Reconsideration

日記をつけなくなって久しいが,どうも咽に引っ掛かった小骨のようになっていたのがこれ,悪夢のPhiladelphia.
あれからどうも,いつまでたっても完全には疲れが抜けず,それが原因でか怒りっぽい.いかんなぁ.
Philadelphiaでおかしくなったのは,LED照明.疲れてくると,何がいけないといって根気がなくなる.あの時は,一見最初はうまく行きそうだったのが,余計問題を大きくした.
公演する劇場は,それなりに小奇麗だったのだが,見かけよりは古い所で,実は照明機材の電源ディマーなどが,一昔も二昔も古いものだった.それがわかったのは仕込み初日の昼頃で,現場スタッフが僕の持ち込んだ照明卓で劇場のディマーを動かすのに四苦八苦しだした.
Eaさんの公演では,僕は1台のPC照明ソフトで,劇場ディマーとLED照明の両方を,一緒にコントロールしている.この一緒にというのが曲者で,今まではなかったのだがトラブルの元になりそうな感じはいつもしていた.それで,スプリッターで信号を最初に分けて,LEDヘは直接ケーブルを引いて信号を送るようにしていたのだが,あの時はそれが確実にできているか確認しなかった.口では現場のスタッフに言ったし,彼らはOKだといったのだが,それは劇場既存の設備を使っているいわばブラックボックスの中の事で,僕は彼らの出来ている(はずだ)という言葉を鵜呑みにして,そのままほっておいてしまった.
いやぁ,「できてる」というのを検証して,少しでも怪しいと全部やり直してもらうというのは,機材や時間的に可能でもなかなかオーダーする方にも気力が必要なんです.
加えて,電源もディーマーを通っていない直電源をリクエストしているのだが,確かにそうかどうかを確認しなかった.
それで,点いたんですよLED,最初はなんとか.ちょっとおかしな事はあったんだけど,公演に支障があるほどでもなく,調整すれば何とかできるでしょうという感じで.
その後まず最初の問題が持ち上がったのだが,それはLEDじゃなくて,僕のプランニングミス.
ある照明機材が,その劇場にはいっぱいあって,僕の使いたい機材はあまりなかった.普段なら,当然欲しい機材を借りてもらうのだが,ちょうどそのプランニングを数カ月前にしていた時に,それと並行して,床に敷くダンスマットの交渉も行っていた.それでその時フェイスティバル側が,結構無理をして新しいダンスマットをこの公演のために買ってくれたんですよ.それでね,つい弱気になった僕は,劇場がいっぱい持っている照明機材でも,ちょっと工夫すれば,何とか使えるんじゃないかなぁと,思ってしまったのでした.それで,少しはフェスの予算も助かるし,あとは僕がちょっと時間をかければ何とか調整できるんじゃないかと...
それがまあ,大失敗.どうにもこうにも,一番よく使う地明かりがきれいに作れない.その調整に時間がかかり,なおかつ久々の公演なので少しきっかけを忘れていて,しかも予算の問題かこの公演からダンサーが3人減っていて,もともとあったきっかけがちょくちょく変更されている.
なので,もうリハが始まる前からバタバタで,そんな中,もともとあまり調子の良くなかった機材が異常を起こす.
その機材,自分がフルフル点滅し出すと,その影響がアドレスの近い他の機材にも及ぶ,かなり深刻な問題を抱えていた.でも,何台か予備を持っていて,調子が悪くなると別の機材に差し替えてこれまで使ってきて,何とかその場をしのいできていた.それに,問題が起こる頻度も,ごく少ないものだったし...
今から思うと,その時にまずデーターにノイズが乗っている可能性を疑うべきだったんだけど,僕は短絡的に,また調子の悪い機材が問題を起こしたと,決めつけてしまった.
それで,やむなくその機材をカットして,何とかその公演を終わる.
翌日,照明のフォーカスなどは既に済んでいて,とにかく一度公演もできているし,きっかけも思い出したしで,本番の数時間前に劇場にはいる.電源を入れて,点灯チェックも済まして,PC上のキューの整理などしている時に,突如4台のLEDが繋がっているデータトランスが動かなくなる.つまりその4台は消えてしまって,うんともすんとも動かなくなる.機材を降ろして見ても,何もわからない.仕方がないので,何とか残りのトランスにその4台のうち2台を繋げるように配線をし直して,両端の2台をカット.
おそらくいつもなら,この時点で僕はシグナルケーブルを直接引き直し,電源も取り直していると思うのだが,フェスティバル中の公演2日目で,他の仕込みにとられてほとんどスタッフがいず,開演も近いという事でその指示を出すのを躊躇う.
そうこうするうちに,今度は別のバトンに吊ったLEDのデータトランスも壊れて,かなり僕はパニック状態.
