Procedure

ID photo

国際免許を取りに,久々に長岡の免許試験場へ行く.
相変わらずの,アクセスの悪さに愕然.というか,こんな厚紙に持参の写真を貼っただけのモノ,しかも書類一枚書くだけで,試験も何のチェックもなく取れるモノを,なぜわざわざあんな遠くまで出向いて2650円も支払わないと手に入れられないのか,はなはだ疑問.
おまけに,申請したら「はい,1時間後に取りに来て下さい.」って,何でこれ作るのにそんなに時間が...
だいたい,2650円って,何の値段だ???
警察が道路交通を管理しているから,自動車免許の管理もしている,というのを何となく当たり前のように思ってきたけれど,何かおかしくないか?自分で許可して,自分で管理して,自分で取り締まって,しかももうずいぶん前から一大巨大産業じゃん.
免許試験場の講師も偉いさんも,駐禁のレッカー屋さんも,パーキングメーターの管理のオジサンも,みんな警察OBかそのお友達でしょう?
とまあ腹は立ったが,その効率の悪い外出のおかげで,「マルチチュード」の上巻をかなり読み進めた.
まだ上巻か?!という声もあるだろうけれど,面白い分だけいろいろ考えてしまって,なかなか進まない.
「哲学書」というより,サバイバル技術のハウツー本.基本となる概念が,丁寧に本文中で説明されている事からも,著者が思考の実験や新しい概念の創出より,その現実世界での実践を主眼にしているのが良く分かる.
ただ,ちょっと気になるのが,思考を展開していく上で重要な鍵となる概念,「生権力」と「生政治的生産」という単語.これらの単語が,もう既に日本語としてこの分野では定着しているものかどうか,勉強不足でわからないけれど,どうもしっくり来ない.文脈からは,著者がこのマルチチュードの中で初めて使った造語のようだが,英語では「biopower」「biopolitical production」となっている.僕はこの「バイオ」が接頭語としてついた英単語を見た時に,極めて素直にそして感覚的にも,「生権力」と「生政治的生産」という単語に訳されている概念に納得がいった.
翻訳者も,きっと悩みに悩んでこの「生」という字を選んだんだろうけれど,何だかなぁ,意味というより文字のイメージや並びのデザイン的に,ずれてるような気がする.
そんなこと気にせず,ちゃっちゃと読み進め,といわれそうだが,言葉の格好良さも大事なのよ.
でもとにかく,久々に興奮する内容.

Reading

Book M

知人の強力なプッシュがあって,「マルチチュード」−アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの共著を読み始めるが,前にも書いたようになかなか集中できなくて大変.
しかし数十ページ読んだだけで,今まで読んだ哲学書(作家が,この本は哲学書だと自身で定義している)とは,ずいぶん趣が違うことを実感.
おそらく,もともと哲学は,「その時,その時代」を生き抜くための知恵だったんだろうけれど,これまで僕が接してきたのは,直接的な「今」の事じゃなくて,ちょっと過ぎ去ってしまった事象に対する分析か,もっと大きく人類の営み全般に対する考察のようなものだった.僕の読んだ中では,唯一フーコーが死ぬ前に書き残したエッセーの中に,エイズ渦にみまわれる世界に残された希望というか新しい関係のようなものを書き記した文章が,例外的に「その時」に対応していたと思うけれど,でもそれはあくまでもエッセーだった.
「マルチチュード」は,この世界が対面している今を,いかにサバイブしていくかを,切実にしかも冷静に考察している(ような気がする).まだ,そんなに読み進んでいないうちから何だが,「今,この時」に向かって,こういうアプローチが積み重ねられて,それを本として読めるのは,たぶん稀な出来事だろう.それだけ世界が切羽詰まってるし,転換点に来ているんだ.
2004年に書かれたこの本が,既にもう日本語訳で2刷を重ねているということや,最初から哲学書としては廉価な形態で出版されていることからも,いま読むべきだと,多くの人が判断して尽力してきた結果が,この本なのだろう.
何とか,パワーブックを閉じて,この本を読み切ってしまいたいなぁ.(て,書いてるうちに読み進めろよって!)

