「陸離」、知らない日本語です。
最初に聞いた時には、造語かと思ってしまった。でも、それでも、字面だけではどういう意味だか分かんない。
しかも、字面からでは伺い知れないような意味がある、れっきとした日本語で、辞書を引くとちゃんと下記のような説明が出てくる。
りく‐り【陸離】
〘ト•タル〙〘形動タリ〙美しく光りきらめくさま。「—として光彩を放つ」
なかなか美しい。
何だろう、夜の海に漕ぎ出して、少し離れたところから、都市の明かりを見ているような事なのだろうか?
それとも、中国の故事とかに関係あるのか?
いずれにせよ、そういうタイトルの展覧会に参加します。
詳細はこちら。
http://www.cpue.org/2010/index.html
Adachi_gahara
能に照明をつける試み、2日目「安達原」終了。
能では、常に前段というかこれまでの話の経過があり、それに続いて舞台が展開されるらしい。
今回僕が関わらせてもらった、「葵上」と「安達原」も例に漏れず、葵上では、六条御息所と光源氏の蜜月時代があり、そこに葵上が現れて源氏の関心を一身に集め、六条御息所は捨てられるという、それだけでハーレクイーンロマンス一冊分かという前振りがあり、それは周知の事実とした上で物語が始まる。
安達原では、まず「黒塚」という話があり、難病の娘を抱えた母親が、妊婦の生き肝を食べさせれば娘の病が治るときかされて(そんな事言う方も鬼畜だが)、肝を手に入れるべく外に出て荒れ野で妊婦の旅人が来るのを待つ。
やがてどのくらいの月日が経ったか分からないが、妊婦とおぼしき妻と夫の夫婦が通りかかり、都合の良い事に産気づいた妻のために薬草を採りに夫が山に行き、その間に母は妊婦を殺す。
と、妊婦の身に着けていたお守りが母の目に入るが、それは母が娘に与えた物だった・・・というギリシャ悲劇顔負けの話。
それで母親は完全に物狂い、さらに荒野深く分け入って鬼婆と化し、殺人マシーンとなり幾星霜・・・というところから、話が始まる。
つまり、固定客というか、集団的な合意としての構造があって、その上に物語が形成されている。しかも、タランティーノばりの鬼畜エンターティメント。僕けっこう「From Dusk Till Dawn」とか好きなんですけど、お能、負けてません。
そんな所に、照明という新しい演出をつけるとなると、緊張します。
だって、通になればなるほど、頭の中では情景が出来上がっているはず。売れた小説の映画化ほど難しい物はないでしょう。
最近では、ジャンルは違うけど「BECK」の映画化かな。音楽物を漫画で描いた傑作ですが、ビジュアル化しつつ音は一切聞こえない漫画だからこそ、「世界的に認知される日本のバンド」という物語を組上げられたのだけれど、映画にしたらその彼らの曲どうすんねん、という話ですね。
僕はまだ観てませんが(シンガポールにいたので)、映画監督は、あえていいますが、卑怯にも漫画と同じ手法を使ったようで、それはちょっと・・・。
となると、僕の解釈が、積み上げられて来たイメージとそれほど剥離がないことを願いつつ、自分のイメージをちゃんと照明で現出させていくしかないでしょう。
幸せな事に、今回は3日間時間があり、3日間というと短いようですが、通常のクリエーションなら、そのうちに振り付けや音や照明や舞台での全てのクリエーションがあるのだけれど、今回は照明のみ。山本能楽堂の能舞台、独占貸し切り状態。
舞台上に、公演の衣装を飾ってもらって、暗転中で一日ほぼ12時間照明のプログラムし放題の3日間でした。
しかも、僕が望むなら、もっとやっていいですよと言ってもらえました。こんな事は、滅多に無いです。たいていは、もうそろそろ・・・と言われます。
今回は、「今日はこんな所で勘弁したろ」と一人つぶやきつつ、自分から終了して帰る毎日。
楽しかったです。
ということで、またそのうち機会があるかもしれません。
あったらいいなぁ、ということで、とりあえず無事終了。
Aoino_ue
葵上@山本能楽堂、終了。
満員御礼。
LEDうんぬんというよりは、普段から能を観る事を楽しみにしておられるお客様なのだろう。
お話を聞いて納得したのだが、能楽堂はプライベートな所が公共施設より多いらしい。いわゆる「小劇場」もそうかもしれないが、日本の舞台の今まで意識していなかった一面。日本中に、どれくらい能楽堂ってあるんだろう?
知らなかったという事では、公演までのプロセスというか、そういうのもぜんぜん違う。
まず、舞台監督がいないし、オペレーションブースもない。
そりゃそうだ、謡も鳴り物もPA通さないし、照明に至ってはそもそもそれ自体存在しない。
15年ほど前に、ダムで「隅田川」の公演をサポートした時には、無理矢理頼んでリハーサルをやってもらったけれど、本来「能」では僕らがリハとして認識しているような事はしない。
「モウシアワセ」というのはあるらしいのだけれど、ゲネプロとか通しリハみたいな事をすると、かえってその公演の即興的な魅力が削がれるので、舞台はその時その場で毎回初めて挑む物らしい。なんか凄い。日々の稽古の積み重ねと、インプロの能力、両方が試されるわけだ。
前の時よりは少しは考えることが出来るようになったのか、僕の知っている舞台作品と能の構造的な違いが、とてもおもしろい。
まず、先日、能面をかけさせてもらって実感したのだが、周りなんて見えやしない。それでいて共演者がいないわけではなく、舞台上にはたくさんの人が上がっていて、それらのほとんどの人はシテ方が見える。面(おもて)をかけている主役だけが、極端に視覚を奪われているわけだ。で、もっともよく動く。
舞台装置等は、極端に簡略化されているけれど、物語自体がなくなってしまっているわけでもない。
逆に多層構造で、レイヤーが多いのだけれど、そのほとんどを謡の語り?(説明?)で済ませている。
物語の基礎構造は言葉で造って、最後に情念とか怨念とかそういう言語化しちゃうとただの説明になってしまうとこだけ、ピンポイントに舞台にあげてる感じ。あくまでも、僕の私的感想ですが・・・
なんかね、間違えないように稽古して稽古して、その成果を出来るだけ寸分違わず本番の舞台に上げるというのではなくて、「稽古して稽古して」は同じでも、それで毎回違う成果が出るように期待するというのは、健全な気もするし面白いとも思う。
何だか大人な感じ。
でも今回の照明は、プログラムして時間入れて動かしてるんだなぁ。他にどういう操作があり得るのか、考えてみると面白い気がするが、今回はタイムアウトか・・・今までと同じような作り方で、まずはゴアイサツ。
公演は、日曜もあります。「安達原」です。
葵上と違って、設定が野外から始まります。
お楽しみに。
Lighting for Noh Theater
シンガポールから帰国、何だか縁あって能舞台の照明をLEDでする事に。
急に降って湧いたような話だが、うまくスケジュールの合間に納まったというか、それこそ縁があったというしかない。
おかしいのは、23日(土)に、小学校一年生になった娘の初めての運動会があるのだけれど、このお能の公演は、22日(金)に「葵上」をやって、24日(日)に、「安達原」をやる。つまり、23日は公演がなくてお休み。長く生きてれば、こういう偶然はポツポツとあるけれど、そういう時には感謝してできるだけ無駄にしない。娘との約束も守れるし、仕事もできる。
詳細を聞いたことはないのだけれど、僕の母方の祖母は、僕が子どもの頃、夜になるとよく実家の座敷で、能の謡をうたいながら稽古をしていた。
ウチは、サザエさんと同じ形態で、父親が母の実家に同居していて、それで僕は祖母の稽古(か、もしくは趣味?)を、垣間見ていたわけだ。
時代が進むにつれて、謡はカセットテープで再生して、祖母はそれに合わせて動いていたから、あれは舞の稽古だったのかもしれない。
いずれにせよ、僕は能の謡と浪曲の区別すらつかないような状態で、日本の老人は、夜になったらああいう事をするもんだくらいにしか思っていなかった。祖母や祖父に、お能を観に連れて行ってもらったという記憶もないし、いまだにあれがなんだったのか確かな事は分からない。母親に聞けば、詳しく教えてくれるかもしれないが、その気もない。
でも、そういう事もあって、何となく興味はあったわけで、そこに降って湧いた話なので、いやもうヤルしかないでしょう。
というわけで、ここ数日、大阪天満橋と谷四近くにある「山本能楽堂」に通っています。
大学生から卒業してフリーターをしていた間(今でも、フリーターだけれど)、僕の季節毎の主な仕事の内には、京都の北野と先斗町と宮川町の歌舞練場の裏方というのがあって、歌舞伎の舞台構造を模した日本の劇場は、ずいぶんと慣れ親しんでいろいろ勉強させてもらったけれど、能舞台はほとんど知らない。
現代的な劇場の舞台上に所作台を敷いて、目付柱を立てて仮設の能舞台を作るというのは経験あるけれど、今回は屋内だけど本物の舞台です。
いやぁ、よく出来てます。付け入る隙がありません。演目によっては朝日のあたる早朝の野外で、生霊の出てくるような話は深夜に薪の炎の下で演れば、それでもうバッチグーでしょう。
そうなると、ぜんぜんこちらの出番がないので、屋内の能楽堂である事を笠に着て、窓やなんやかんや全部塞いで無理矢理暗転つくってもらって、LEDで外光を模させていただきます。
僕の仮構的なLED照明以外は、すべてホンマモンのお能の公演です。直近の告知ですが、興味のある方は是非おいで下さい。
詳しい情報(公演のフライヤー)は、こちら。
HOKKAIDO at Singapore 02
あっという間に日が経って、もう今回の滞在も明日1日を残すのみ。そう、今日は公演最終日。
いろいろ書こうと思っていたことはあるのだが、例のごとく頭の中で考えるだけで満足して、結局文章にしなかった。その中でもいちおうメモ書き程度でも残しておきたいことを少し書いておく。
まず、F1。
印象に残ったのは「音」。
わりと頻繁に劇場などで大音響に接している方なので、爆音には慣れっこだと思っていたのだが、それがいかに飼いならされた音かを実感。
どれだけ高速で走れるかだけを追求したマシンから発せられる音は、丸裸の凶暴性で襲いかかってくる。
