めずらしく日本の旅が続く.
まず,8月24日から横浜へ.
9月12日オープニングの横浜トリエンナーレ,そこに出品される中谷芙二子さんの霧の彫刻を,ちょっとだけ照明でお手伝いする事になったので,その設置.
http://yokohamatriennale.jp/2008/ja/artist/nakaya/
中谷さんが展示される会場の三渓園は,横浜の根岸駅からタクシーで15分くらいと,少々不便ながらも見ごたえ十分の庭.その一角の小さな滝と,それに続く山肌から,一定の条件で霧が湧きだしてくる.風に動かされて形を変えるその姿は変幻自在で,湿度の高い日にはなかなか消えずに,あっという間にまわりが真っ白になる.
そこに十数灯のLED照明を設置して,微弱ながらお手伝いをするのだが,いやもう霧は強力.霧が吹き出てくるのを真っ直ぐ見るような方向だと,少々の明かりなどすぐ真っ白にかき消される.かろうじて,谷間に霧が溜まっていくのを横から見ていると,光が動いているのが認識できる.
それにしても,ちょうどどうした具合か,現地に入った日から3日間雨が続き,ドロドロべちょべちょで雨と格闘しながらの設置となる.まあ涼しくてよかったのだけれど,それでも合羽を着ると汗でべちょべちょ,脱いだら雨でべちょべちょ.事前に,雨の山肌での作業との情報があったので,防水してあるトレッキングシューズを履いて行ったが,それでも一日の終わりには靴も服もドロドロ.
しかし,これが結構楽しい.
普段こんな野外の設置なんてほぼないし,昼間(結構鬱蒼としていて暗いが)の照明というのも,ほぼない.そういう,めずらしい条件での試行錯誤は,やはり面白い.
結果,雨や時間との戦い,という感は否めないが,いちおうの設置を27日に終了.
28日は,羽田から大分空港へ飛ぶ.
別府で開催されている,OITA’n DANCE ORGANIZATION主催のワークショップ「ふらっとDance」シリーズで,Monochrome Circus代表が「別府商店街ダンス化計画」というのをやり,その最終日のショーイングに去年作ったlostの公演をカップリング.5日間のWSで作った3つの作品を観てもらった後に,その講師が作ったサンプルをくっつける感じかな.
http://oitandance.blog29.fc2.com/blog-entry-77.html
ショーイングは30日で,28日に別府に着いたら,まずはひとっぷろ浴びて,身体をほぐし,打ち合わせ.
29日に,機材をセットアップして,いちおうのリハ.Monochrome Circusの2人は,WS作品を人様に見せられるレベルに持って行くので大変だが,私は非常にのんきなポジション.朝と夕に,毎回違った外湯を回り,リフレッシュ&リラックス.少々図面仕事などもやりつつも,美味しい食事とお湯で,のほほんとした3日間.
WSのショーイングは,ダンス未経験者を含んだメンバーで,たった5日で作ったとは思えないようなできで,オープニングからlost公演までの組み立てもなかなか良くて,端で見ていても楽しかったです.もちろん,lostに関しては,責任持って取り組んだけど,もうできている作品なので,他のパートに比べたら楽ちん.それに,僕が踊るのでもないしね.キューは,コンピューターが覚えている.
それにしても,別府,興味深いです.
あまりにもいまどきの風俗店が乱立し過ぎて,温泉街の情緒みたいなものが消えてしまっている所も多いが,それでもそこここの路地には怪しげな世界がまだ息づいていて,清濁ないまぜになった空気が残っている.
まあしかし,有名な看板温泉である「竹瓦温泉」の真裏が,いきなりキャッツアイとモーニング娘なのには驚きました.ちょっと情緒無さ過ぎ.
ちなみに,その後の写真は,会場だった商店街の中の発信基地Platform 1とショーイング風景と路地の情緒.
そして31日.
前日,YCAMからショーイングを観に駆けつけてくれたR知君の車で,山口に移動.
でもその前に,タンポポハウスで有名な藤森照信さん設計の温泉施設があると聞いて,ひとっぷろ浴びに向かう.その名も,「ラムネ温泉」!