mixi

LED

何人かからのお誘いを,今まで断っていたんだけど,事情があってついにmixi参加.もう面白くなくなった,という声もあるが,いいんです使い道が決まっているので.
さて今年も,LEDを使った仕事が続く.前に書いたRefined Colorsのツアーに続いて,Ea Solaさんのツアーも控えている.さらに,できれば舞台照明以外の展開も,深く考えていきたい.
LEDの特徴は,なんといっても低消費電力と長寿命.これがどういう事かと考えると,今までは玩具の扇風機や豆電球しか動かすことのできなかった,脆弱な発・畜電システムを,日常生活のメインストリームに持ち込める可能性を示していると見ることも出来る.
例えば,ワンルームマンションのベランダに並べられるくらいのソーラーパネルでは,今までは日常生活に介入していけるような電力の確保は無理だったとする.でも,部屋の照明をLEDに替えれば,明かりに関してはその部屋を社会の給電システムから切り離せるかもしれない.
既に,屋根中ソーラーパネルの住宅や,燃料電池発電システムを備えた家も存在するが,そんな大袈裟なものじゃなくても,簡単安価なシステムで何かの独立を確保できる.そういうのって,かなり大きな広がりがあるんじゃないかと思う.
それはさておき,年末からずっと喘息状態.まあ,鳥インフルエンザの可能性はないと思うが,それにしてもずるずると咳の止まらない日々.困った感じ.
あと,ついにインテルがMACに入った.思ってたより安い.
OSはTigerとあるけれど,果たして既存のソフトは問題なく動くんだろうか?
文句なく速いだろうし,外見も変わらないから,旧マシンとの互換性さえ保たれているなら,買いだと思うけど...
どっちにしても,そのうちインテルMACを使うしかなくなるんだろうけど,いつ買い換えることになるんだろうか?

A Happy New Year!

2006年.
明けまして,おめでとうございます.
今年もよろしくお願いします.
このblogも,書き始めて1年経ちました.生まれてからこの方,日記なぞつけたことはなかったのに,よく続いたもんだ.もともと,遠洋漁業並みに,一度家を出たらしばらく帰ってこない生活なので,その間の記録を残しておけば,そのうち娘が読む日も来るかもしれない,という目論見から始めたもの.
その娘も2歳.強い食物アレルギーがあったのだが,このところ結構食べられるものも増えた.その中でも小麦がOKになったのは,とても大きい.パンもうどんもモリモリ食べる.
写真は今年のおせち.手前のお重は頂き物.奥は娘用にかあちゃんが作ったもの.この中のものなら,全部食べられる.バラエティー十分で,もちろん僕が食べても美味しい.
さて,今年はどんな年になることか.
とりあえず,2月始めにはRefined Colorsのスペイン/アンダルシア公演.
http://www.teatrocentral.com/DATA/inicio.html
http://www.teatroalhambra.com/DATA/inicio.html
http://www.teatro-canovas.org/DATA/inicio.html
せっかくスペインに行くんだから,少しは公演以外にも旅して回りたいもの.セビリアには,バルセロナ郊外の有名なレストラン「elBulli」の経営するホテルがある.できれば泊まって,食事も楽しんでみたいところだけれど,部屋もレストランも,とっくに予約で一杯.う〜ん,何とかならないかなぁ.出発までに,もう少しトライしてみよう.
それでは今年も,がんばります.
よろしく !!!!!!

Soon

X’masに,LOVERSの撤去に,年末.
バタバタしてるなぁ,と思っていたら,娘が熱を出した.40度程度の高熱が出る風邪が,保育園で流行っているらしい.でも,まあ,本人はちょっとしたナチュラルハイで,そこそこ元気.
X’masは,珍しく僕もかあちゃんも家にいて,娘と散歩に行く.今回は南禅寺を目指す.
といっても,大人の足なら歩いて15分程度.そこで「山門」に登ってみようかというのが,その日思いついたイベント.
南禅寺は何度も通っているが,「山門」には登ったことがない.観光客という気分でもないのに,お金かかるしね.
でも,三人揃って散歩なんて,かなり珍しいので,今回は登ってみることにした.すると,これがかなり面白い!そんなに高い建物でもないので,景色がどれだけ良いのか?と思っていたら,それより「山門」自体が,とても興味深かった.門の上部は,お堂になっていて,仏像が安置してあるし,天井や柱にも彩色/描画が施されている.それが結構派手,もしくは初期の状態であまり退色せずに残っていて,ずいぶん前に訪れたラダック(インド最北のチベット文化圏)のお寺によく似ている.日本のお寺の装飾とはかなり違う感じで,とても面白い.その上もちろん,大きな木造建築だし,景色も京都らしい味がある.自宅から歩いて廻れるところに,こういう場所がまだまだあるようで,とても嬉しい.

