Hanoi – Chiang Mai _01

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10年前に初めてハノイを訪れた時には,少し暗くて暑くて静かで,Sapaやハロン湾に行くための中継地としか思えなくて,サイゴンに比べると余り華がないような感じで,幾ら北が勝ったからってここが首都というのは無理があるんじゃないのと思っていたのだが,ここ数年縁があって何度か訪れる度に,かなりハノイが好きになった.
昔とは比べ物にならない喧騒(主にバイクと車の騒音とクラクション)と,気の抜けない買い物交渉に辟易する事もあるけれど,なかなか美しい街だと思う.車をほとんど見かけなかった,シクロと今の10分の1くらいの台数のバイクが走っていた97年頃の街をいまだに覚えていて,その印象が時々蘇る瞬間があるせいかもしれない.
街中に生息している巨木も,見慣れてしまうと見えなくなるが,改めて見渡すと相当大きくて美しい木々が街中に繁茂している.
そんな街で,いつか公演したいものだと思っていたので,去年のEaさんの公演に続いて,今年自分達の作ったRefined Colorsを持ってこれたのは,かなり嬉しかった.知り合いのハノイバレー団のダンサー達も何人か観に来てくれたし,何よりハノイ在住の日本人・カナダ人・フランス人の友人たちの多大なバックアップを受けて,RCとそれに続いて翌日にlostの公演もできた事に非常に満足.
RCは多くのお客さんが来てくれて,lostは招待状配布のみの,ちょっとシークレット・パーティみたいなノリの公演にして,かなりハノイでもアンテナを張っている感じの人達が集まってくれた.何年か後でも,この2つの公演の事を覚えていてくれるだろうか.
lost公演の翌日はオフ.Phoを食べて,まったりときついコーヒーを飲んで,ご飯の上に載せるおかずをいろいろチョイスするベトナム飯を食べて,フットマッサージに行ってお土産を見て,夜にはメンバーが集まってビヤホイで打ち上げ.なかなか幸せなハノイ最終日.
翌日は,またまたでっかいトランクを引きずって空港へ.荷物重量の超過が気になるが,カウンターの兄ちゃんは重さなど気にする事なく,さくさくトランクを通してくれた.
胸をなで下ろしつつチェックインカウンターを離れようとすると,大慌てで兄ちゃんが呼びに来たので内心舌打ちをするが,連れていかれた先はセキュリティーで荷物の重さの事ではなかった.同行していただいていたハノイ日本大使館のスタッフの方が,公演のための輸出入許可証を見せて事無きを得る.
そして,Hanoi – Bangkokと乗り継いで夕方にはChiang Maiに到着.初めての土地.ハノイより少し暑い.
公演会場は,広大なChiang Mai大学の中.Humanity Theaterという名前は付いているものの,まったく劇場仕様ではなくてただの講義室.そこにトラスから床材から音響機材まで持ち込んでの公演となるが,まだほとんど準備は進んでいない.僕たちが劇場のある建物に着いた時には,エレベーターに乗らず搬入できないからという理由で,3mほどの長さの白リノリウム(床用マット)のロールを,エントランスにて鋸で真っ二つに切っている所だった.うーん,あれをきれいに敷くのは無理だなぁ...本番まであと3日.何とかなるかな.
写真は,松本でのRC_WS風景.ハノイのYouth Theater仕込みと公演直前,巨木街路樹,それと最終日打ち上げ会場(路上).