別府から山道走って,1時間半程度.詳しくは,HPを見て下さい.
http://www.lamune-onsen.co.jp/
建物の外観は,ジブリ系のおかしなテーマパークみたいだけど,細部を見ると焼き杉と漆喰でそれなりの風情があって,同じく漆喰のお風呂と浴場へ入る躙り口みたいな小さな入り口はとても気持ちいい.それに,ラムネ温泉の名の由来の,肌にまとわりつく炭酸泉の湧き出してくる,蕎麦の花に囲まれた露天風呂も素敵でした.
Yamaguchi-Kyoto-Singapore
8月31日
山口のYCAMで一泊.大友良英展を堪能.
全館,大友さん.ホワイエがターンテーブルで埋まっていて,池田亮司展より侵食度が激しい.図書館にも作品があるし,本当に全館が大友展.
その中では,スタジオAが,大友展というより高嶺格展という趣.もちろん大友さんの音なんだろうが,ビジュアル(+光の動き)が,僕としては非常に強く感じられたので,高嶺の巨大インスタレーションに大友さんの音がカップリングされたような印象.
40分のループで回っているとの事だけど,決して長くもなく,十分楽しめる.途中からでも入れるが,できれば最初に戻るまで待ってみた方がいいが,そうすると場合によっては,かなり待たなければいけないのが,欠点といえば欠点.いっその事,映画館みたいにタイムテーブルを先に表示しておいて,最初に館に入る時に,ちゃんと観たい人は,他の展示と合わせてうまくスケジュールリングできるように,情報を与えた方が親切かも.
しかしこれが無料で,会期中はいつでも見れるなんて,山口の人はなんて幸せなんでしょう.
で,9月.
1日・2日と京都で,2日夕方には家族で甘味処に行ってかき氷を食べる.もう夏も終わりという感じ.
一緒にかき氷を食べるのを,ここしばらく娘は,ずっと楽しみにしていたらしい.
3日,そして再度シンガポールへ.
横浜と同じく,中谷芙二子さんの霧の彫刻に照明を付けるお手伝い.中谷さん,シンガポールビエンナーレと,横浜トリエンナーレに同時出品です.なんてパワフル.
まだ,機材が届いていないので,設営は今日の午後からになるけれど,どういう作品になるのか楽しみです.
Singapore biennale
えー,シンガポールビエンナーレ出品の,中谷さんの霧の彫刻に,照明を付けに来ている訳ですが,現在シンガポールは,ほぼF1に占拠されておりまする.
今日になって初めて,ビエンナーレの垂れ幕というか看板というかが,街中にお目見えした訳ですが,もう僕が到着した5日前頃から,既に街はF1色が濃厚でした.
ホテルから展示の現場に向かう途中に,レースコースになる所があるのですが,もうえらい事になってます.問題は,F1が夜に行われるという1点に絞られると思うのですが,とにかく全コース道路を明るくしないといけないわけです.そう,シンガポール初のF1は,モナコみたいに公道で,しかも夜に行われようとしている訳です.まあ,無駄っちゅゃあ,すんごい無駄.
推測だけど,たぶん昼間に全交通を遮断して,つまり街の機能をストップしてレースをするには街が活発に生きていすぎて,それは無理だけど夜になったら(何時から開催かは知らないけれど)街の交通を全部遮断してレースコースにできるという算段らしい.確かに,小国であるシンガポールならではのアイディアではある.
しっかしまあ,その為の準備に費やされる予算と労力の,馬鹿らしいまでに膨大な事...たぶん,イベント全体の収支としては,十分まかなえているのだと思うが,しかしこれが必要か?
写真は,その為に準備された公道の様子.
観客をプロテクトする為に,まずコンクリートのブロックが置かれ,それにフェンスが付き,レーサー側のオーダーとして,「コースを真昼並に明るく」する為に道路の上方にトラスが設置されて,トラス上各数メーターおきに水銀灯が設置.
そのトラスを支える柱と照明用の電源ボックスがペアになって,コースのサイドに,延々と連なっている.
F1の周回コースが標準で何キロなのか,詳しくないのでよく知らないが,聞いた噂だと5キロとか.そうなると,仮に10mおきに支柱が建っているとして,5キロで500本!10m間のトラスに2mおきに5個水銀灯を吊ったとして,2500灯!全てに電源をとり,何ヶ所かには発電機を置き...
これが,本番としては1日,テスト・ランを仮に2日やったとしても,計3日間のイベントの為のものなんですな.いやもう,よくも悪くも,美術展より凄い.エコだの何だの,ちゃんちゃらおかしいという感じ.終わったらこれらの機材,どうするんでしょう?