京都芸術センターでのLOVERSの展示は,まずまずの入場者を迎えて無事終わった.撤去もごく普通に問題もなく終了.久々にダムのメンバーに会って,それぞれの近況を聞く.

その後は,一気に年末らしく,仕事よりも家の片づけなんかに時間を割かれるようになる.あと数日で,今年も終わり.そろそろ大掃除も考えなくちゃいけないし,と思ってたら,前述のように,今日,娘が熱を出した.何だかね,年末も変わらずバタバタと過ぎていきそう.まあ,それも楽しいかも.

Conversation


先週は,人前で話したり,懐かしい人々と言葉を交わすことが多かった.
そういえば,何かの指示を出したり報告をしたりする以外の「会話」をすることが,ずいぶん少なくなったのを実感.
その分,メールでコミュニケーションを図っていることが多いが,リアルタイムで言葉が交換される会話と,時差のあるメールでは,自ずと内容(もしくは流れかな?)が違ってくる.
集中して,本を読み切るということも,しなくなっていると気がついて,ちょと焦る.飛行機の中など,場所に縛り付けられている時には,本を読んでいることが多いけれど,ネットが繋がっている状況では,ついつい手がコンピューターに伸びてしまう.おかげで,読みかけの本が机上に散乱している.
造形大であったGolan氏達のパフォーマンスは,画像認識をうまく使っていて,面白かった.構造はそんなに難しいモノではないようで,「いったいどうやって?」というような謎に満ちたところはないけれど,完成は高い.何より,インプットとアウトプットがちゃんと繋がって見えるというか,彼らがこういうアクションを起こしたから,今このビジュアルや音が出ているというのが,よく分かる.それでいて,すぐに厭きるような単調なモノでなく,十分パフォーマンスとして見続けられることが,作品のクォリティーを証明している.
大学にあったプロジェクターや横の春秋座から借り出したPA,ありあわせの単管と足場,すごく安価な白の防炎シートで構成された会場も,機材のスペックの限界に縛られてはいるが,公演の妨げにはなっていなかっただろう.
少々無理があっても,良いモノを学生達に見せるチャンスは最大限生かしたい,という椿さんの心意気は伝わったかな.
アートカレイドスコープでのトークは,司会の華英さんを含めれば7人という大人数のせいもあって,全体的に散漫で緩い感じに終始した.あまり同じ傾向のスピーカーだけを集めたくなかった,という考え方も分かるけれど,僕としては,大竹さん・東屋さん・内橋さんと,トーンを揃えた3人の大暴れ先鋭トークというのも,見て(聞いて)みたかった気もする.
LOVERSのセカンドトークは,先週の浅田さん達と替わって,森村・松尾・泊・高嶺と,いわば悌二の身近にいた人達が,悌二やダムの活動に絡めて当時の状況を話すというモノ.僕は客席で聞く側だったが,改めて整理された流れを追いつつ,80年代から90年代を思い出していた.

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急な話ですが,こんなんあります.
お時間があれば,観に来て下さい.
以下,転送歓迎.
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ゴラン・レヴィン+ザッカリー・リバーマン in Kyoto
パフォーマンス&ポストトーク
「デジタルアートフェスティバル東京2005」招待作家
ゴラン・レヴィンとザッカリー・リバーマンが来校
メディアアートに新機軸をもたらすパフォーマンスを行います
その後、ゲストにダムタイプの藤本隆行氏
ATRメディア情報科学研究所のロドニー・ベリー氏を迎え
テクノロジーとアートの新たな関係構築にむけて、縦横無尽のトークを展開します
古都京都で、メディアアートのエッジに出会えるこの機会、ぜひお見逃しなく!!
★パフォーマンス★
マニュアル・インプット・セッション Manual Input Sessions
有機物と影を合成し、不思議な影絵芝居のような映像を映し出すパフォーマンス
パフォーマーがスライド上に描いた走り書きや、オーバーヘッドプロジェクターにかざした手の影を、彼らの創造したアルゴリズムが解析!
★ポストトーク★
「テクノノロジーと生きる」 ー近未来のメディアアート像をさぐるー
パネリスト:ゴラン・レヴィン、ザッカリー・リバーマン
藤本隆行(ダムタイプビジュアルクリエーター)
ロドニー・べリー(ATRメディア情報科学研究所)
モデレーター:椿昇(京都造形芸術大学空間演出デザイン学科教授)
ゴラン・レヴィン Golan Levin
アーティスト、作曲家、パフォーマー、エンジニア。
MITメディアラボにてB.A.とM.A.を取得。
現在カーネギーメロン大学(U.S.A.)のElectronic Time-based Art助教授。
ザッカリー・リバーマン Zachary Lieberman
ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ卒業。
現在パーソンズデザインスクール(U.S.A.)で助手を務める。
「アルテ・エレクトロニカ」「公州ビエンナーレ2002」などで活躍。
日時:2005年12月15日(木)6:30pm−8:30pm
場所:ギャルリ・オーブ(人間館1F)
定員:100名(先着順)
主催:京都造形芸術大学空間演出デザイン学科、関西アメリカンセンター
協力:アメリカ大使館、NHKエンタープライズ
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2 years