Chiang Mai_02

Humanities_theater_1Humanities_theater_2Humanities_theater_3Humanities_theater_4Massageno1Banromsai
Chiang Mai大学内人文学部のHumanities theaterでの,Refined Colors公演を無事に終了.
Humanities theaterという名前の場所なので,いちおう劇場のように聞こえるが,実はただの講義室.普通の教室より,ただ少しでかいだけで,天井にバトンやグリッドがあるわけではなく,スタッフといえば管理のおじさんのみで,セットアップは全て学生有志の手による.
オーガナイズしてくれたのは,日本/東京での公演経験もある,女優で大学の先生でもあるKopさんと生徒のBuhm君,それに舞台学科で経験豊富なAppさんとその友人関係一同.音響のみレンタルで業者が入ったが,舞台の床から天井トラス,何枚か建て込んだ壁面パネルまで,全て学生の手で設置される.
僕たちが到着した当時は,前にも書いたが床材のロールが長過ぎて搬入できず,一階のエントランスでぶった切っている所だったので,かなり先行きを心配したのだが,それからのスタッフの頑張りが凄かった.床材のロールが上がらないぐらいだから,天井トラスはどうするのだろうと思っていたのだが,階段ホール8階にウインチを仕込んで,全て吊り上げて搬入,しかも学生がいる時間は危ないからと,深夜に行ったらしい.おかげで,翌日の午後には床とトラスの設置が済み,次はみんなでホール前の空間で,正面壁を製作していた.他にも,近くのショッピングモール内に,チケット販売ブースを設けたり,雑誌等にプロモーションをかけてくれたりと,多くの学生が手伝ってくれたらしい.
その甲斐あって,2日間3回公演の合計入場者数は,なかなか良かった.それに,2日目2回目の昼公演は,オーガナイザーのKopさんの尽力で,HIV孤児自立支援組織 BAN ROM SAIの子供達や聾唖学校の生徒さん,それに大学の舞台学科の生徒たちが来てくれた.そのほとんどが,おそらくコンテンポラリー・ダンスを観るのは初体験.公演後のアフタートークで,聾唖学校の娘さんが,物凄くいっぱい手話で喋ってくれたのだが,手話ータイ語ー英語と変換されてきた言葉はどうも簡略化され過ぎているような気がして,少々不満が残る.
でも,BAN ROM SAIの子供達やスタッフの方と知り合えたのは,とても良かった.BAN ROM SAIの活動は,サイトをみてもらえばよく解ると思うのだが,
http://www.banromsai.jp/info.html
僕がとても魅かれたのは,子供達の自立のためにと同じ敷地内に独立して建てられた3棟のゲストハウスとプール!
http://www.banromsai.jp/guesthouse.html
あいにく,曇りの夜に案内してもらったのだけれど,空港から15分とは思えないような森の中に,独立して3棟のゲストハウスとオープンエアーのダイニングスペースが有り,晴れた日には間違いなく星空が絶景.しかもサウナルームまで完備されて,その全てがきちんと気持ち良く保たれて,宿泊費は日本で考えると格安.いやもう,本気で僕がツアーをオーガナイズしようかと思いました.Chiang Mai自体,今まで訪れた土地の中では好感度高いのですが,その中でも最高のロケーション.3家族は一緒に泊まれるので,どなたかアジア旅行を計画中の方,是非一緒にChiang Maiに行きましょう.
そして,19日(月)は待望のオフ.午前中は迫り来る「true」と1月のEaさんのツアーの対応に追われるが,午後からはMacBookを無理やり閉じて街に.
まずはムスリム・エリアで,Singaporeで食べたラクサにそっくりの,ココナッツミルク味のピリ辛麺を頂いた後,Kopお勧めのデープなタイマッサー屋に出陣.観光客がたどり着ける可能性ゼロみたいな,地元民相手のマッサーは,竹で編まれたハーフ・オープンエアーな空間で,百戦錬磨のタイのオバチャン・マスターが,自身の全体重をかけて僕の体中の筋肉とツボを刺激してくれる.望めるなら,毎日はきついけれど1週間に1回は通いたい,僕のマッサージ人生の中でも「ベスト」と言っても過言ではない,深〜いマッサー屋さんでした.しかも,2時間ごりごりオバチャンの技を尽くしてもらって,料金は200バーツ,約700円なり.
やめられません...
写真は,Humanities theaterの変遷と,素晴らしいタイマッサー屋さん外観.そして,暗闇の中のBAN ROM SAIのプール.

Patravadi !