今までサーキットに足を運んだ事がないので確かな事は言えないが、特に市街地のレースというのはビルなどの反射体が多くて、音から逃げようがないというか、建物から出たり地下道から上がったら、本当に目の前をF1が爆走している状態で、四方から音が襲いかかってくる。
でも、肝心のレースの内容は、事前の知識が全然ないので、どの車がどこの所属かも全然分からず、観ていてもさっぱり理解できない。
しかし、モナコといいシンガポールといい、小さな都市国家だからこそ市街地レースなんていう無茶なことが出来るのだなぁと実感する。あからさまにいえば、金持ちが楽しいんだから、貧乏人は少々不便でも一週間くらい我慢しろという感じ。
次は、全くもってシンガポールとは関係ないが、こっちで深夜にNHK衛星放送を観ていて、初めて今敏監督が亡くなられた事を知る。追悼番組として今監督が出演された「トップランナー」の再放送をやっていた。
まるで知り合いみたいに書いているが、残念ながら一面識もなかった。それどころか、今までに「東京ゴットファーザーズ」と「パプリカ」をDVDでしか観た事ないので、偉そうにファンだとも言えないような者だけど、凄くファンでした。
特に「パプリカ」は、立て続けに2回観たくらいで、いつか映画館で観たいものだと願っていました。
46歳という若さで逝ってしまわれたのは、本当に残念。今監督自身が一番残念だっただろうと思いながら読んだ、その気持ちが垣間見えつつも見事なお別れの言葉「さようなら」にも泣きました。
そして、それから読み始めた、オフィシャルサイトのブログが、とんでもなく面白くてためになる。
今までちゃんと意識していなかったし知らなかったのだけど、当たり前の話だがアニメは全部人が描いているのだ。
例えば、実写の映画監督の製作ノートだとかインタビューだと(あまり読んだ事ないが)、こういう演技をしてほしいと役者にお願いした、みたいなコメントが製作の裏話みたいにでてくる。でもアニメの場合は、その先があって、こういう演技をさせたいので、こういうふうに顔を動かしてそれをこっちからこんなふうに撮っているように見えるように描く、という作業が行われる。
ブログにはいろいろなアニメ制作の専門用語が出てきて、それを読んでアニメの制作体制というか作品ができるまでのシステムを理解できるが、それを僕がここで説明するのはお門違いなので、実際のブログを読んで欲しい。
ちなみに、実写でもそうだがアニメも共同作業だし、全部の演出や製作を監督がするわけではないが、どこにでも意思疎通が難しいスタッフはいて、監督的に全く使い物にならないカットが上がってきた場合、今監督はそれを書き直しているし、それができるだけの画力というか技術力があったらしい。そんな話も出てくる。
それで、何が面白いかというと、そういういろいろできてしかも監督をしている人が、自分の仕事を事細かに解説してくれているのだ。
コンセプトから演技指導(という作画テクニック)、全体の編集からちょっとした演技の間まで、すべてが緻密な計算のもとに人の手によって積み重ねて作り上げられている。それらすべてに、きちんと意識が行き渡っているのだから、その解説が面白くないわけがない。
あと、今監督の、観客の知性を信じる態度も好きです。観客は馬鹿なので、馬鹿にでもわかるように説明しないと商品が成り立たないと考えて作られている作品が多い中、とても救われます。
といっても、「借り過ぎに注意しましょう」とわざわざ金貸しが広告で訴えるようなこの国で、どこまで観客を信じられるのか、それはひょっとして作り手の独りよがりではないのかと、疑いたくなる事も多いのですが・・・
でも、時々、「私にはわかりますが、これが一般のお客さんに通じるのかどうか・・・」というふうな感想を言ってくる人にもむかっ腹は立つのですが・・・あんまり怒ると健康に悪いなぁ。
それで、肝心の「HOKKAIDO」は、いちおうの完成を見て、昨日今日と公演です。
ディレクターでダンサー・振付家のダニエルと話していて、一番感じたのがシンガポールでのWork in progressの難しさ。
日本での作品制作だと、東京以外でも2カ所くらいは探せば公演が打てるかもしれないし、コ・プロダクションに名前を連ねてくれる所が見つかる可能性もあるが、 何せシンガポールは小さいので、作品をアップデートしながら公演を重ねようと思うと、国外に出るほかない。
となると、KLやバンコク等がいくら近いと言っても、国際間のプロジェクトという事に即なってしまい、それだけマネージメント力も必要になってくる。その力というが技量が、シンガポールにはまだあまりちゃんと形成されていない感じ。日本だと、新国立劇場に当たる今回の会場であるエスプラナードでも状況は同じ。
まあでも、日本の新国立だって、新作を作ったら、それは国民の税金で作ったものだから、いちカンパニーがそれでツアーして金を儲けるなんてけしからん、みたいな理由で、セットやなんや全部即廃棄という事を平気でやっていたから(昔の話で、今は知らないけど)、あまり大差ないか・・・
その分、日本では、プライベートな制作会社が、個々でがんばってるし、交流基金や文化庁の助成がある分、ここよりは条件が良いのかもしれない。
とにかく、あと一回、がんばってきます。
HOKKAIDO at Singapore 01
唐突ながら、シンガポールに来て17日目。
今回は、4週間の滞在で、現地出身のダンサー/ディレクターのDaniel Kと「Hokkaido (Or Somewhere Like That)」という奇妙な名前のパフォーマンスを作っている。
Hokkaidoとは北海道の事、今やシンガポールや他のアジア人には憧れのリゾート地だ。
http://www.dansfestival.com/2010/shift-hokkaido.html
作品自体は、写真の記憶がやがてフィルムへと動き出していくという軸と、それに絡まるダンス。
技術的には、高解像度の映像の投影と、フレーム単位ので映像とLED照明の同期などを試している。
今回は、僕が持ち込んだLED照明とタマテック社のLiddell xkwに加えて、シンガポール側からCATALYST使いのウーチェンが参加、会場にあるWholehogと組み合わせて、自在に映像を操っている。
舞台は、memorandumのセットでORの照明をデザインしているような状態になっていて(内容は、もちろん全然違うが)、LEDを使いながらも、色味はほとんど使わず、LEDの反応の速さを駆使している。
あと、Atomic 3000 DMXも3台吊っているので、かなり明るいフラッシュが使える。
Atomic 3000自体、もうかなり古い機種だけど、それでもORの頃とは全然使い勝手が違う。LEDと合わせると、かなり面白い。
ちなみにアクティングエリアは、11m (w) x 5.5m (d)で、スクリーンは11m (w) x 2.5m (h)。そこに、明るさ1万ルーメンのCHRISTIEを2台使ってリアプロで映像を投影し、真ん中でブレンディングしている。これが奇麗にミックスできるので、なかなかの画面だ。
ただ、プロジェクター用のシャッタ(ダウザー)の良いのがなくて、DMXでコントロールしているのだが、ずいぶんレーテンシーがある。プロジェクター自体の内部シャッターも同じ。なので、このコントロールに苦労している。
あと、すべての映像ソースが25フレでできていて、僕のLiddellが秒間24フレでしかプログラムが書けないのも悩みの種。
それにダウザーのレーテンシーもあるので、結局最後は眼で見つつ調整みたいなことになってしまう。
今回は、ホテル28連泊で、朝食も付いているしネットも繋がるし、毎日掃除もしてくれるので楽ちん。
おまけに小さなプールもあるが、まだ泳いではいない。4週間より長い滞在制作も経験あるけれど、ホテルに28連泊は、今のところ最長かも。
シンガポールは、先週末はF1で盛り上がり、街は大変なことになっていたけれど、今週はそれも落ち着き、ついでにクリエーションも、日曜にフルバージョンのプレビューを行って、今週はそれを受けてのアップデート。
しかし、劇場は他の公演で使われているので、主にビデオを見つつホワイトボードを前にミーティングという感じ。英語でのディスカッションは、完全に全部理解できてるとは言えないけれど、前にエアさんとやっていた時は、メインがフランス語でサブがベトナム語、それに時々英語少々という状態だったので、それに比べるとずいぶん話しやすい。
ということで、ここに来てようやくたまっていたメールの返事も書き、時間的な余裕も出て来たので、また近況など書いてみます。
ではでは。
God of odds
Macaoにtrueの公演で,来ています.
といっても,公演はすでに無事に終了.会場が国立劇場的なところで,スタッフも設備もかなりよくて,ブラジル以来の久々の公演ながらも,さしたる問題もなくするすると進んで,いい出来で終わりました.
それから,図面描きや打ち合わせなどを進めるために,ちょっとMacaoに残っているのだが,終日曇天の割りにはわりと過ごしやすい気候で,しかも物価が安くて食べ物がなかなか美味しいので,ぶらぶらと散歩しては飯を食うだけで,あっという間に1日が終わる.
しかし,Macaoは噂にたがわずカジノだらけの凄い町で.とにかく,そこら中に突拍子もないビルが建ち,変なビルはことごとくカジノ.
中心地の,世界遺産のある辺り以外,それほど観光客は多くないように見えるが,いざカジノに入るとヒトでごった返している.見ていると,大半がメインランド(中国)からの観光客のようだ.
僕も,とにかく外見が派手なカジノを3軒ほど回ってみたけれど,どうも何が面白いのか理解に苦しむ.
というのが,もう100%どう見ても全てのシステムはデジタルでコンピューター制御されている.
中には,ディーラーすら画面に映ったCGが相手というところもある.まあ,大半はちゃんと人間がディーラーをしていたけれど,でも,ゲームに何かの機械が関与していないところは無い.カードだって,変なマシンに入れたら,下から必要な枚数が出てくるようになっている.
人間が,研鑽を重ねた手技でいかさまをやるのも困るけれど,でも機械は誤魔化さないなんて,なぜ信じられるのだろう?
