ただいま,ウィーン空港でハノーバー行きの便を待っているところ.ハノーバーからほど近いところにあるらしい,Wolfsburgというところで,Eaさんの公演がある.今回はスペシャル企画で,15年前に初演されたDROUGHT AND RAIN VOL.1と,去年公演したVOL.2をあわせて観せる.Vol.1はベトナム人のおばあさんばかりで演じられ,Vol.2は同じくベトナムの若手ダンサー達が踊る.
僕はこのVol.2に,LED照明を持って参加しているのだが,残念ながら今回は,ダムのLjubljana公演と日が重なって参加できない.ならばせめて仕込みだけでも手伝おうということで,今日からWolfsburgに入る.
Wienでは,友人宅ですっかりくつろいで,昨晩は数人の日本人で宴会.せっかく奮発して買った(ウィーン市内の日本屋という店)芋焼酎がちょっと残念な代物だったが,それ以外は昆布と鰹節でしっかり出汁をひいた簡単和食.久々の味で満足.お世話になりました.(写真は,友人宅)
しかし,この前までワイアレスのないpbG4だったので,全く状況を自覚していなかったのだが,この頃のワイアレス環境はすごいことになってますな.今も,空港のゲートの待合室で,コンピューターを開けると,いくつかのネットワークが見える,そのうちのWireless Vienna Airportというのに試しに繋いでみると,何の認証もなくネットに繋がった.
その他,この前Glasgowで30日間入ったワイアレス・プロバイダーのHotSpotも至る所にある.
実は出発前のゴールデン・ウィークが祟って,せっかく発注しておいたアップルのUSBモデムが届かず,現機にはモデムがない状態なのだが,ほとんど困らない.
携帯も合わせたら,周りは電波だらけだ.
Wolfsburg
Hanoverから車で1時間くらいのところにある,Wolfsburgというところに滞在中.
このWolfsburg,町というにはあまりにも奇妙な場所である.そこで行われるmovimentosというフェスティバルのセットアップに数日だけ参加.
ここは豊田市のフォルクスワーゲン版というか,元々ナチスがワーゲンの生産強化のために,何もないところに発電所から建て始めて工場を作り,そしてその労働力としての住民の町を作ったのが始まりらしい.それが車の(「車で」ではなくて「車を」買うための)お買い物を楽しみつつ滞在できるような万博もどきのテーマパークになっていて,だだっ広い敷地の中に幾つものパビリオンが点在している.
ホテルはただ一つThe Ritz Carltonしかないのでそこでお泊まり.遠くに,よくミニカーをプラケースに入れて展示してあるのを見かけるように,実車をガラスの高層ビルにぎっしり並べてあって,そこを螺旋状の通路に沿って車で動きながら,欲しい車を選んで購入できるビルが,3つくらい並んで建っているのが見える.
圧巻は,この場所の基となった発電所で,まだ現役で稼働中.並んだ超高い煙突が,ファシスティックに威圧してくる.そして,そのまだ現役の発電所の中に特設ステージが組まれていて,公演はそこで行われる.
かなりの客席数がある巨大なステージが組まれていて,お呼ばれされたおセレブな御人たちが,かなりコンサバなチョイスのショーを見ては,夜な夜なその後のパーティでご歓談なされるらしい.
舞台は仮設といっても,ドイツらしくしっかりと組まれていて,発電所の中の年季の入った広大な空間とも相まってすばらしい.
しかし,どうもこのお泊めいただいているリッツ・カールトンといい,その周りの風景といい,広大な敷地内に犬の糞どころか塵一つ落ちていない,上手にカモフラージュされた監獄みたいなところである.
写真は,部屋の窓から見える発電所(劇場でもある)とプール(昼・夜)、車のショー・パビリオン、送迎車のスピードメーター!320kmまで切ってある。
power plant
本日,スロベニアのLjubljanaに移動.
でも,とりあえずWolfsburgの公演会場である発電所の中がすごかったので,写真をいくつかアップ.
