シンガポールから帰国、何だか縁あって能舞台の照明をLEDでする事に。
急に降って湧いたような話だが、うまくスケジュールの合間に納まったというか、それこそ縁があったというしかない。
おかしいのは、23日(土)に、小学校一年生になった娘の初めての運動会があるのだけれど、このお能の公演は、22日(金)に「葵上」をやって、24日(日)に、「安達原」をやる。つまり、23日は公演がなくてお休み。長く生きてれば、こういう偶然はポツポツとあるけれど、そういう時には感謝してできるだけ無駄にしない。娘との約束も守れるし、仕事もできる。
詳細を聞いたことはないのだけれど、僕の母方の祖母は、僕が子どもの頃、夜になるとよく実家の座敷で、能の謡をうたいながら稽古をしていた。
ウチは、サザエさんと同じ形態で、父親が母の実家に同居していて、それで僕は祖母の稽古(か、もしくは趣味?)を、垣間見ていたわけだ。
時代が進むにつれて、謡はカセットテープで再生して、祖母はそれに合わせて動いていたから、あれは舞の稽古だったのかもしれない。
いずれにせよ、僕は能の謡と浪曲の区別すらつかないような状態で、日本の老人は、夜になったらああいう事をするもんだくらいにしか思っていなかった。祖母や祖父に、お能を観に連れて行ってもらったという記憶もないし、いまだにあれがなんだったのか確かな事は分からない。母親に聞けば、詳しく教えてくれるかもしれないが、その気もない。
でも、そういう事もあって、何となく興味はあったわけで、そこに降って湧いた話なので、いやもうヤルしかないでしょう。
というわけで、ここ数日、大阪天満橋と谷四近くにある「山本能楽堂」に通っています。
大学生から卒業してフリーターをしていた間(今でも、フリーターだけれど)、僕の季節毎の主な仕事の内には、京都の北野と先斗町と宮川町の歌舞練場の裏方というのがあって、歌舞伎の舞台構造を模した日本の劇場は、ずいぶんと慣れ親しんでいろいろ勉強させてもらったけれど、能舞台はほとんど知らない。
現代的な劇場の舞台上に所作台を敷いて、目付柱を立てて仮設の能舞台を作るというのは経験あるけれど、今回は屋内だけど本物の舞台です。
いやぁ、よく出来てます。付け入る隙がありません。演目によっては朝日のあたる早朝の野外で、生霊の出てくるような話は深夜に薪の炎の下で演れば、それでもうバッチグーでしょう。
そうなると、ぜんぜんこちらの出番がないので、屋内の能楽堂である事を笠に着て、窓やなんやかんや全部塞いで無理矢理暗転つくってもらって、LEDで外光を模させていただきます。
僕の仮構的なLED照明以外は、すべてホンマモンのお能の公演です。直近の告知ですが、興味のある方は是非おいで下さい。
詳しい情報(公演のフライヤー)は、こちら。