Chiang MaiでのRC公演のあと,Bangkok_Patravadi Theatreで,Monochrome Circusの「怪物」と「きざはし」を公演してから帰国.
「怪物」も「きざはし」も共に30分弱の作品なので,2つ並べて1日1回の公演.Patravadi Theatreは,2004年にRC公演をした時と同じく半野外なので,日が沈まないと照明関係の調整は出来ない.
でもまあ,それが幸いして,最近ではもっともゆっくりとした時間を過ごす.
「怪物」も「きざはし」も共に好きな作品だが,照明に関しては既にできているものをなぞるのがメインの仕事.

Kanazawa and Yokohama

25日に朝に帰国.
一週間後には,trueアップデートと公演のために金沢入り.
ツアー中は,なかなか他の仕事には注意を向けられない.そもそもあまり時間がない事が多いが,時間があっても頭の切り替えが難しいので,ついつい先延ばしにして,次に見えている休みというか家にいる間に,メールしたり図面を描いたり,先の仕事に対応しようと思ってしまう.
でも,ツアーの間は帰国後の時間が理想的に効率良く夢広がるのだが,まあ実際は当然というかそんなにうまくいくはずもなく,それなりの日々の雑事に追われて1日1日と過ぎていく.髪も切りたいし,身体のメンテもしたいし,金勘定も必要だし,少し先の未来やかなり先の話しもしないといけないし,身近に迫った公演もあるし...
その中で,もっとも気掛かりなのが来年1月から2月にかけてのツアー.1ヶ月7ヶ所11公演.その7ヶ所全部の打ち合わせが,まだ全然進んでいない.アメリカなんで,ここ一週間ほど感謝祭で誰にもメールが繋がらない.何だかね,因縁つけて国が戦争中なのに,のんびり屋さん.
でもなぁ,感謝祭を理由に仕事が進まないと愚痴ってても仕方ないし,少しでも進めておきましょう.
いずれにせよ,12月3日からは2週間ほどtrueに集中.

Birthday 2007

12月6日は,娘の誕生日.おめでとう!
同じ今日のこの日に,友人の息子が生まれた模様.おめでとう!
同じカンパニーのメンバー2人も,6日が誕生日.おめでとう!
僕は,金沢で「true」のアップデート中.夏以来のメンバーが集合.
http://www.kanazawa21.jp/theater21/2007/true/index.html
佳境ですが,4日間の更新期間で,さらに作品がパワーアップ出来そうな感じ.
金沢の会場も,お勧めです.まるで,会場にあわせて「true」を作ったかと思うほど,ぴったりおさまっている.しかも,客席が近くて,何処からでもディテールが見えるので,この作品にはうってつけ.
おまけに,蟹も魚も美味しいです.
皆さまぜひご来場を,お待ちしています.

true at Yokohama

True_2007
金沢21世紀美術館公演,無事終了.一晩京都に帰って,横浜へ.
今日,仕込み初日,何とか終了.もともとは劇場じゃない建物だけに,いろいろ障害も多いが,テクニカル・スタッフの方々が責任感も有り協力的で(つまり,プロフェッショナル),何とか乗り切れそうな予感.
皆さん,ぜひ横浜に観に来て下さい.ネタバレ写真を公開しつつ,宣伝です.
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true / 本当のこと
12月14日(金)ー 12月16日(日)
Red Brick Contemporary Dance File 2007 
プログラミングとテクノロジーが、身体表現にあたえる新しい可能性
振動子+LED+センサー+映像+サウンド 
振付・出演: 白井剛 (AbsT/発条ト)
振付・テクスト・出演: 川口隆夫 (Dump Type)
ディレクション・照明: 藤本隆行 (Dump Type)
音響・映像・ビジュアルデザイン: 南琢也(softpad)
音響・振動・システムデザイン・プログラミング: 真鍋大度
映像・プログラミング: 堀井哲史(rhizomatiks)
機構設計: 齋藤精一(rhizomatiks)
デバイスプログラミング: 石橋素(DGN)
センサーシステム: 照岡正樹(VPP)
衣装デザイン: 北村教子
プロダクション制作: 高樹光一郎(Hi Wood)
■日時:平成19年
12月14日(金)19時30分
12月15日(土)14時・19時30分
12月16日(日)14時
*開場は開演の30分前
■料金:前売一般¥3,500・学生¥3,000 / 当日¥4,000 *全席自由
*横浜赤レンガ倉庫1号館・チケットぴあ・JCDNダンスリザーブ・ハイウッド
*未就学児はご入場いただけません。
*公演の一部に強い光の明滅があります。光刺激に弱い方はご注意ください。
■お問合せ:
TEL : 045-211-1515(横浜赤レンガ倉庫1号館)
   03-3320-7217(ハイウッド)
URL:http://www.yokohama-akarenga.jp/hall_space/calendar0712.html#3
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メールもらえれば,まだ席の確保は出来ます.
よろしくです.