もっと不思議なのが,簡単な骰子ゲームなどは無人化されていて,骰子が画面に表示されていたりするのだが,あれは物理的なものではなくてプログラミングなのに,なぜ同じゲームだと思えるのだろう.
ギャンブルには詳しくないので,的外れな意見かもしれないが,賭け事で運否天賦を競うのには,その一番根っこに0か1か,赤か黒かの確率は常に2分の1だというのがあるように僕は思う.
つまり,もっとも単純なゲームで,例えば半丁とか大小とか,確率1/2のゲームがあったとして,仮に100回同じ出目が続いたとしても,つまり100回連続で「半」が出たりずっと「大」だったとしても,次に丁半や大小のいずれの目が出るかは,やはり確率2分の1でしかないというのが,博打の魅力じゃないかと思えるのだ.
でも,システムに制御されたギャンブルは,きっとそうじゃない.
裏側の何処かでは,出目の統計と出入金の管理が細かくされていて,たまにガス抜きのためにある程度の当たりがでるように,細かくプログラミングされているのではないかと僕は勘繰ってしまう.
そうなると,それは賭け事ではなくて,複数の参加者のうちの誰が幸福(当たり)を掴むかという,能力とは関係ないサバイバルゲームのようなものに思えてくる.
それは確率の神との勝負というより,参加者が上を向いて,お宝が落ちてくるのを口を開けて待ってるような状態に思える.
まあ,宝くじもおんなじようなもんだと思うけれど,そんなの面白いか?
For the first time in many years
本当に久々の更新.
一昨日,6歳の娘に,オセロで負けた.ろ,ろ,6歳児に...
うーん,大丈夫か自分,と思う反面,親バカな感慨もある.よくぞ,2つの細胞から6年10ヶ月あまりで,ここまで.
凄いもんだ.
とても敵わないまでも,こちらも少しずつでも進まねば.無限の時間があるわけじゃないのだから.
ちなみに「true/本当のこと」,もうすぐマカオと香港公演です.
Macao, Macao Cultural Centre – Small Auditorium
05 June 2010
http://www.ccm.gov.mo/en/page/page_programs/programs_details.asp?event_id=1464
Hong Kong, Hong Kong Cultural Centre – Studio Theatre
18, 19, 20 June 2010
Presented by Leisure and Cultural Services Department/
Organized by orleanlaiproject
http://www.lcsd.gov.hk/CE/CulturalService/Programme/en/multi_arts/0000019d.html
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2010_End
恵比寿映像祭でのTime Lapse Plantの展示,無事終了しました.
今日,撤去と搬出が全部すんで,ようやく一息つきました.思い返せば,去年の12月にBankARTでお世話になって基本部分を作り,今回恵比寿ガーデンプレスのセンター広場で,LED_Ring4基のインスタレーションを作る事が出来ました.
次は,これです.
http://www.shiga-bunshin.or.jp/bdc/#/about
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2010_On display
第2回恵比寿映像祭でのTime Lapse Plant 4_Rings,好評展示中です.
わりと,19日と26日のパフォーマンスだけやってるのかと,思われているようなのですが,メインは28日まである,日々のインスタレーションです.
明るいうちは,ほぼLEDの光は見えないので,イルミネーションのように灯体自体を見て分かる,時計のような動きと音が,毎分ごとと10分おき,それに11時から17時までの1時間ごとに発信されています.
そして,17時半から21時までは,横浜BankARTで製作したパターンを基本にした,Time Lapse Plantの光と音が発動します.
展示が美術館内ではなくセンター広場のど真ん中なので,美術作品というよりは何らかのアトラクションかプレイグラウンドみたいな感じで,人々が楽しんでくれています.結構,夜でもちびっ子が影を追いかけて,自分の尻尾にじゃれる犬みたいにクルクルしてたりして,いい感じです.
あの子らのうちの1人でも,もう少し大きくなった時に,何であの影には色が付いてたり回って見えたんだろうと疑問に思って,色覚や目の仕組みなど興味を持ってくれたら嬉しいです.
展示は28日まで.今後はなかなか4_Ringsの構成はできないような気がするので,もしお近くにおいでの節は,是非夕方以降に恵比寿ガーデンプレースへ!
写真美術館内の映像祭の展示も,面白いものがいろいろあります.レアな映画の上映も目白押しだし,楽しんで過ごせますよ.
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2010_05
恵比寿映像祭_04
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2010_03
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2010_02 & AAAA
映像祭の準備,順調です.今日は,LED照明が,全てリングに付きました.ただし,まだ現場に電気が来てないので,点灯チェックはできてません.明日朝,電設屋さんが回路を開けてくれて,それで結線がちゃんとできてるか分かります.何せ,96台のLEDなので(たぶん,僕が使うLED灯体数としては,これまでで一番多い),ケーブリングがむちゃくちゃ邪魔臭いです.
映像祭の詳細は,ここにあります.
http://www.yebizo.com/
ちなみに,19日がオープニングで,ダンスパフォーマンスがあります.
関連イヴェント:ライヴ・プレゼンテーション
■2月19日(金)19:30-20:00/無料
パフォーマー:森裕子(Monochrome Circus)/平井優子(dumb type)
サウンドデザイン:古舘健
そして,2月28日が映像祭の最終日なんですけど,それに先駆けて26日の金曜日に,いちおうクロージング・イベント的なパフォーマンスを行います.
関連イヴェント:ライヴ・プレゼンテーション
■2月26日(金)19:30-20:00/無料
パフォーマー:川口隆夫/白井剛/鈴木ユキオ/森川和弘
サウンドデザイン:真鍋大度
なかなか豪華な,顔合わせでしょ.
それで,この26日のパフォーマンスで踊ってくれる森川和弘が,13日(土)・14日(日)と,川崎市アートセンターで公演します.彼は,まだMonochrome Circusに所属していた時に,Refined Colorsのプロジェクトに参加してくれて,一緒にいろいろ回りました.それに,密かにダムタイプの公演で,川口隆夫の代役としてツアーに参加してくれたりもしています.関東でのソロ公演は初めてかもしれませんが,ぜひ彼の作品を観てみて下さい.
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Beyond the Border Series Vol.2 ダンス Plus
―脱領域のクリエイション―
『AAAA』
森川弘和(ダンサー) × 青柳拓次(音楽家)
http://kawasaki-ac.jp/theater-archive/100213/
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Beyond the Border Seriesは異ジャンルの組合せによる新しい舞台の可能性を探るプロジェクト。
Vol.2では、関西を拠点に活躍するダンサー・森川弘和と、LITTLE CREATURESやソロユニットでも知られる音楽家・青柳拓次が競演。それぞれのフィールドで注目を集めるふたりが、どのような“ダンス”と“音”を繰り広げるのか、どうぞご期待ください。
『AAAA』
出演:森川弘和(ダンサー) × 青柳拓次(音楽家)
公演日程
2010年
2月13日(土) 19:00
2月14日(日) 16:00
受付は開演の1時間前、開場は開演の30分前。
受付開始後、整理番号を発行します。
会場
川崎市アートセンター
〒215-0004 川崎市麻生区万福寺 6-7-1
小田急線 新百合ヶ丘駅 北口徒歩3分
小田急線 新宿駅、本厚木駅より急行で27分/小田急線 新宿駅より快速急行で23分
※駐車場はございません。ご来場の際は公共交通機関をご利用ください。
チケット料金
前売 3,000円/当日 3,500円
(全席自由・日時指定・税込)
未就学児の入場はご遠慮ください。
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よろしくです.
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2010_01
安藤さんのLargo,美しかったです.
自分で言うのもなんですが,安藤さんの身体やチェロ奏者の荒さんの演奏,音響水谷さんの理知的なサウンドデザインに,うまくフィットした照明を組めたと思います.それに,会場の象の鼻テラスのスタッフのみなさんも,すごく楽しそうで,何というかな,舞台の原点というか,良い意味で学芸会とか高校のクラブ活動みたいな,みんなで創っていく良い公演でした.
BankARTでの展覧会が終わって,1週間ほど京都に帰って再度滞在した横浜でしたが,改めていろいろ楽しかったです.
で,安藤さんのLargoが終わって,京都で一息ついて,今日から第2回恵比寿映像祭参加「Time Lapse Plant 4Rings」の設営開始です.名前の通り,4つの輪っかでLEDの明かりが回ります.
今日は,リングが4m上に,柱に支えられてあがりました.
明日は,リングにLEDを設置します.
乞うご期待!
Yoko Ando new solo performance ”Largo”
みなさん,おかげさまで,Time Lapse Plant@BankART_NYKは,無事終了いたしました.
おいで下さった方々,ありがとうございました.
見逃した方,是非2月19日から恵比寿の東京都写真美術館で開催される,「第2回恵比寿映像祭(歌をさがして)」においで下さい.
http://www.yebizo.com/
オフサイト展示という,ちょっとだけ美術館からは離れたところで,大きなインスタレーションを作ります.ちなみに,フライヤーやweb上の参考写真に,シンガポールで中谷さんの作品に照明をつけさせていただいたのが使われているので,よく霧とのコラボレーションですかと勘違いされますが,残念ながら今回は違います.BankARTと同じく,真鍋大度+石橋素氏との作品です.まあ,またこれは日が近づいたら書くとして,まずは,こちら.
BankARTでの展示のオープニングでも踊っていただいた,安藤洋子さん(The Forsythe Company)の新作ソロ公演に,照明担当として参加します.
会場である「象の鼻テラス」での,本格的なダンス公演は,初めてだとか.すごく贅沢なアクティング・エリアの取り方で,開放的な舞台になってます.26日火曜日からの公演なので,本当にもう直前ですが,是非観に来て下さい.劇場での公演とは,また違った発見がきっとあります.
東京からでも,案外近いです.
お待ちしています!
Greeting
みなさま,今年もたいへんお世話になりました.
おかげさまで本年は,「true/本当のこと」の東京公演+EUツアー+ブラジルツアーが実現しました.
