HOKKAIDO at Singapore 02

あっという間に日が経って、もう今回の滞在も明日1日を残すのみ。そう、今日は公演最終日。
いろいろ書こうと思っていたことはあるのだが、例のごとく頭の中で考えるだけで満足して、結局文章にしなかった。その中でもいちおうメモ書き程度でも残しておきたいことを少し書いておく。
まず、F1。
印象に残ったのは「音」。
わりと頻繁に劇場などで大音響に接している方なので、爆音には慣れっこだと思っていたのだが、それがいかに飼いならされた音かを実感。
どれだけ高速で走れるかだけを追求したマシンから発せられる音は、丸裸の凶暴性で襲いかかってくる。
今までサーキットに足を運んだ事がないので確かな事は言えないが、特に市街地のレースというのはビルなどの反射体が多くて、音から逃げようがないというか、建物から出たり地下道から上がったら、本当に目の前をF1が爆走している状態で、四方から音が襲いかかってくる。
でも、肝心のレースの内容は、事前の知識が全然ないので、どの車がどこの所属かも全然分からず、観ていてもさっぱり理解できない。
しかし、モナコといいシンガポールといい、小さな都市国家だからこそ市街地レースなんていう無茶なことが出来るのだなぁと実感する。あからさまにいえば、金持ちが楽しいんだから、貧乏人は少々不便でも一週間くらい我慢しろという感じ。
次は、全くもってシンガポールとは関係ないが、こっちで深夜にNHK衛星放送を観ていて、初めて今敏監督が亡くなられた事を知る。追悼番組として今監督が出演された「トップランナー」の再放送をやっていた。
まるで知り合いみたいに書いているが、残念ながら一面識もなかった。それどころか、今までに「東京ゴットファーザーズ」と「パプリカ」をDVDでしか観た事ないので、偉そうにファンだとも言えないような者だけど、凄くファンでした。
特に「パプリカ」は、立て続けに2回観たくらいで、いつか映画館で観たいものだと願っていました。
46歳という若さで逝ってしまわれたのは、本当に残念。今監督自身が一番残念だっただろうと思いながら読んだ、その気持ちが垣間見えつつも見事なお別れの言葉「さようなら」にも泣きました。
そして、それから読み始めた、オフィシャルサイトのブログが、とんでもなく面白くてためになる。
今までちゃんと意識していなかったし知らなかったのだけど、当たり前の話だがアニメは全部人が描いているのだ。
例えば、実写の映画監督の製作ノートだとかインタビューだと(あまり読んだ事ないが)、こういう演技をしてほしいと役者にお願いした、みたいなコメントが製作の裏話みたいにでてくる。でもアニメの場合は、その先があって、こういう演技をさせたいので、こういうふうに顔を動かしてそれをこっちからこんなふうに撮っているように見えるように描く、という作業が行われる。
ブログにはいろいろなアニメ制作の専門用語が出てきて、それを読んでアニメの制作体制というか作品ができるまでのシステムを理解できるが、それを僕がここで説明するのはお門違いなので、実際のブログを読んで欲しい。
ちなみに、実写でもそうだがアニメも共同作業だし、全部の演出や製作を監督がするわけではないが、どこにでも意思疎通が難しいスタッフはいて、監督的に全く使い物にならないカットが上がってきた場合、今監督はそれを書き直しているし、それができるだけの画力というか技術力があったらしい。そんな話も出てくる。
それで、何が面白いかというと、そういういろいろできてしかも監督をしている人が、自分の仕事を事細かに解説してくれているのだ。
コンセプトから演技指導(という作画テクニック)、全体の編集からちょっとした演技の間まで、すべてが緻密な計算のもとに人の手によって積み重ねて作り上げられている。それらすべてに、きちんと意識が行き渡っているのだから、その解説が面白くないわけがない。
あと、今監督の、観客の知性を信じる態度も好きです。観客は馬鹿なので、馬鹿にでもわかるように説明しないと商品が成り立たないと考えて作られている作品が多い中、とても救われます。
といっても、「借り過ぎに注意しましょう」とわざわざ金貸しが広告で訴えるようなこの国で、どこまで観客を信じられるのか、それはひょっとして作り手の独りよがりではないのかと、疑いたくなる事も多いのですが・・・
でも、時々、「私にはわかりますが、これが一般のお客さんに通じるのかどうか・・・」というふうな感想を言ってくる人にもむかっ腹は立つのですが・・・あんまり怒ると健康に悪いなぁ。
それで、肝心の「HOKKAIDO」は、いちおうの完成を見て、昨日今日と公演です。
ディレクターでダンサー・振付家のダニエルと話していて、一番感じたのがシンガポールでのWork in progressの難しさ。
日本での作品制作だと、東京以外でも2カ所くらいは探せば公演が打てるかもしれないし、コ・プロダクションに名前を連ねてくれる所が見つかる可能性もあるが、 何せシンガポールは小さいので、作品をアップデートしながら公演を重ねようと思うと、国外に出るほかない。
となると、KLやバンコク等がいくら近いと言っても、国際間のプロジェクトという事に即なってしまい、それだけマネージメント力も必要になってくる。その力というが技量が、シンガポールにはまだあまりちゃんと形成されていない感じ。日本だと、新国立劇場に当たる今回の会場であるエスプラナードでも状況は同じ。
まあでも、日本の新国立だって、新作を作ったら、それは国民の税金で作ったものだから、いちカンパニーがそれでツアーして金を儲けるなんてけしからん、みたいな理由で、セットやなんや全部即廃棄という事を平気でやっていたから(昔の話で、今は知らないけど)、あまり大差ないか・・・
その分、日本では、プライベートな制作会社が、個々でがんばってるし、交流基金や文化庁の助成がある分、ここよりは条件が良いのかもしれない。
とにかく、あと一回、がんばってきます。
Daniel_k_hokkaido

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