昨日6日は,娘の2歳の誕生日だった.
彼女が産まれた時には,僕はパリでダムの公演中.その後も,家を空けることが多くて,久々に会う時は,いつも彼女は大きく成長している.いやいや,母ちゃんまったくゴクロウサマです.
2歳というと,反抗期.
育児の知識としては,当たり前らしいが,僕は知らなかった.それに例え知っていても,2歳児の反抗期なんて,よほど本人の近くで長時間過ごす者にしか,つまりたいていは親にしか,実感できないと思う.長じて人格のハッキリしている個人の性格がいきなり変われば,傍目から見てもわかるだろうが...実際,保育園の先生やばあちゃん達の前では,前とあまり変わらないようです.
でもとにかく,何でも嫌.おまるも嫌,パンツをはくのも嫌,ズボンも嫌,シャツも嫌,手を洗うのもご飯もおやつも嫌...
おまけに娘の強情っぷりは,僕が見ても見事.嫌なことは何が何でも全身で号泣しながら反抗します.
先日も,ばあちゃん達の家から自宅まで,ベビーカーに固定されながら反り返り,「ベビカー嫌ぁ〜!!!」と叫び続けてました.僕はもう,時節柄犯罪者のように周りの人からじろじろ見られ...
この12月/1月と家に居る機会が多い.
この機会に腰を据えて,これからまた長いツアーに出ても忘れられないように,お付き合いさせて頂きます.

Tsubaki Class, LOVERS, Uchihashi

11月30日:
京都造形大3回生への,椿さんの授業として,京都ブライトンホテル・ロビーのデコレーションを手伝う.
僕の担当としては,入り口近くのLEDを仕込んだパートの制御がうまく行くように,バックアップするというモノ.それ自体は簡単なことなのだけれど,全体的なセットアップは,学生らしい果敢なチャレンジもあって,困難を極める.ハッキリ言って,無謀なトライも多し.
気がつけば,久々に徹夜のセットアップに付き合うことに...

12月4日:
京都芸術センターでの,LOVERSセットアップ初日.
悌二がこの作品を作ってから,もう10年以上.ようやく,京都で展示できる.
今日は,基本的な空間作り.9日がオープニング.
9日と16日には,ゲストを招いての,パネルディスカッションも予定されている.

12月12日には,大阪の現代美術センターで,僕自身別のディスカッションに参加.
内橋さん達に会うのは,7月のpath以来.
どんな展開になるのか,予想もつかないけれど,会えるのは楽しみ.