まずは,照明を吊るためにトラスが降りている舞台.とにかく仮設とは思えないくらい機材が豊富で,望むものは吊り放題.次は,客席とその横にしつらえてあるバーの様子.そしてバー/歓談室.
あと,リハーサルルームというか空間はこんな感じ.
舞台の下,奈落にはシャワーとトイレがこれまた仮設されているが,その様子だけでもちょっとした地下都市.
最後は,リハーサル空間に続く機材置き場.
とにかく,圧倒的に存在感のある空間でした.
明日からは,LjubljanaでVoyageのセットアップ開始.
Ljubljana-Kyoto-Singapore
Ljubljanaでの公演を無事終え帰国.
24時間京都にいて,家族に会って洗濯をしてご飯を食べて,EaさんのツアーのためSingaporeへ.
久々のアジア.シンガポール・アート・フェスティバルでの公演会場は,ダムが昔にmemorandumを公演したのと同じVictoria Theatre.アジアはやっぱり楽しい.蒸し暑いけれど...
詳しくは,また時間のあるときに.
(近くのフードコートにあるマクドナルドが,無料の無線LANを解放している.いまも,そこから送信.店に入らなくても,近くのカフェからでもネットワークに入れる.マクドはすべての店舗でこんなサービスをしているのかな?)
写真は、Ljublianaの劇場とオペブース、そして遊びに連れて行ってもらったアートスペースというかコミュニティというか、閉鎖された軍の施設をスクワットして運営されている。
Singapore
また時間のあるときに,などと書いてから,もう10日以上経ってしまった.
シンガポールのVictoria Theatreは,フェスティバル後にリノベーションのために2年間閉めるのだそうな.建て替えるだけなら,もっと短期間ですむだろうけれど,歴史的な外見は残そうということらしい.
今年のSingapore Arts Festivalのプログラムは,ダンスではEa Solaの他に,Nederlands Dans Theater IやRosasなど,シアター部門ではStation House Operaなども参加している.そしてもちろんシンガポールのアーティストもたくさん参加.
ここや香港で大きなフェスに参加するたびに思うんだけど,なぜ日本ではこういう規模のフェスがきちんと継続して行われないんだろう?東京国際芸術祭の中東シリーズはすごいと思うけれど,こういうフェスとはまた違う目的を設定したものだし,横浜の名前もこの頃あまり聞かない気がする.来るのは超ビックネームが単発で,しかもばか高い値段でばかり.
多くの観客に良いものを見せるのももちろん大事だけど,いち公演に5〜6千円や時には1万円以上なんて払ってたら,そうそう劇場に通えない.日本の観客は「金持ち」の上に馬鹿が付くと,プロモーターに思われてるんじゃないだろうか.
それに例えば日本のアーティストが,こういう規模のフェスに参加してさまざまなカンパニーなどと出会って,言葉を交わす機会がもっと必要だと思うんだけどなぁ.そして,それが継続することに意味がある.
決して西側にすり寄っていくことが大事だとは思わないけれど,知らないうちに日本はどんどん世界の端っこに戻っていってるんじゃないだろうか.
写真は,Victoria Theatre内部と公演後の舞台挨拶,そしてホテルの部屋から見えた一昨年Refined Colorsを公演したEsplanadeアートセンター(ハエの目玉みたいなヤツ.良いアートセンターです)
Hue
6月4日にシンガポールからベトナム中部の古都Hueに移動.
ドイツとシンガポールの公演は,特別なバージョンで,Eaさんが10年以上前に作った「乾燥と雨」のVol.1と2を,再編集して合わせて公演した.このVol.1のパフォーマーは全員おばあさん.作った当時で平均70歳代,現在80歳代.(お一人はお亡くなりになっていたそうだ.)この方たちが,元気でよく動き,そしてよく喋る.何とか会話したかったのだけれど,残念ながら何度か目で挨拶を交わすのみ.とにかく一言も言葉がわからない...
その歴史が体にしみ込んだような彼女たちとは,シンガポールでお別れ,HueではVol.2のみが正規の長さで公演される.
このHueのフェス.ビエンナーレということで,それでももう5回以上つまり10年ほどは続いているらしい.
