアが登場した以降の現実感を,とても分かりやすくしかも危機感を持って提示してくれている.僕は,いろいろ参考になりました.

G4 crash

パリの日本文化会館での、展覧会会場照明の仕事が無事に完了し展示が始まったので、そのことでも書こうかと思っていた矢先に、とうとう長年使ってきたG4が動かなくなった。
なので、一週間くらいはいろいろなことが滞ると思います。
とりあえずメールなんかは、今使っている照明制御用のWin機でチェックできるけれど、必要なデータはすべてG4のHDの中。
まあ、まずは日本に帰ります。

とりあえず、展覧会の仕込みの写真だけ貼っておきます。ちなみに僕は、出品作家ではなくて、会場の照明デザインを担当しています。