CDG-KL-KIX

Angoulemeからパリに戻り,18日はオフ.
19日の昼にCDG空港を発ってクアラルンプールへ.翌20日朝にKLに着いて,大阪への出発は同日夜の23:55.つまり,ほぼ1日マレーシアに滞在.チケットをお願いした旅行代理店のがんばりで,マレーシアエアラインのトランジットホテルサービスをゲット.朝早く現地に着いて出発が夜中ということは,もしホテルに滞在するとなると,2日間の宿泊になる.それはあんまりなので,ということだと思うのだけれど,朝から同日夜までのホテルが割り当てられるサービスがある.希望者が多いと,必ず泊まれるとは限らないらしいが...
無料のサービスなので,たぶん空港近くの辺鄙なホテルか,KL市内の安宿だろうと予想していたが,実際は予想を超えていた.
空港で乗り込んだシャトルは,走る走る.何度かKL市内まで車で走ったことがあるけれど,どうも道が違う.そのうち高速にのるが,標識が出るたびに,Kuala Lumpurと別方向にあるJohor Bahru方向へ向かう.
1時間ほど走って着いた先はSeremban.KL市内からも,1時間ほどかかるところらしい.ここに,もとHiltonホテルで,今はRoyal Adelphiという名前のホテルがある.
此処の部屋に泊めてもらいました.はい.
部屋は良いです,今回のツアー1ヶ月半で初めて,バスタブのお湯に浸かりました.ぎりぎり間に合った朝ご飯も,お粥やカレーなどマレーシアらしくバラエティーに富んでいてナイス.しかも夕方までゆっくり眠れる.
ただねぇ,ちょっと約束してたんですよ,クアラルンプールの住人と.帰りに寄るから,その時は...
まあ,ちょっとした旅行気分でした(仕事とは違う個人的な旅行).しかもわざわざ,KLから約束していた人が訪ねて来てくれて,見知らぬ町のニョニャ(マレー・中国混血の人)レストランで夕食.なんだか嬉しかったです.
しかし何だってHiltonはあんなところにホテルを建てたのか?マレーシア政府に騙されたのかな?
それで,夜中にKLを発って,翌21日朝に関空到着.
久々に会った娘は,この1ヶ月半の間に段違いに言葉が増えていて,「○○が××したの.」というように助詞を使うようになっていた.今回出発前は,「〜する」とか,「堅い(彼女の意思としては,難しいという意味)」とか,単語でしか話さなかったのに,帰ってきたらちゃんと文章を話している.鸚鵡返しに言葉を模倣しているのではなくて,どうもちゃんと会話が成り立つ.
いやいや,人間の脳は凄いなぁ.
今回,パリのルーブル近くのKEIBUNSYAで,初めて日本語の本を買った.どうも値段が高いのが悔しくて,海外で日本語の書店に行くのは避けてたんだけど,今回は行きの関空で時間がなくて何も本が買えず,活字に飢えてました.ネットで見る日本語と本の活字は別物です.
それで迷いに迷って買ったのが,野村進さんの「脳が知りたい!」.面白かったです.3回も読んじゃいました.決して暇だったからではなく,いろいろインスパイアされました.野村さんの「コリアン世界の旅」も凄く面白かったけれど,一見ぜんぜん畑違いに見える「脳」の話しも,まさにプロフェッショナルなノンフェクションライターといった仕事です.買って良かった.
その中に助詞の話や,LEDにも関係のある色や動きなどの視覚の話も出てきて,色んな興味が広がった.何たって,脳は誰でも持ってるし,他でもない自分のことでもあるんだから.
娘の脳も,色んな能力を獲得しているようです.

Books

Bastille, Combs la ville, Angouleme

バスティーユ・オペラの「トリスタンとイゾルテ」は,凄かった.舞台上にあるのは,装置としてはベットのような四角い台だけ.後は奥を全面被っている黒いスクリーンに映される,Bill Violaの映像のみ.(黒いスクリーンと書いたが,本番では黒の幕が上下左右に開いて,その裏に白いスクリーンがあったのかもしれない.映像のチェック時は確かに黒の上に投射していたが,本番中は地の色が黒なのか白なのか,眩しくてよく分からなかった.)
横型の16(横):9(縦)と4(横):3(縦),それに縦型の16(縦):9(横)の映像を使い分けていて,映写室を覗いたらBARCOが2台あったのだけれど,縦型と横型の映像用に使い分けているのか,それとも1台は予備機で,あのプロジェクターが内蔵シャッターでどうとでも映像を切れるのか,どちらか分からなかった.
あと,たぶんアクティングエリアの床あての照明も,天井に吊ったビデオプロジェクターのようで,綺麗に4:3の大きさでエリアが切られていて,時々映像にあわせて色が変わっていた.もちろん,フロントからのフォローとか,幾つか通常照明も使ってはいたけれど...
それで,間の休憩2回を抜いても,4時間あまりたっぷりBill Violaの映像を堪能できる.端的に言えば,大きなスクリーンに無茶明るいプロジェクターで投影したビデオインスタレーションに,豪華なフルオーケストラと,上手なオペラ歌手がくっついているような物だった.
そしてオフが終わったら,怒濤の地方巡業で,パリから車で1時間半程度の町 Combs la villeへ,朝早くから出かけてセットアップ,夜中にパリに戻って翌朝またその町へ.そして公演してバラして,またパリに戻って,翌朝早くにモンパルナス駅に向かい,TGVで2時間程度のボルドーの町 Angoulemeに直行.10時過ぎに着いてセットアップ.で,翌日公演とバラシ,というスケジュール.
ところが,何とTGVが霧のため途中で止まって,1時間ほど動かない.何だかなぁ,日本を発つ時にも同じようなことが...結局,Angoulemeの劇場に着いたのは,昼を少しまわった頃.この3月にダムの公演できた時も,香港から一度日本経由で,ふらふらになりながら,他のメンバーより半日遅れで,この劇場に入ったんだった.どうして,こういうことに...
でも,列車の中から電話で指示を出していたこともあって,それほど深刻な遅れはなく,あと数時間後には今ツアー最終公演が始まる.
この劇場は,照明室からネットに繋がるので,とりあえずこのページも更新.
前にも書いたかもしれないが,古い建物の内部だけを劇場にリノベーションしたところで,非常にうまくできている.
写真は,劇場上層階側面に,新しく造られた通路.古い建物だし,内部の壁をぶち抜いて通路を一本通すより,この方が良いかも.眺めも抜群.