また,川口隆夫さんや鈴木ユキオさん,Monochrome Circusの森裕子さん達とのコラボレーションにもそれぞれ参加でき,とても楽しい時間を過ごさせていただきました.
そして現在,今年の締めくくりから来年への繋がりとして,横浜のBankART Studio NYKにて,「Time Lapse Plant」というインスタレーション作品を,「true/本当のこと」のクリエーションメンバーである,真鍋大度・石橋素両氏と制作展示しています.
12月25日のオープニングでは,フォーサイスカンパニーの安藤洋子さんと,ダムタイプの平井優子さんに踊っていただきました.
今年の会期はもう終わりましたが,年明けは1月5日から11日まで開催します.みなさま,お近くにおいでの際は,ぜひBankARTまで足を伸ばしてお立ち寄り下さい.僕も会期中はほとんどBankARTにいます.
http://www.bankart1929.com/
2010年は,1月26日(火)~28日(木)まで横浜の象の鼻テラスで行われる,安藤洋子さんの新作ソロ公演「Largo」のお手伝いをさせていただく事から,舞台の仕事が始まります.
http://www.yokoando.com/?page_id=18
そして,2月19日(金)~2月28日(日)までは,恵比寿の東京都写真美術館で開催される「第2回恵比寿映像祭」で,「Time Lapse Plant」の超アップデートバージョンを展示させていただきます.
http://www.yebizo.com/
またこの間,セッションハウスで行われる川口隆夫氏のワークショップにも,照明の講師として参加します.
http://www.session-house.net/ws_info.html
今後も出来る限りの公演や展示に,悔いの残らないように全力で取り組んでいけるよう,みなさまのご協力をいただいてがんばります.
2010年も,どうぞよろしくお願い申し上げます.
藤本隆行/kinsei
Time Lapse Plant at Yokohama BankART1929_NYK
唐突ですが,展覧会のお知らせです.横浜で,インスタレーション作品の展示をします.
12月25日オープンで,25日にはオープニングパーティと,その中でフォーサイス・カンパニーの安藤洋子さんとダムタイプの平井優子さんに踊ってもらいます.お近くにおられる方は,ぜひ遊びに来て下さい!
Time Lapse Plant /偽加速器( prototype/試作)
藤本隆行・真鍋大度・石橋素
日程:2009年12月25日(金)-2010年1月11日(祝・月)
(休館日=12.29 -1.4)
時間=11:30 -19:00
※初日12月25日[金]は20:30まで開場後、
オープニングパーティ 20:30-22:45(料金1500円)
詳細は下記[関連イベント情報]参照
会場=BankART Studio NYK 1F / NYKホール
料金=無料
私たちは、時間を知覚する器官を持っていない。
光や音は、眼や耳の器官で感知され、それぞれいくつもの情報として脳に送られて、脳内のさまざまな部位で処理されたのち統合される。形態や色彩、そして運動は視覚に束ねられ、空気の振動は様々なざわめきとして聞こえる。
その他にも、空気中に拡散する微細な粒子は、鼻の粘膜を介して匂いとして捕らえられ、温度や振動もそれぞれセンシングされる。
しかし、時間そのものを感知する事はできない。
だが、時間に様々なレイヤーがあるという事は、確かな事のように思われる。
例えば身近な植物の生きている動きすら、ヒトの時間では見る事が出来ない。
コマ落とし(Time Lapse photography)という、あっけないくらい簡単な技法を使うと、植物の生きている時間が見えてくる。それは、たぶん誰もが一度は目にした映像だろう。
現在、地球の大半を被っている世界時間のネットワークは、「協定世界時」と呼ばれ、1972年からは、「セシウム133原子が、91億9263 万1770 回振動する時間を1 秒とする」と、計量に関する国際単位系(S1)によって定められている。
そのセシウムの振動が、91億9263 万1771 回ではなくきっちり91億9263 万1770 回だと測定する機器に関しては、私の想像力は遠く及ばないが、この1 秒を決して私の身体は正確に感知しえないだろう事は、容易に想像できる。
「Time Lapse Plant /偽加速器」は、LED照明や音を使い、観察者の影に運動を与える事で、見る者の時間感覚を困惑させる。同時に、色彩を感知する人の目のシステムや音と光の同期により、偽のリアリティを現出させる装置です。
参照: 一川 誠「 大人の時間はなぜ短いのか」(集英社新書)
*この作品は、東京都写真美術館で開催される第2 回恵比寿映像祭出品作の試作機として、BankART1929と東京都写真美術館の協力を得て制作されます。
主催=藤本隆行/共催=BankART 1929
協力=カラーキネティクス・ジャパン株式会社、東京都写真美術館、タマテックラボ、京都造形芸術大学空間演出デザイン学科、Rhizomatiks、DGN、4nchor5 la6 、 株式会社エディスグローヴ、稲荷森 健(PAシステムデザイン)、永田 幹(ファニチャーデザイン)
問い合わせ先
info@true.gr.jp(藤本)
045-663-2812, info@bankart1929.com(BankART1929 Office)
平成21年度横浜市先駆的芸術活動助成(ACY)
■関連イベント情報
オープニングパーティ+ 安藤洋子×平井優子 ダンス・インプロビゼーション
日時=2009年12月25日[金] 20:30-22:45 (ダンスイベント=21:30-21:50)
料金=1,500 円(パーティ参加費含む) 協力: 象の鼻テラス
安藤洋子(あんどう ようこ): 1989年木佐貫邦子に出会い、本格的にダンスを始める。
山崎広太、笠井叡等多くのダンス公演に参加。97年より自作自演のソロダンス活動を開始。その傍ら、野田秀樹作・演出: NODA.MAP公演、小澤征爾指揮によるロベルト・ルパージュ演出のオペラ、坂本龍一オペラなど幅広く舞台で活躍。
2001年ウィリアム・フォーサイスに認められフランクフルトバレエ団(05 年よりThe Forsythe Company)に入団。ザ・フォーサイス・カンパニーの中心的存在として世界の第一線で活躍するとともに、日本においても、自らの企画プロジェクトや外部カンパニーへの振付けなど、精力的に活動している。
平井優子(ひらい ゆうこ): 幼少よりクラシックバレエを学ぶ。
珍しいキノコ舞踊団、ニブロール、ルーデンス作品にダンサーとして客演。2001 年よりダムタイプメンバーとして活動する傍ら、仏振付家Marco Berrettini、映像作家Sharon Lockhart 等とのクリエーションに参加。
地元岡山にてミュージシャンとの即興コラボレーションや振付作品の発表等もおこなう。
2008年ダムタイプ高谷史朗新作「明るい部屋」のクリエーションに参加、ツアー中。
対談=藤本隆行×山口真美(中央大学文学部心理学研究室教授)
日時=2010年1月10日[日] 15:00-/料金=1,000 円(ワンドリンク付き)
山口真美(やまぐち まさみ): 1987年、中央大学文学部卒業。お茶の水女子大学大学院人間発達学専攻単位取得退学。博士(人文科学)。
(株)ATR人間情報通信研究所客員研究員、福島大学生涯学習教育研究センター助教授を経て、現在中央大学文学部心理学研究室教授。
主に生後8か月までの赤ちゃんを対象に、脳と心の発達について研究している。
著書に『赤ちゃんは顔をよむ 視覚と心の発達学』(紀伊國屋書店)、『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』(平凡社新書)、『視覚世界の謎に迫る 脳と視覚の実験心理学』(講談社ブルーバックス)など多数。
Athenae
サンパウロでの「true」公演が終わって,ギリシャのアテネに移動.今度はダムタイプの「Voyage」公演.
ルフトハンザで,サンパウロからフランクフルトへ直行,そこでマドリットから来る別チームと合流しアテネへ.サンパウロ>フランクフルトは,日本からEUまで飛ぶより少し短い時間で行けて,思ったより近い.
ギリシャは初めて.公演会場は,「Megaron」という名の,日本だと新国立みたいな位置づけのホール.とにかく,むちゃくちゃでかくて,お金もかかってます.4トン車よりも大きなトラックでも,道路より下にある駐車場への螺旋通路をグルグル回り降りて,そのまま舞台上手袖近くまで車ごと進入できる.袖も,上下手とも舞台と同じ大きさが確保されている.
人伝てに,ギリシャの劇場スタッフはどうしようもないとイタリア人が言っていた,というのを聞いて,内心どうなる事かと思っていたけれど,Megaronのテクニカルはみんな技術もしっかりしていてやる気もあり,とても良かったです.
惜しむらくは,こちらの送った図面や情報が,何処かで止まっていて,実際いに働く人達には何も伝わっていない.わかればてきぱきと動くんだけど,いちいち次は何をするのか申し送りと確認が必要で,聞いてから全て対応していて,その分時間がかかってしまった.でも,公演は無事に終わりました.
客席は,バルコニー3階席まであって,たぶん全部埋まれば1500人とか2000人規模.さすがに3階は入っていなかったので,2回公演でそれぞれ70%の入りくらいだと思う.
そして今日はオフで,明日はカンヌに移動.
アテネの人は,だいたい2時半くらいにお昼を食べて,夕食は21時以降,しかもお昼はがっつり夜はお酒を飲みながら何かつまむというパターンが多いそう.それで,今日は僕もお昼を2時前に食べに出て,そのまま街を散歩.
アテネの街は,少し歩くだけで表情がくるくる変わる.
ホテルの近くは移民街で,パキスタンやアフリカ系の人達が屯っていて,その中に中国人も多い.
でも10分も行くと端正な並木が続き両側にお洒落なカフェが建ち,そのうちパルテノンの建つ丘が見える,お土産屋さん乱立の広場に出る.
そうかと思うと,山のように皮を剥がれた羊の頭や,頭の先から尻尾まで全身を剥かれて吊るされた羊・子豚・トリで一杯の肉屋がぎっしり並ぶマーケットやら,金物の並んだ道具屋筋,強大な建築の続く官庁街(劇場もこの辺りにあった)まで,結構足で歩けてしまう.
わりと大きな街の印象があるが,実際は街の端から端まで歩こうと思えば歩ける感じ.