After Yokohama

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true@横浜赤レンガ公演が無事終わって,京都に戻る.
来て下さった皆さん,ありがとうございました.
YCAMからも,金沢や横浜に来て頂いて,とても心強かったです.まだまだ変わり続けるであろう作品なので,初演を観ている人から話を聞けると,いろいろ参考になるし励まされもします.
ところで,その9月の初演時に,詳細な取材を受けた「ステージ&ライティングの現場」という,リットーミュージックムック本が発売されました.いったいどれだけ売れるのでしょう?という,マニアックな本ですが,trueのシステムがかなり詳細に載ってます.僕もインタビューを受けたのですが,打ち上げ翌日の二日酔いと解放感がごちゃまぜになってたようで,話さなくてもいいような事までかなり喋ってます.
関係者の方に聞いたら,trueの製作が決まって東京で開いた記者会見に行って,この本への掲載を考えたとか.何事も,やってみるもんです.
もし本屋で見かけたら,たぶん貴重だと思うので,手に取って見て下さい.

Preparing to USA

「true」金沢・横浜が終わってから,ずっと図面を描いている.1月からのEa Solaアメリカツアー.
かなりコンディションの違う劇場7ヶ所での公演なので,一つずつ細かな打ち合わせをしなければいけないのだけれど,もういまはクリスマス.その前,僕が金沢に出かける前は,感謝祭だったのだあの国は.
余裕のある暮らしは,出来た方がいいと思うけれど,休んでばっかしじゃん.しかもねぇ,決まったルールには厳しい.公演の一月前には,確定図面が必要,というのはまあもっともだけれど,感謝祭だ,クリスマス休暇だというのは,こっちの知ったこっちゃないのに,休みの前には図面が出ていないと困るというところ多し.
ちみんとこの国のルールが全世界共通だと,なぜ思う...僕は別に,感謝祭もクリスマスも,関係ないぞ!
ぎりぎりまで描けなかった僕が悪いんですけれど.
横浜が終わってから,めずらしく作品の評判が気になって,ネットで「true」を検索してしまう.公演後に集まったアンケートが,少なかったせいだろうか.
そういえば,昔は公演後の感想を,ネットで探すなんて出来なかったのだねぇ.「S/N」を公演していた頃にブログがあったら,果たしてそれは公演を続ける力になったんだろうか?
ヒトはよほどの事がない限り,作品を全否定するような意見を書かない,普通は...
それはたぶん,パフォーマンスを観に劇場に出かける,という行為自体で,大きな選択が行われているせいだろう.否定的な意見があったとしてもたいていは,「あまり心に響かなかった」,というようなコメント程度.観に来る時点で,みんな舞台作品に,何がしかの思い入れがあるのですよ.
そういうのを超えて,その人の存在の基礎みたいな所に触れる作品,というのは,自分がどういう状況にあれば作りえるのだろうと,めずらしくまじめに考えてしまう.普段,劇場に足を運ばないような人達までが観に来てくれる,というような状況は,作品次第では訪れるのだろうか?
そもそも,舞台を観に出かけるというのが,かなり特殊な状況という現状は,いつから始まったんだろう?昔のヒトは,少なくとも1年に1度か2度は,祭事の際に舞台作品を観ていたのじゃないだろうか.
そこで自分の感覚や存在を見つめ直す,という行為があるとすれば,「true」も良い線いってると思うのだけれどなぁ.