Paris 4

ポンピドゥの近くに,ナイスなネットカフェを発見.
なんと,IPを設定して,自分のコンピューターをネットに繋がせてくれる.何処でもこうだと良いのに.
毎日pb15を持ってシャトレまで出るのはちょっと億劫だけれど,でもデータのやりとりの心配や,いちいち日本語フォントをダウンロードしてインストールする手間を考えると,こっちの方が楽.どうせこの辺までは,毎日出てくるし.
昨日のEmio Grecoは,勅使河原三郎の影響からはぜんぜん脱していなくって,まるまるコピーかと思うところもあったけれど,まだまだガンガン身体が動くので,ダンスはとても良かった.照明も,舞台中に変な塊として吊られていて,それもまあまあ.
でも,これは僕が悪いのだが,どうも現代音楽を聴くと,眠くなるという癖があって,直球勝負な生音に,瞼が重くなる.センサーを使って,何かインタラクティブに音を出していたみたいだけど,ステージに目と耳がちゃんと付いているプロの演奏家が何人もいて,おまけに指揮者までいる中で踊っているわけで,何も機械でセンシングしなくったって,ちゃんとミュージシャンがフォーローしてくれるだろうと思うと,ご大層なシステムを客席奥に組んでまで,無理矢理インタラクティブに何を動かしているのか,あまり意味が分からなかった.
僕としては,もっとノイズとかでEmio Grecoがガンガン踊っているのが,見たかったなぁ.それが例え,コピーだとしても.

Paris 3

パリでの公演最終日.
ダムのコンポーザーでもある池田君が,ちょうどパリに来ていて再会.
明日から劇場のネットが使えなくなるので,メールチェックも難しい状況になる.何せホテルの部屋の電話は壁にくっついていて,線を繋ぎたくてもどうしようもない.
明日は,ポンピドゥであるEmio Grecoのパフォーマンスを観る予定.
明後日は,バスティーユ・オペラ座である「トリスタンとイゾルテ」を観たいんだけれど,どうしてもチケットが手に入らない.映像担当がBill Violaで,5時間の長尺もの.去年パリで初演されて,とても評判がよかったらしい.とりあえず,劇場前に行ってみようかと思っている.(フランスでは,のみ行為が禁止されていて,チケット表記の金額以上で切符を転売してはいけないらしい.それで余ったチケットを持っている人が,定価で売ってくれることがあるとのこと.)
15日はパリ近郊のCombs la villeで,17日はAngoulemeで公演.それで今回のツアーは終了.
さっそく来年の予定が入ってきているが,他とのスケジュール調整が大変になりそう.僕としては,どれもちゃんと回りたいけれど,どうなるかなぁ.
とにかく,これから最終公演.さあ,がんばろっと.