数千年前から街があったというだけあって,いろんな時間がそこここに積もっている.
ずっとホテルと劇場の往復だったので,今日少し散歩しただけで,ずいぶん街の印相が変わった.こんなにいろんな面が見える街も,珍しい気がする.
Brazilian tour ended from continuous crisis
今回のブラジルツアーは,はなっから綱渡りの連続.それでも,最終的に何とかなってしまうところが,この国の良さというか,だから学習しないの?というか...
まずは,ヴィザ.
毎回,いろんなカンパニーが必ずもめてアタフタする.数えきれないほど同じような状況に陥っているだろうに,何ヶ月も前から急かしていたのに,東京出発組の労働ヴィザが降りてパスポートを受け取ったのが出発当日の午前中.関西組は,名古屋の領事館発行で,出発前日に手元に届く.
もちろん,届いて良かった!でも,なんで,やっぱりこんなにギリギリなの.
そして私は,イパネマ海岸で,海パン一丁で茫然自失.
でも,改めて思うけれど,コンピューターが無事で,パスポートが無事で,身体にも何一つ怪我もせず,仕込みも公演も,何の支障もなくて良かった!
いやホント,仕込み初日にコンタクトをはめて劇場に戻ったら,何の事はないまだ劇場の舞台と客席を作り直している最中.つまり,作業的には零以下.
僕がいてもいなくても,問題は無い感じでした.日本から参加してくれたスタッフが,少々手持ちぶたさな感じで,劇場スタッフのお尻を叩いてたのでした.
次は,ブラジル到着数日後.イパネマの災難もちょっと癒え,仕込みもリハも順調なある朝.
起きてベッド脇のサイドテーブルの目覚ましを持ち上げると,なぜか底がびちょびちょ.??? その時には出来ていた新しい眼鏡をかけてみると,どうもサイドテーブルの天板がキラキラ.その真ん中に,宿のキッチンから持って来た背の高いプラスチックのコップがある.
そうだ,昨夜結構酔って帰って,台所でウォータークーラの水を入れ,ぐびぐび呑んで残りを入れたままそこに置いた...
天板の上には,3冊の本.その一番下の漫画,西原理恵子先生の「できるかなEX」が,見た目はっきりブヨブヨしている.そして,サイドテーブル2段目からはMacBook Proの上面がはみ出して,そこにはどう見ても透明なH2Oが微妙に溜まっている!
原因は,プラコップが明らかにひび割れていた.捨てろよ!そんなコップ.
僕が呑み残した水は,夜中じゅうかかって天板上面に広がり,西原センセの漫画をブヨブヨにしたのみならずそこから下に滴って,Macの上面と回り込んで底もかなり湿っぽい.
どうすんだよぉ.と文句を言っても始まらないが,Macはスリープ状態で前面の白色ダイオードがゆっくりウインクしている.とにかくまわりを拭いて,神仏は信じないものの何かにすがる気持ちで恐る恐る蓋を開けてエンターキーを一打すると,うぃぃい〜んと目覚めの音を発して画面が馴染みのディスクトップになったかと思うと,ぷっといきなり画面が真っ暗に!あわわわっわわわわわわわっっわ!
落ち着け,相手は水だ,H2Oだ,無色透明乾けば何の痕跡も残さない.
ずいぶん前に,確かM鍋氏が同じような事になって,その時は僕は何してんだかって鼻で笑って,でも翌日には「乾かしたら直りました」とふざけた事を言っていて,そんなまあとても都合の良いと思ったけれど,とにかく速攻でバッテリーをはずし,蓋を90度開いてHDD側を上にして立て,そこに全力最大風速で扇風機を向ける.
前に,HDDの換装をしたので,だいたいMacの中身は覚えている.僕のマシンはわりと古いので,電源と同じ側にHDDが位置している.とにかくデータが無事なら何とかなる.
それにしても,ここ数日のうちにダムのギリシャ/アテネ公演とフランス/カンヌ公演の図面を仕上げないと,サンパウロでの「true」公演が終わったら,その足でギリシャに向かうのだ!
そのまま扇風機フル稼働で約1日.翌朝祈るような気持ちでバッテリーをはめ,起動一発,MacBook Proさま見事ご生還.
コツは,いい感じで蓋を開け,内蔵ファンの排気口からバッテリーをはずした裏面に向けて,うまく風を送り込む事かも.
Macびちょびちょに濡れても,乾いたら動きます.
そしてリオの公演も無事終わり,僕等はサンパウロへ飛行機で移動.
到着翌日はほぼオフで,夜10時にリオから到着するトラックを待って搬入.
会場のSESC Pinheirosは劇場も立派で,大きな複合施設なので,搬入だって楽勝でしょうと鼻歌交じりで出かけたら,あらびっくり劇場の地下4階まで通じるエレベーターはどう見ても僕等の貨物の一番小さい箱がやっと載るかどうか,あとは駐車場の通路,よくあるグルグル螺旋に降りて行く道,しかもところどころにスピード出し過ぎ防止にわざわざ凸凹が作ってある坂道をぐるぐるぐるぐる地下4階まで行かなければいけない.
現地受け入れ側プロデューサーのペドロ氏も,通路の事は知っていたのかどうか,でもこちらの貨物の大きさはまったく把握しておらず(テックライダーの最初に書いてあるのに!),機材の箱の大きさを見てちょっと腰が引けている.
前の公演の搬出とダブりながら,約束の30分後ぐらいにようやく集まってきた搬入要員は,どう見ても60過ぎの白髪のおじいちゃんまで交じっていて,こんな夜中に1個600kg弱のフライトケースを計3個,地下4階までスロープを転がして降りて行けるようには見えなくて,その時はもう夜中23時.
そこにどこからか現れたのが,1台のフォークリフトとなかなか頼もしげなおっちゃん.何で,夜中におっちゃんがフォークリフトで?散歩?...
これがまた地獄に仏,フォークの名人.600kg弱の箱をフォークで差して,バックで搬入経路をグルグル降りて行く.しかもこのフォークリフトが優れもので,全部のフォークがそうなのかどうか知らないけれど,貨物を差したままフォークが左右にも動く.上下左右微妙に貨物位置を調整しながらほぼ通路幅一杯の貨物と共にグルグルグルグル,あっという間に一番重い箱を地下4階まで降ろしてくれた.
ありがとう,おっちゃん男前.
そして昨晩,サンパウロでの2日間仕込み後の2日計2回公演が無事終了.
客席が一杯でなかったのはちょっと残念だけど,お客さんの反応はとても良く,公演後わざわざオペブースにきて声をかけてくれる人も続出.公演の内容も,これまでのベストと言ってもいいかも知れない.
なにより,音響機材が充実していて,すごく音が良かった.ただし,配線やセットアップがいい加減だったみたいで,音響のF原さんがほぼ2日かかって全面的に繋ぎ直して調整し直していた.
みなさまゴクロウサマです.良い公演でした.
僕は,T氏とF原さんと一緒に,明日アテネに移動.
月曜からは,アテネでダムのVoyage仕込み開始.
Report: theft in Ipanema
11月6日に成田を発って,8日にRio de Janeiro着.30時間越えの移動.「true」のRio de JaneiroとSão Paulo公演.リオはもう終わったけれど,São Pauloはこれから,18日19日とSESC Pinheirosで行います.
で,リオ到着の翌日8日,人生で最大のピンチを迎える.
思い返せば,バックパッカーだった20代の頃は,結構用心深い旅人だった.まあ,たいてい一人でウロウロしていたし,いろいろ怖い話も聞いたので.
なのに,どこでこんなに平和惚けたのか,ついウッカリとというにはあまりにも緩過ぎる状態で,カモがネギ背負って鍋に飛び込んで行くような事してしまいました.
一月前くらいのEUツアーで買った,ぴっかぴかの高そげなリュックの中にデジカメなど諸々を詰め込んでリオ観光に出かけた8日,長旅の調整日で翌日から劇場で仕込みが始まる.
折しもすごく暑い日で泳ぐ気満々だったんだから,スーパーのレジ袋か何かに必要最小限の物だけ入れてフラフラすればいいものを,フル装備で宿を出発.いろいろ回って,イパネマ海岸に着いたのが夕方,でもまだ陽は明るくて浜はたいへんな人出.
あまりの暑さに負けて一杯ひっかけたカイピリーニャ(サトウキビ蒸溜酒カシャーサ+ライムぶつ切りと氷)の美味しさも手伝って,開放感一杯で海に突入.
今から考えると,大きな財布出して酒は買うは,道で着替えてリュックに服も財布も詰め込むは,120%鴨丸出し.
10人程度のグループ行動で,まあ常に3人くらいは,浜にまとめた荷物の周りにいる事はいた.
でも,あんな状況で,荷物の見張り番だけに専念できるはずはないし,そんな役目のためにイパネマまで来てるわけでもない.
さて,しばらくBrazilの波に浮かんで満足した私,その間30分くらいか?
そろそろみんな帰りましょうかと言いに浜に上がってみんなのところに行き,顔でも拭こうかとリュックからバスタオルを出そうとしたところ,どんなに鞄の山をひっくり返しても自分のリュックが見つからない.リュックの下に置いたサンダルはあるのに...
茫然自失,思考が停止するというのを,おそらく初めて体験.
むかーし,オーストラリアの奥地の砂漠で,乗ってたキャンピングカーが横転してえらい事になった事があるが,あの時でもいろいろ対処法や確認事項はすぐに浮かんできて対応できた.でも,今回はもうどうしたらいいやら,まったく考えられない.
今回いくつかとてもラッキーだった事があるが,その中でも最大級の助けは,T氏の友人で3週間前にイパネマに転勤になったばかりの,ポルトガル語ペラペラの日本人H氏が一緒だった事.それに,一人じゃなく,ツアーマネージャーのTさんや他のみんなも一緒だった事.
とにかく,海岸通りにいたパトカーに知らせて,しばらくしたら「観光警察」というのが来て対応してくれるからそれまでパトカーの横にいろと言われる.