ビエンナーレの展示は,遅々として進まないけれど,着実に少しずつは前進している感じ.
照明は,既に設置して仮プログラムも済み,後は実際のシークエンスに合わせるだけなのだけれど,肝心の霧が,機材の都合でなかなか出ない.霧が実際に出ないと,現実的なシークエンスを組めないので,照明の調整にも待ったがかかる.
とりあえず,そんな状態なんですが,まあ明日夜には霧が出て照明もついている予定.
とりあえず,ちょっとは出ている霧と,それに絡む照明.
乞うご期待.
Singapore biennale 08_2
シンガポールビエンナーレ2008開幕.
写真は,オープニングぱーちーの様子.
霧は,何とかオープニングには間に合って,モクモクと出ている.風が無いと,まさに雲のように漂い,橋の下はあっという間にホワイトアウト.ジョギングしている人とチャリンコが多くて,結構危ない.
霧が出ると,案外みんな怖がらずに中に入っていて,写真を撮る.何だか,安全な国なのですね.誰も怖がらない.僕なら,何もインフォメーションが無い間は,入っては行かないと思うが,たくさんの人が写真を撮っていく.さすがシンガポールというか,その姿もバリエーションに富んでいる.
最後は,LEDの設置風景数点.地元のテクニカル,がんばってくれました.
Yokohama to Kyoto
シンガポールから関空を飛び越して,成田着横浜へ.照明のお手伝いで参加という事で,横浜トリエンナーレのオープニングに出る.8月のインストールが,遥か昔のようだが,LEDは霧の中で,狸にケーブルを噛られる事も無く,無事に動いておりました.
仕込みの時には見られなかった晴天の現場だったが,少し日が短くなったのか,4時半前にはかなり日が翳って,LEDの明かりが目立つようになってきた.(それにしても,霧の迫力には,まるで敵わない.まあ照明は,雨月物語の幽霊/幻のようなエレメントなので,あるかないかの瞬きが正しいとも言えるのだが...)
トリエンナーレのオープニングパーティは盛況で,永く御無沙汰していた人達にも沢山会った.ああ僕,こんなに美術関係者に,知り合いいたっけ,というか,関東圏の関係者みんな来ていたのでは?
そして,翌13日京都へ戻る.
14日は,「パコと魔法の絵本」を家族で観に行く.実は,毎月14日は,1000円で映画が観れるのです.
あまり観た事の無い作風の,良く出来た映画でした.5歳少し前の娘にも,ん...歳の妻にも好評.
EMPAC/Troy
ダムの公演で,アメリカはニューヨーク州のTroyという町へ.
ちなみに,ニューヨーク州は,ニューヨーク・シティとはかなり離れた,東部のずいぶん北にある州.そういや,日本でも茨木市は茨城県とまったく違う所にあるけれど,これは漢字も違うし,まあ両方ローカルだし...NY市とNY州って,大阪府に大阪市が無いみたいなもんじゃないの.変なの.
そのToryにEMPAC (Experimental Media and Performance Center) というのがあって,そこの新しい本館というか劇場ビルディングの柿落しで,「Voyage」をやります.
そいでまあ,昨日着いたわけですが,来てみてびっくり,まだ劇場建ててます.それも,どう見ても,あと4日でできるとは思えません.金曜がオープニングで,公演もするんですけど...
聞けば,約一ヶ月程度,工期が遅れているそう.それもまたびっくり.一ヶ月って...普通この程度の規模の劇場だと(コンサートホールと,中型のプロセニアム劇場と,2つのオルタナティブスペースがある),オープンの半年くらい前には完成させて,それから色々テストとか繰り返して,それで開けるんじゃないの???
とりあえず,今日少し公演の仕込みをしたんですが,舞台の仕込みをしている真向かいで,客席作ってます.それに気になるのが,どうもオーケストラピットが,まだ当分動かないような...ずっと下がりっ放しで,ぴくりとも動かない...
さすがに,舞台上はけっこう焦って仕上げたようで,バトンも動くし,照明のディマーも生きてるし,公演はできそうだけれど...例えば,楽屋前の廊下は,今日床材を貼っていたし,楽屋の中はまだタダのコンクリの四角い箱.金曜までに客席も何とかできるかもしれないけれど,はたして外からお客さんが入ってこれるのかどうか.
オリンピック前の北京も,きっとこんなんだったんだろうなぁ.
会場の中は,何処もかしこもこんなの.