Paris_Theatre de la ville 2

昨日、Theatre de la villeでの初日が開けた.
日本を発ってから25日,ハノイも含めれば長かったような,あっという間だったような.1000人以上入る客席は満席,木曜の千秋楽までチケットは完売.5年ぶりの新作,多くの人が待っていたのでしょう.
此処の劇場は作りが変わっていて,いわゆるバルコニー(2階席や3階席)が無い.客席最前列から,急なスロープでブワァーと客席が迫り上がっている.なので,一番後ろに設けてある,照明のオペレーションテーブルまで上がるのは,毎回大変.
今回,一番厳しそうだったのは,音響担当のマークで,僕と同じくEaさんと組むのは初めてらしく,なかなか彼女の望む音が作れない.しかも基本は生演奏のドラム(ベトナムの伝統楽器の太鼓)で,端から見ていてもマイク等の調節が難しそう.おまけに,基本的にマークは音響屋さんと言うよりも,彼自身コンポーザーとしてやっているみたいで,ちょっと求められている資質とずれている気がする.
この作品のコンポーザーとしては,もう長いことEaさんと組んでいるSon君というベトナム人音楽家がいて,曲は全てベトナムで作られているし...マーク,とってもいいヤツなんだけどなぁ.
でも,最終的には何とか調整し,本番はうまく行っているところが多かった.僕は,もう少し低音が効いている方が好きだけれど.
照明も,カルロスとの二人三脚は,うまく行っている.ただちょっとまだキュー数が多いところがあって,変化がせわしないので,それをどう削るかが問題.
どうしても,シーンごとに分けて照明を作っていくと,その中でも変化を付けたくなるし,そのあたりはほとんどEaさんが練習中に次々と注文を付けてくるのだけれど,あとで繋いでみてみるとキューの割りが細かすぎることがある.でも彼女の希望なので,そうそう勝手に削るわけにも行かず,また僕らも,まだ操作に必死なところもあって,何となくおかしかったところは覚えているんだけど,何処をどうするというところまで整理できていない段階.
それでも,昨日の公演後は,お客さんの反応も上々.客席最後尾にいる僕らにも,十分舞台上の熱気は伝わってきたし,これからが楽しみな作品には仕上がってきたと思う.

Paris_Theatre de la ville 1

Ea Sola Poster

2日にパリに移動.
フローニンゲン(現地の人の発音は,「グ」じゃなくて「フ」に聞こえる)の公演は,公開リハーサルということで,100名程度の観客だったけれど,反応はとても良かった.LEDと普通の劇場照明との絡みは,まだまだ手を加えられるが,それでもそんなに悪くないと思う.どうしてもLEDの光量が足らなくて,他の照明が入ると色がぼけたりするが,通常照明には無い波長があって,割りと明るくしてもなんだか変に見える色もある.これからいろいろ試してみるのが楽しみだ.
パリへの移動は,まずバスでアムステルダムへ.スキポール空港のKLMとエアフランスのカウンターは,ほぼ半分くらいe-チケットの端末になっていて,乗客が自分でチェックインする.うまく動くようになったら便利だろうが,まだ乗客も慣れていなくて(そんなに飛行機ばかり乗る人も多くないだろうし),各端末には長い列と説明するスタッフの姿が...結局今のところ,人件費の削減には繋がっていなさそう.
パリCDG空港からは,ダンサーやミュージシャンも含めたみんなでバス移動.これがまた,渋滞に次ぐ渋滞で,市内に着くのに2時間ほどかかる.地下鉄の方が,よっぽど便利.
ホテルは,パリに来たらいつも一度は行く,ベトナム料理屋さんの近く.Place d’Italleから程近いこのあたりは,中華とベトナム料理レストランが無数に広がる地域.さっそくお気に入りのHawai(なぜだか,イタリア広場にあるベトナム料理屋さんの名前がハワイ)に行くが,どうも前ほど活気がない.どうやら,増殖している他の店に押されてきて,あまりクォリティーを保てなくなってきているみたい.時間のある時に,他の店にも行ってみようと思う.
会場のTheatre de la villeは,数多くの興味深い公演を重ねてるだけあって,スタッフもてきぱき動くし,いろいろ考えてアドバイスもしてくれる.(ただし,昼食後はワインのせいか,元気がなくなる)
でも,ユニオンも強くて,仕込み初日の昨晩も,18時になったらほとんどのスタッフがさっさと帰ってしまった.なんだか,働いてはいけないそうな...
まあ,それでも劇場から追い出されないだけましだし,カルロスは数名の照明スタッフとフォーカスを続けていた.この辺の事情は,僕にはよく分からないが,パリでも場所によっていろいろコンディションは違うみたい.いつも僕らが公演しているCreteilは,話しさえ通しておけばずいぶん遅くまで働いてくれるし...
フランスの劇場は,市立だったり国立だったり,公務員の働いているところが多いと思うんだけど,それにしては全体的に日本よりずいぶんましだと思う.でも,昨日聞いた話だと,パリ市内の有名な劇場でも,時間が来たらいきなり電源のスイッチを切られるところもあるのだそうな.何処も,スタッフ次第ということかな.
それで今日は仕込み2日目.明後日6日の夜に,最終ドレスリハーサルの予定.
7日からは,いよいよ4日間の本公演.