何とか配線を変えて,前後のバトン各2台ずつLEDをカットして,15分ほど開場を遅らせてそのまま公演になだれ込む.
そして何とか終了.それが,土曜日だったのですね.
つまり,LEDの代理店を探して,代替え機材を借りようにも,何処とも連絡が取れない.翌日の日曜日にできる事といったら,電源の引き回しを変える事ぐらい.機材の追加も人の追加もそれからでは難しく,公演は翌日の最終公演を残すのみ.
そこで僕は折れてしまって,Eaさんの,「今日と同じできなら何とかお客さんに見せられる,大丈夫」という言葉を受けて,現状維持で公演する事にしてしまった.もうこれ以上は,悪くはならないだろうと,ある種の希望を持って.
そして最終日.
いちおう早い目に劇場入りして,LEDのチェックをするが,ちゃんと点灯する.ただ,あまり長く点けていると,何だか機材が弱りそうで,怖くてそれほど念入りなチェックができない.なにせあと,本公演の1時間強もってくれれば,とにかく今はOKなのだ.それで,まずは電源を引き直して,あとは時々チェックをするだけで,本番に臨む.
でも,今から思うと,LEDの点灯チェックはしたが,劇場ディマーと併用してのキューのチェックはしていない.とにかく,何かあっても公演を中止にする以外に手は無く,何といってもいまは点灯はするのだ.
そして始まった最終公演.LED照明と並行して劇場ディマーが動き出すと,いきなり全てのLEDが制御不能になって点滅しだした.とにかく最初から,いっきなり.
その日電源を引き直したのには,2つの目的があって,まずきれいな直電源にして問題を回避しようという目的と,あと最終手段として,何かおかしくなったら,舞台袖でLEDの電源を直接切れるようにしておいて,最悪の事態に備えるという考え.
そして,その公演の間中,袖にいる舞監が,僕の指示でLEDのON/OFFを繰り返しました.劇場の照明は何とか動くし,LEDも色の変化などは制御できる.ただ,全体に激しく点滅し安定する事がない.なので,できるだけ通常照明でしのぎ,LEDしか使っていない場面は,真っ暗にするわけにはいかないので,いきなりビカビカ光るLEDが点灯し,それらしいきっかけでカットアウトの繰り返し.
いやもう,寿命が縮んだ縮んだ.
しかし,観客はそれでも拍手するのですね.まあ初めて観てしかも一回しか観ないんだから,何かがおかしいかどうかは,よほどの事がないとわからない.
しかし,こちらとしては,とんでもないものを見せてしまったと...まず何よりも,Eaさんとダンサーたちに申し訳ない.
そして,半べそかきながら撤去.
その後,日本に持ち帰った機材は全てメーカーでチェックしてもらったのだが,結果メーカでは異常なく動いている.こういうのが一番怖くて,たぶん何かが弱っていて,例えば通常100のノイズに耐えられるものが,10程度でもうおかしくなるとしても,ノイズの無い綺麗な環境ではわからない.でも,安心して使えないから,極めて精神衛生上悪い.何だか,疲れがまたどっと...
でも,さいわいメーカーがとても協力的で理解が有るので,何とかいま予定されている公演に支障が無いようには
機材を貸してくれそう.
あと,泣きっ面に蜂というか,帰ってしばらくしたら,Philadelphiaの宿泊費の請求が僕のカードに来た.チェックアウトの時は,フェスが払うから精算はないと,受け付けのスタッフが言って,僕は支払いのサインも何もしていないのにである.いい加減過ぎるぞ,Sheraton Hotels Philadelphia.アメリカ側に文句を言ったら,フェスがホテルにクレームを付けて何とかしたとの事だが,何だかフェス側にも非がありそうな...しかもその金額はいったん引き落とされて,いまだ戻ってこないし,もうトホホな状態である.
しかし,そんなこと言っていても時間は進む.
茅野市でのlost初演と,Refined Colors公演とワークショップを楽しく終えて,スパイラルでの公演も無事終了.
観に来て頂いた皆さん,本当にありがとうございました.
機材もまあ何とかなった事だし,次はtrueの機材をYCAMでパッキング.夏以来,やり逃げ状態ですいません.次に向けて,いよいよ本格始動.
そしてそして,11月初めは松本市でのRefined Colors公演とワークショップ.その後続いて,ベトナムのハノイとタイのチェンマイで公演.
そして帰って,12月には金沢と横浜でtrueの公演が待っていて,その後1月初めからは,Eaさんのアメリカ長期一ヶ月7ヶ所ツアー!
がんばるぞ!ガンバリマスよ.続けていられるだけでも,幸運なのだ.
29日の月曜は悌二の命日.11年経ったよ.いまだにこうやって舞台関係の仕事が出来て,自分で作品も創れるという事に,文句なんていってられない.

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