とにかく規模が大きくて,確か世界遺産のはずの王宮跡のあちこちにステージが組まれているが,それが全部野外.ほぼすべて屋根無しで,舞台にも客席にもさんさんと日が降り注ぐ.
日中の気温がだいたい38度ほどで,直射日光に当たるとそれ以上.また逆に,雨が降らない保証ももちろんなく,事実数年前は大雨で日程がずれている.日が暮れるのがだいたい7時ごろで,4時ごろからは風が出てきて少しは体を動かす気になる.
最初スケジュールを聞いたときに,日中4時くらいまでは,あまり働けないと聞かされて,何だか怠けてるんじゃないかと思ったものだが,とてもとても...とにかく午後2時くらいになると,ホテルから出て近くの食堂に行くのも命がけ,だらだら汗をかいてふらふらになってたどり着くことになる.
つまり現場は設置から照明のフォーカスやサウンドチェックまですべてを夜中にして,しかもLED機材の雨対策まで行わなくてはいけない.それでいてその機材は,日中溶けてしまいそうな日差しにも曝されることになる.
むかし,夏になるとバイトで鴨川や平安神宮などに野外ステージを組む人足に借り出されたものだけれど,今回はもっと大変でした.それとも僕が単に年を取っただけかな.
写真は,完成していくステージの様子と横から見たところ.公演中も,観客が数人横から観ていた.
A holiday in Hue
6月9日.
Hueの公演は,計3回.2回目と3回目の間に1日休日がある.この日はワールドカップが開幕する日で,その所為かどうかは知らないけれど,とにかく1日休み.
ダンサーの一人がHue出身ということで,彼の育った家でのホームパーティに,みんなを招待してくれた.
決して豪邸とは言えないけれど,とても落ち着く家の庭にテーブルが並べてあり,これでもかというくらいのご馳走が出てくる.家の裏は畑でその向こうは河.蟹やらシジミを使った麺料理,豚肉や春巻きやさまざまな野菜に果物,冷えたビールと多分杏で作っただろうきついお酒が振る舞われ,夜もまだ早いうちから,もうべろんべろん.
ベトナムの人は呑み方が中国式で,立て続けに乾杯の嵐.小さな杯にきつい杏の焼酎を注いでいっき呑み.ダンサーたちが面白がって代わる代わる注ぎに来るもので,すっかりやられてしまった...
でもすごく楽しい夜と,美しい家と庭でした.
写真は,明け方セッティングの帰りに見た蓮池,フェスの会場,そして招いてもらった家と庭での宴会.
The final day at Hue
6月10日
Hue公演最終日.
Hueのフェスティバルの観客管理は変わっていて,会場である王宮跡に入る時に受け付けがあって,その後は中に幾つかあるステージを観客が自由に行き来できる.ディズニーランドのようなテーマパーク方式とでもいうのだろうか.
結果,多くの子供を含めたお客さんは,あらかじめ知らされているスケジュールというよりは,音に反応してそこら中をうろうろする.
つまり,あっちのステージから大きな音が聞こえてきたらそちらに向かい,また違う場所から面白そうな音が聞こえたらざざざっとそっちに行く.各ステージに仕切りはないので,観客は客席側のみならず,舞台裏からも,舞台袖横からもぞろぞろ歩いてくるし,公演中も自由に移動する.
最初Hueについた時に,僕らの前の公演(ジャズ・フュージョンのコンサート)を,同じ舞台で見た時には,正直その野放し状態にあきれた.子供は走り回り,携帯に大声で話してるおっちゃんは居るは,人の出入りは激しいは,とても大変な感じだった.
それが,同じように決してマナーができているとはいえなかったけれど,同じ舞台でおこなった公演を,かなり熱心に観てくれるお客さんが沢山いて,それだけでもこのフェスで公演したことは,とてもよかったといえる.
夜の闇が降りて灯の入った舞台は,かなりのクォリティーを保っていて,周りの喧騒にも負けずに舞台の魅力を発散していた.
写真はかなり暗くなった頃の舞台リハと,撤収が終わったところ.