この時点で,僕の格好はびちょびちょの海パン一丁にサンダル,まさしく海から上がったまんま.次第に現実を把握して,一番気になったのが何かというと,これが「眼鏡」.
そう,僕はど近眼なので,眼鏡がないと50cm先の人の顔も見えない.字も読めないから交通機関にも乗れない...で明日仕込みだ!
ようやく頭が回り出して,リュックの中身を思い出す.財布の中身は2万円弱のBrazil通貨リアル,クレジットカード,銀行のキャッシュカード,運転免許証,その他各種日本のカードとか診察券とかパスモとか...何ブラジルまで持って来てるんだか.
それに携帯,さっきまではいてたユニクロのパンツ,Tシャツ,バスタオル.ちょっとした常備薬と,仕事用のマグライトにペンチになる十得ナイフ,自宅等の鍵束,もっと痛いのが,大きめのポーチにまとめていた細々した仕事道具,卓上ライトやMACのビデオ出力用アダプター,水準器や変換プラグやテスター,それに照明用アプリのドングル!予備の眼鏡!ああもう,書いてても嫌になる.こんなのイパネマ海岸に持ってく必要があるか?
何といっても,眼鏡は何度か困った目にあっているので,常に予備を持ち歩いていた.しかし海水浴は盲点だった,いつも使っていたのも予備も丸ごともって行かれる.
照明ソフトのドングルは,これも予備を持っていて,こちらは公演機材と一緒にまとめていたので,何とかセーフ.
そう,ラッキーだった事にいくつかのうち,コンピューターが無事だった事と,他の公演機材も何ともなかった事は大きい.つまり,お金で買えるものは無くなったけど,データ等は無事だった.ラッキー!眼さえ見えれば,公演は何とかなる.
この時点で,20分くらいはパトカーの横で待っていたのだが,観光警察はなかなか来ない.次第に,キャッシュカードや携帯が気になり出す.ひょっとしてすぐにでも止めないと,たいへんな事になるのでは...
横に付いていてくれたT氏,H氏,Tさんも同じ意見で,とにかくカードを止めようという事になり,折しもやっと来た観光警察のパトカーに乗り,まずH氏の自宅にお邪魔.ネットで,持っていたカードと携帯の緊急連絡先を検索してもらう.そして,Tさんの日本の携帯でガンガン電話.
しかし,一人で同じ状況だったら,たぶん死んでました.携帯もパクられてるから,どこにも連絡できないし,だいいち目も見えない.言葉も話せない.
まあ,一人では鞄を浜に置いたまま泳ぎには出ないかも知れないが,例えば睡眠薬強盗で身ぐるみはがされて放り出されたなんて話も,昔何処かで聞いた事がある.
そして,再度パトカーに乗り込み,警察へ向かう.
この時僕は,生乾きの海パンとH氏からお借りしたラルフローレンのピンストライプのYシャツにサンダル履き.
警察では,調書というか盗まれた時の状況やリュックの中身の事など聞かれるが,警察のおっちゃんほぼ英語通じず,ここでもH氏にまったくもってお世話になる.英語もたどたどしい僕だけだったら,いったいどのくらい時間がかかった事か.
ようやく事情聴取が済んで書類を作ってもらい,外に出たらもう夜の20時過ぎ.近くにショッピングセンターがあって,眼鏡屋も入っているというので,リオいち高級なお金持ちエリアにYシャツ海パンサンダル履きのほぼ盲目状態で,手を引かれるチンパンジーみたくして突入.
それでわかったのが,眼鏡を注文するにはまず眼科医に行って検眼しないといけない.日本みたく眼鏡屋で検眼は出来ないという事.それに最短3日以上は,作るのにかかる.
いやホント,ぞっとしました.繰り返しますが,明日から公演の仕込みです.
結論としては,コンタクトなら買えるかもという事になり,でもまず検眼しないとどの程度の度数のものを買えばいいのかわからないから,ちょっと僕のを試してみますかと,またしてもH氏から救いの手が差し伸べられる.で,彼の自宅に戻り「-3」という度数の使い捨てソフトレンズを目に入れてみる.
コンタクトなんて,20年くらい前にバレーボールをする時にだけ入れていただけで,とにかく入れるのもはずすのもすごい苦労.そしてわかったのが「-3」では僕の目はたいして何も見えないという事.コンタクト入れて,その上からH氏の眼鏡をかけてようやく何とか周りが見える.
でも仕方ないので,とにかくありがたく何セットか使い捨てコンタクトをいただく.これでも裸眼よりはずっとまし.そして,ようやく近くのレストランで,何か食べようという事になる.
この時僕は無一文,やっと乾いた海パンにYシャツ+サンダルという珍妙な格好.あの時は客観的に見れなかったが,相当変なヤツ.
そして食事後ようやく宿に帰り,それから旅行保険会社やカード会社にもう一度スカイプで連絡をとる.スカイプにいくらかチャージしていて,本当によかった!銀行も保険会社も,とにかく何とか繋がる.
そうこうしているうちに朝になり,それまで忘れていたクレジットカードが,もう一枚財布に入っていた事を思い出し,大急ぎで電話.
ちなみに,忘れていたカードの事ではないけれど,何で楽天カードはあんなに盗難時の連絡先を見つけ難いのか?
ネット系の会社なのに,いくらHPをくまなく見ても,どこに電話かければいいのかなかなかわからない.しかもフリーダイヤルしか載っていなくて,スカイプからかからない.前日借りた携帯でまず連絡を入れたので,処理は済んでいてカードは止まっていたけれど,今後の事や詳しい状況の話をしようとしても繋がらなかったのは楽天カードだけでした.あとは,全てスカイプ経由で話が出来た.
いちおう参考と自戒のために書いておくと,僕が翌朝まで忘れていたカードは,十万円弱の買い物に立て続けに使われていて,カード会社が緊急対応で止めていてくれた.
それで聞いたところ,泥棒はかなり手慣れたグループのよう.盗難に遭った時間からさして経たないうちに,1万円・4万円・4万円,そして4千円台の買い物にカードが使われてますと,カード会社が教えてくれた.
いちおう保険で何とかなりそうで,被害はあまり大きくないようだが,この使い方をみると,まず1万円くらいの小物を買って,カードが生きているのを確認,その後,怪しまれない程度の高額商品を2個買っている.
僕はちゃんとカードの裏にサインしていて,しかも漢字だ.あまり高額のものは,さすがに対面販売では買えなかったようで,それで4万円台くらいなんだろうと思う.そして,カードが止まる前の4千円台って何だ,と思っていたんだが,先日Pay TVの会社から今月の会費を引き落とし出来ないとのメールが来て謎が氷解(しかし,リュックの中身を調べ上げて,僕のメアドまで使っているのには驚く.メアドの悪い使い道が無いかどうか,慌てて考えたけれど,アドレスは分かってもメールサーバーやPWまではわからないから何とかセーフかとは思う).
つまり,高めの品物を店で買った後は,さっさと見切りをつけて,今度はネットですぐ入手できる権利を買うと.
悔しいけれど,考えてやがる.そして,一件使った時点で,カード会社が介入してくれて,カードが使用不能になったという事だと思う.
あまりにも長くなったが,翌日に招聘してくれたフェスティバルのディレクターのリサーチで,何と1時間でできる眼鏡屋を発見.
実際は半日かかったけど,眼鏡が出来た.眼鏡屋のすぐ横にはお抱えの眼科医さんも開業していて,店で事情を話せばすぐに検眼,幸い僕の目にも合う「-9」という超ーど近眼用の2weekアキュビューも置いてあるプロフェッショナルな品揃えで,午後には劇場に戻って,コンタクトで仕込みに参加.夕方には眼鏡が届く.支払いは,T氏のカードでとりあえず払ってもらった.
いやもうとにかく,公演が無事できて良かった!
MACが無事で,いくらかの日本円も無事で,いやもう勉強させてもらいました,イパネマ海岸.
なので,今回のツアーは写真がまったく無いのです.そして,明日からSão Pauloの劇場入り!
Paris to Kyoto
パリから戻って1週間弱.
パリ公演は,地元スタッフの労働時間制限の関係で,余裕の3日間仕込み・リハ.
10時に劇場入りして,遅くとも20時までには出なければいけない.それも,音響・照明・舞台の現地スタッフ入り時間をずらして,いろいろ調整してなるべく長く劇場に僕等が居られるようにして,その時間設定.
なので,通常2日仕込みのところを,3日にしてもらった.というか,劇場側からそう提案してもらって,とてもありがたかった.
で,おかげさまで,夜に時間の余裕が出来て,フェスの他の作品を観に行ったりゆっくり食事に行けた.それに,余裕と良いスタッフのおかげで,とても綺麗に舞台がセットアップできた.
もともと器(劇場)も,「true」にちょうど良い大きさなのだ.舞台も客席も.全体の内壁が,日本の伝統的な催し物にフィットしそうな木目で被われているのは,もうどうにもならないが,そこは現地スタッフが心得ていて,舞台側はちゃんとブラックボックスになるようにシンプルな仕組みができている.それも有り,ツアースタッフの力もあって,全体的にベストな公演だったと思う.
パリは,dtで何度も訪れている.なので,知り合いも多い.懐かしい顔にも会えた.
とても良いtrue_EUツアー09最終公演地だったけれど,フェスのHPとパンフに,作品がまるで僕とS井君2人だけの共同制作のようにクレジットにされていたり,dtの作品だと思ってる人がいたりして,これだけはいくら修正しようとしても,なかなか思うようにならないのが残念.
いちおうディレクターという肩書きの僕が,違うから修正して下さい,といっているのに直らないのはいったいどういう事なのか?これだけが,とても残念でした.
なぜか,余裕のスケジュールにも関わらず,ぜんぜん写真を撮ってなかったのも謎.
パリ滞在中に食べたもの.
Hawaiiのベトナム料理(わかる人にはわかる),ピケ駅近くのレストランの貝盛り,ムール貝で有名なレストランのムール鍋.日本文化会館近くのレバノン料理.同じく近くの和食.同じく近くの韓国料理(といっても,さばの塩焼きとキムチやナムルの小鉢と白いご飯とみそ汁).後はハンバーグって,結局フランス料理らしいものは,フルーツデマール(貝盛り)以外食べず.
でも,全部美味しゅうございました.
で,ただいま京都に帰って充電+仕込み図制作中.
ちょっとしたら,「true」リオ・サンパウロ/ブラジル公演+dt「Voyage」アテネ/ギリシャ,カンヌ/フランスツアー.
なので,プランニングの間に,整体・焼き肉・スーパー銭湯・娘の自転車の並走と身体のメンテ.
Frankfurt_Mousonturm
Frankfurtの劇場は,Mousonturm.とても居心地の良い街の一角にある.
なぜかこれまでFrankfurtには縁がなくて,公演に訪れた事が一度もなかった.
劇場は,元石鹸工場との事で,5階建てのビルの1・2階が劇場部分とカフェ,上は劇場のオフィスとリハスタジオ,さらに3部屋のレジデンス施設がある.正直言えばちょっと狭くて,見切れも多くて,邪魔っけな柱なんかもあって使い辛いけれど,それを補って余りあるほどスタッフが熱心でフレンドリー.
こういう,少々使い辛い場所ほど,良いスタッフが揃っている場合がある.
お客さんも,客席が全体に近くてあまり席数が多くないというのが関係しているせいか,舞台で起こっている事を,積極的に観てやろうと思ってくれているのが伝わってくる.
仕込みも公演もバラシも,とても気持ち良く楽しみました.
写真.Mousonturm今シーズンの予定.このツアーで初めて,僕のリクエスト通りの公演団体名で告知されている.Oktober 09の「10 Japanese Artists Collective」というのがそれ.
通常より1m間口の狭い舞台.
2階席奥のオペレーションテーブル.それでも,舞台にかなり近い.
ドイツといえば,肉料理.これで,12人前.そして,それを嬉々として切り分ける2人.なかなか楽しいらしい.
そして,AmsterdamからこのFrankfurtまで公演を手伝ってくれたデニスとパトリックのお別れ会.(トラックドライバーのロジャーは最後まで輸送してくれるが,2人のヘルプはここまで.)
最終公演終了後,バラシ・パッキング・積み込みを終えて5階のゲストルームで.ここには,パフォーマ2人とデニスが泊まっていて,残りは駅前のホテル滞在.ツアマネを担当していただいたTG氏の腕が冴える.献立はすき焼きとショウガの利いたスープとサラダや酢の物,締めはラーメン.林立するワインを飲み干し,お腹ぱんぱん翌日は二日酔いで公演最終地パリへ.パリは,日本文化会館の括り.
Dusseldorf_tanzhaus
true_EUツアー3箇所目は,デュッセルドルフのTanzhaus.
ピナバウシュさんがいた,ヴッパタールも近い.
Tanzhausは,これまで2度ダムで公演してる.いろいろ好き勝手にやらせてくれる,という意味では使いやすい場所.
ただ今回は,どうも劇場テクニカルスタッフの新陳代謝が,うまくいってないような印象を受けた.前は機転が利いてパキパキ動いていたスタッフがいた覚えがあるが,今回はどうもかなり疲れた様子の高齢の方か,後はどう見ても10代でまだよく自分の仕事がわからない若者.その間がいない.まあ,たまたまそういうローテーションに当たっただけかも知れないけれど,もしずっとああいう構成だと,何処かに無理が来そう...良い公演を沢山やってる,良い劇場ですが.
で,僕等はTanzhausが持ってる,レジデンスアパートに宿泊.1フラットに3部屋の個室とバストイレ・キッチン.そういうフラットがいくつかあります.毎朝交代でパスタを作りコーヒーを入れ,劇場に通いました.
写真は,Tanthaus正面,名物?のアイスバーンは,豚足のドイツ風煮込みという感じでそれに芋とキャベツ.
前回見つけてファンになったセレクトショップ「MANIA FACTUM」.Loftみたいなとこですが,10倍は洗練されてます.日用品から食品衣料,園芸用品やおもちゃ,カバーしている品物のエリアに対してはあまり広くない店内なので,選びに選んだ物だけ置いてある感じ.波長が合う人には堪りません.次の写真の赤いLEDの柱と,その近くの三角の噴水が目印です.その半径50m以内.
Eindhoven
今や,アメリカのカラーキネティクス社本家も傘下に収めた大企業,フィリップスの発祥の地だというEindhovenで公演.確かその昔,フィリップスとソニーがCDを共同開発したと記憶している.
そのEindhovenでは,結構街の外れにいたようでかなりの田舎町の印象だったが,ドイツへの移動日に駅へ向かうためにタクシーで町を横断したら,中心はそれなりの都会でした.で,外れに居たのはそこに劇場があったからで,そのParkTheaterというのがでかくて立派.こんな田舎町に(失礼!)なぜこれほどの????という疑問が浮かぶが,どうやらお金持ちの町らしい.
中華を食べにレストランに行ったら,それなりの値段で驚く.でも味は確かに美味しかった.
はたしてどれほどの数のお客さんが,と心配していたら,もう切符は売れていてほぼ満席だという.500席くらいのホールだけど,どこからそんなに人が集まるのかと思ってたら,いやいやどうして,いっぱい来て下さりました.ただ,アムスよりかなり年齢層が上で,途中で帰る人もちらほら.
アムスのアンケート(英語)を見ると,絶賛と酷評が同じくらいある.酷評した人も,アンケートを書いてくれるくらいだから,たぶん最後まで観てくれて,ちゃんと意見を知らせてくれる.ありがたいです.
で,もっとも多い理由が,「音が大き過ぎる」と「わけわかんない」の2つ.両方とも,それなりにもっともで,僕の不徳のいたすところだけど,何となくこういう事かなと思う.それは,テレビでドラマを観てる思って,ある番組をずっと見てたら,科学ドキュメンタリー番組だったという感じ.
そりゃまあ,「なんじゃこら!?」でしょう.でも,ドキュメンタリー番組も物凄くドラマチックだったり,今まで知らなかった不思議な物語が含まれていたりするんですけどね.
それが,ちゃんと伝えきれていないのは,こちらの責任です.もっとちゃんと考えて,作品中で対応しないといけないと反省しきりです.
で,Eindhovenの劇場と,そこからデュセルドルフへ移動する道中.大中2つの舞台がある劇場の搬入口は,10トントラック4台同時搬入可能.
駅にあった寿司+ラーメン(カップヌードル)屋さんに,怪しげな日本人が群がってます.駅のホームの集団も変.
Amsterdam_Stadsschouwburg
Amsterdam市民劇場の新館,Amsterdam Stadsschouwburgで「true」の公演.この春にオープンしたばかりの新ホールは,何となく作りがYCAM_StudioAに似ていて,なかなか使いやすくて痒いところに手が届いている.舞台も客席も,全体に少し横長のプロポーションなのは,「true」のように小柄なパフォーマンスにはとっと間口が広過ぎるが,でも全体にどこからも舞台が近くて見やすい.窓の開くオペレーションルームや余裕のある客席周り,舞台の高さを造るのに,客席最前列3列分を逆に沈めて舞台を高くできるという機構も,StudioAと同じ.客席を退けて平場にできるというわけではないけれど,なかなか良いです.
特筆すべきは,音響設備の良さで,d&bがYCAMよりゴロゴロいっぱいある.今回の音も,質といい音量・音圧共に申し分なし.
あと,舞台奥の上に窓があって,仕込みの時なんかは日光が燦々と入る.これでちゃんと遮光も考えられているからいい感じ.ただし,しょっちゅうスタッフが休憩に行くので,遮光が必要な時にスタッフを探しに行くのがちょっと面倒.
写真は,劇場とtrueの小道具スプーンに映るLEDリング.今回の足場と振動子.3枚目の写真の,左側の光っている壁の中はトイレで,一件それとわからなくて見つけるのに苦労する.スプーンとフォークは,trueテーブルにちなんで穴あきなんだけど,たぶん誰も気がつかない.
Newcastle
イギリスのNewcastleにあるDance cityというオーガナイゼーションでWS.
イタリアはT氏と一緒だったが,それに加えてS君も合流.trueのパフォーマー2人と共にColorBlast20台でColorWaveを使って,3日間で参加者が3分程度のパフォーマンスを作る.
参加者は,結構少なかったんだけど,最初は2グループに分かれていたそれぞれのメンバーが,結構楽しんで,グループの作品に加えて個々人でもショートピースを作り出して,プレゼンテーションは最終的に6作品に.S君も自分のトライアルを作ったりして,結構見ごたえのあるプレゼンでした.
最終日のプレゼンが17時には終了したので,それからみんなで街を散策.
Newcastleは,川沿いが再開発で結構な景観が展開.昔の重工業華やかなりし頃の男らしー橋と,現代的な線の細い橋が並んでいて,その向こうにモスラの幼虫みたいなコンサートホールが建っている.
古い街並みは強固に残っているけれど,そこから新しい芽が出始めている感じ.ちょっとグロテスクではあるけれど,新鮮な眺めでした.
その後,美味しいインド料理を食べて,翌日Amsterdamへ移動.
いよいよtrueの公演が始まる.
Transart
イタリアのBolzanoという町で行われているTransartというフェスに,ワークショップで参加.
今回は,true_EUツアーの前ノリという形で,僕とT氏の2人でWSを行う.
T氏はヴェニスで小品の公演をして,それからBolzanoに,僕は,関空>Amsterdam>Roma>Veronaと乗り継いで,そこで迎えに来てくれていたフェスのディレクターに拾われ,夜中の高速をアベレージ180キロぐらいでぶっ飛ばして1時間半くらいかけてBolzanoに着く.
かなりの長旅で,車中ではほぼうたたね.
Bolzano周辺は,鍾乳洞がありそうな,雨に削られ切り立った山肌を見せる奇岩がにょきにょきと生えている.その斜面にはブドウ畑.麓にはリンゴ畑が広がっている.こう書くと,さながらおとぎの国っぽいけれど,そのリンゴの木がどういう品種なのか,背も低くてあまり枝も広げていないのに,あらゆる部分に無理やり実を付けているような状態で,ボコボコリンゴがなっている.しかもボロボロ地面に落ちて転がっている.
まあそれなりに落ち着いた石畳の町並みがあり,ゆっくり散歩でもできたら気持ちよさそうなところなのだが,残念ながら今回のWS会場は町から車で30分ほど離れた村に建つ,お洒落な街灯を作っているらしき会社のミーティングルーム.
この会社が独自でLED照明器具を作っていて,それを使ってWSをしてくれというお願い.機材は,それなりに明るくて,Liddellで制御した反応も悪くないけれど,何せ街灯用なので防水等作りが万全過ぎてかなり重い.今回は床置きで使ったけど,もし舞台でバトンに吊るなら,普通の舞台照明より重いくらいなので,何だか使い勝手が悪い.
あと,なぜかチャンネルの設定がRGBではなくてGRB.それでいけない理由もないが,なぜ?波長の長い順でもないし,アルファベット順でもない.イタリア語の色の名前に関係あるのかな?なので,チャンネルのパッチをいちいち変えなければいけなくて,それがちょっと面倒でした.
そして,3日間の滞在、毎日朝9時から夕方17時まで,この会社に滞在.受講生はBolzanoの大学でデザインを学ぶ学生9人とその先生2人.熱心でしかも楽しんでくれた様子.今回はT氏がフィジカル面でいろいろサポートしてくれて,WS終了後の感想でも,普段あまり身体を動かさないので,毎日最初にやるストレッチやゲーム的なエクスサイズがとても刺激になったとの声もあった.
この辺り,イタリアとはいいながら第一次大戦前まではオーストリア.
住人もイタリア系とドイツ系がいて,WSの学生グループも自然とイタリア系チームとドイツ系チームに別れていた.
で,どうも食べ物も,確かにパスタなんかも多くあるのだけれど基本は肉と芋.それにビールとワイン.特筆すべしは,パンがとても美味しい.まあこれは太れと言わんばかりの状況.
結局,美味しいイタリア料理が食べたい!と勇んで行ったレストランが一番高くてイマイチの味だった.ハウスワインは,とても美味しかったけど.
で,安くて美味しいけどオーストリア料理屋さんだよと言われたところが,ビールも料理も雰囲気も良かった.
肝心の,Transartフェスは週末ごとにイベントがある.
基本的に町の住人に対する公演なので,僕等の滞在時にはあまりイベントがなかった.
でも,グラニュラーシンタシスの片割れのKurt Hentschlager氏のFeedのリハを見せてもらったのはよかった.去年だか一昨年だかに評判になっていた作品だけど,噂に違わず思い切って突き抜けてました.まだまだいろんな事ができるなぁと感心.
Upright two-wheel running
昨夕,6歳弱の娘が,初めて近所の公園を自転車で,補助輪無しで独立で回周した.
補助輪をはずしてからはや数ヶ月,保育園に通う彼女と共に,自転車を抱えて公園に通う時間がなかなかとれず,ようやく一緒に行った一昨日までは,まだ数メートルしか自律走行できない彼女の,やれハンドルを持てとか,後ろから押せとか,肩を持てとか側を離れるなとか,いろいろな無理難題に翻弄された.
それが,昨日公園で,危なっかしくフラフラしながら直線10mほどを走り切ったと思ったら,それからモノの数十分で,公園一周を独力で回り切った.
さらにもう数回並走した時点で,彼女は危なげにハンドルを取られても自律軌道修正し,次には余裕綽々で「父ちゃん,もう横走らんでもいいで」とのたまう.
その十数分で娘の中に起こった変化は,言語で説明は難しい.彼女は,言葉で説明できるような身体操作を,自ら意識して行ったわけではないので...
何だかね,ありきたりな言いようですが,すべての個体が奇跡というか.
娘にしても,5年10ヶ月ほど前は目に見えないほど微細な遺伝情報だった.
実際僕は,精子も卵子も単体で見た事はない.それが,環境因子の影響は絶大だとは言えるけれど,それでも僕の遺伝情報と妻の情報とをかっきり半々に合わせ持った彼女が,6年弱で自転車に乗れるまでに大きくなったというのは,単純にすごいなと思います.
だって,生まれる前は,本当に形もなかったんだから!(当たり前だけど)
Masa
大学の時の恩師が亡くなった,とのメールが今朝Munichから届いた.
何人もお世話になったセンセイはいるけれど,もっとも印象に残る人だった.
東京芸大を出るだか中退だかして,その頃の西ドイツに渡る.
そこで大学に入り直して,改めて絵画を学び,画家になる.
日本に戻ろうかと思ったら,たまたま京都芸大に募集があって,応募して審査を受けたら受かった.そしてここにいるのだと,彼は話していた.
僕が油画の3回だか4回だかの時だったと思う.
洛西の団地に住み,大学から与えられた教員室で旺盛に絵を描いていた.僕は,彼以外に,学校で制作していた油画の先生を知らない.
油画の学生ならヨーロッパを見てみないといけない,といって,自ら旅行会社とタイアップして,学生数十人を引き連れての,ヨーロッパツアーを企画してくれた.
今ではわりとある企画だと思うが,当時そんなことに時間を割いてくれる先生はいなかった.
いや,たぶん彼自身ヨーロッパが恋しかっただけかもしれない.
でも,彼のプランで初めて回ったヨーロッパの印象は,今も強く残っている.あのツアー以来,足を踏み入れてない街も多くある.あの時のツアープランは,たぶんなにがしか彼の記憶の結晶で,彼の見ていたヨーロッパなのだと思う.
結局僕は,彼の企画したヨーロッパツアーに参加して,帰ってきたら大学院を落ちてフリーターになっていた.
もともと就職する気はさらさらなくて,何の就活もしていなかったので当然のこと.
絵は下手だったのに,やる気と好奇心だけは旺盛だった僕に,「おまえみたいなヤツが世界に出ればいろいろ面白いかも知れないけど...」といってくれたのは結構ありがたかった.たぶんその後に続く言葉は,「でも絵は下手過ぎるから,他の道を探せ」みたいなことだったと思うのだけれど.
そんな彼は,そのまま行けば教授になるようなレールにのっていたのに,数年でさっさと京芸をやめてドイツに戻ってしまった.
詳しいことは知らないけれど,世俗的なことを理由に,自分が嫌な事や馬鹿馬鹿しいと思うことを我慢して,収入を増やしたりポジションを上げていけるような人ではなかったのだと思う.
そして,いつだったかはっきりしないのだけれど,彼がドイツに戻るというので空港まで見送りに行った.
その時のいでたちが,もうチェックインは済ませて手荷物だけの姿だったのだけれど,胸ポケットに歯ブラシさして手にはペラペラの紙袋を抱えていた.袋に何を入れていたのか覚えがないけれど,「飛行機乗るのに,別に何も要らないよ,パスポートとチケットがあればいい」と笑っていたのが記憶に焼きついている.そしてそれが,今も僕の旅のスタイルの理想像だ.
その後も彼は,定期的に日本に戻り,画廊で個展をひらいてはドイツに帰っていった.
僕は何度か,ダムの公演などでMunichに行き,タイミングが合えばパフォーマンスを観に来てもらい,それが無理でも会えるようなら食事をしたりして,そのうちメールなんかも使えるようになり,気がつけば20年以上の付き合いになっていた.
と言っても,その間に会ったのは数回だけれど...
山が好きで,ヨーロッパが好きで,古いタイプかもしれないけれどまっとうな画家で,己に正直なアーティストで,僕に世界と画家の矜持を見せてくれた人です.
たまたま9月後半からEUにtrueのツアーで行くので,先月半ばにメールを送ったところでした.その時は,文面からは具合が悪いなんて読み取れなかったのに...9月後半の予定まで書いてあって..
3~4週間くらい前から具合が悪くなって,病名はleukaemia(白血病)だそうです.ご家族がそれを知ったのは先週の金曜との事でした.
Some of you may know that Masa has been sick during the last 3 or 4 weeks. The diagnosis leukaemia we were told only last Friday shocked us. The physicians did their best but were not able to help him.
Masa died on Sept. 1st around noon having suffered a short but heavy illness.
できれば,もう一度会いたかったです.
本人にとっては,自分好きなコトをやって来たというだけかもしれませんが,それこそが僕の手本です.
ありがとうございました.
僕には,数少ない年上の友人でした.
あまりに急な話ですが,ご冥福を祈ります.
LIGHTS with [ ]
ちょこっと縁があって通っている,京都造形大_空間演出デザイン3回生の,LED照明を使ったパフォーマンス作品の発表が,9月4日の夕方にあります.
http://kukan.tv/modules/news/article.php?storyid=227
3回生3チームの発表と,僕のチームの発表.
■2009年9月4日(FRI)
■OPEN-16:45 / START-17:00
■Galerie Aube(ギャラリーオーヴ)
4作品とも各10分以内.生徒の授業発表なので,無料の公演です.
僕は実は授業にかこつけて,来年度制作予定のパフォーマンスの試作をしているので,発表の最後に,Monochrome Circusのダンサー・振付の森裕子さんたちと作った10分のダンスをみせます.
LEDや秘密の小道具の椅子,それに衣装まで,いちおういま考えている要素のプロトタイプは,すべて盛り込 んであります.そして音響は,Dotsメンバーの古舘君.
お時間のある方のない方も,よろしかったらぜひ観に来て下さい.
本当は自分のパートの宣伝をしなければいけないんでしょうが,生徒の作品もなかなか侮れません.
ぶっちゃけ言ってしまえば,前は経験値が必要だった舞台照明のいろいろな要素がデジタライズされると,照明効果の部分は.経験値より感性勝負になるということだと思うのですが,その点,学生たちは結構善戦してると思います.
とりあえず,いくら言葉を尽くしても,こういうのは観ないとわからないので,4日午後5時にはぜひ造形大Galerie Aubeに!