Groningen

Grand Theatre

ついに着るものがなくなって,朝も早よからコインランドリーへ.朝7時半から開いているということだったのに,8時になってもドアが開かない.
1人で怒りながらホテルへ朝食をとりに戻ると,なんとまだ朝7時.昨日の深夜,オランダの夏が終わったらしい.こんなに寒くて暗くても,まだ夏やったんかい,と突っ込みたくもなるが,まあ1時間儲けたということで,時計を1時間戻して冬時間へ.
ハノイからクアラルンプール経由でアムステルダムまで飛び,そこから列車でGroningenにたどり着くのに,空港での待ち時間も合わせて,ほぼ24時間かかった.
さすがに着いた当日は,日本から送った荷物の確認と劇場をざっと下見するだけで,ダウン.ホテルの横のバーで,人生で一番味無いトンカツ(ウィンナー・シュニッツェルとメニューには書いてあったが,厚さ1センチのスリッパくらいの豚肉に5ミリくらいの衣を付けて,ぱさぱさになるまで揚げた代物)を食べ,ビールを飲んで,夕方5時くらいから翌朝5時まで寝ていた.
劇場は,元映画館とかで,インディペンデントでやんちゃな感じ.アートセンターぽくって面白いが,予算が少ないのか打ち合わせが出来ていないのか,集中して働いてくれるスタッフが少なくて,仕込みも結構行き当たりばったり.でもこれはどうも劇場側のせいではなく,こちら側から明確なプランが出せていないためだと思う.もちろんまだ作っている最中なので,試してみないと分からないことの方が多いが,それにしては動けるスタッフが少なすぎる.舞台・音響・照明,各1人ずつこちらのテクニカルがパリから来ているが,それだけでは当然足りない.ヨーロッパでは照明と舞台を兼ねているスタッフが多いが,此処もそうで,舞台に人手が取られると照明が進まず,また逆もあって,ちょっと大変.
でも何とか仕込み2日目夕方には,舞台の体裁が整う.
今回は初めて全てのLED灯体を,日本でいうボーダーライトのように天井バトンに吊っている.他の照明との関係で,7.5mくらいの高さまで上げなければいけないので,各明かりはずいぶん弱いが,それでも舞台全体を染める分には何とかなっている.ただ色が付くだけでは別になんということもないので,どうやってLEDの特性を生かしていくのか,これからが思案のしどころ.

Passed 10 years

Stage

Teijiが逝ってから十年.
節目といっても,どういう区切りなんだか,よく分からないけれど,とりあえず今もこうやって,劇場で面白い作品の制作に関わっていられるのは,良いんじゃないかと思う.
ベトナム語とフランス語が飛び交い,時たまちょろっと英語が混じる環境にずっといると,なんだかやけに昔のことを思い出してしまう.脳がちょっと逃避状態になっているのかもしれない.
でも,一緒にやってるフランス人スタッフは,なかなかいい人ばかりで,特に照明を担当しているカルロスは興味深い人物だ.僕はLED照明のみを動かしていて,それ以外は彼がデザインとオペレートをしているが,結構分かるところが多い.
なので,そんなに疎外感があるわけでもないのだが...
まあとにかく,今こうやってオランダの劇場にいて,ダムのではないけれど,新作の立ち上げに関わっているというのは,それなりの十年だと思うし,これからもがんばりたいと思うわけです.
公開リハーサルまで,あと4日.

Hanoi 3

10月24日
あっという間のハノイ滞在だったが,今日オランダのGroninguen市に向かう.現地のグランドシアターで27日から装置・照明・音響も含めてのリハーサル.パリからフランス人テクニカルチーム,ドイツから映像担当の人も合流する.
実は最初26日からリハと聞いていたので,今日の出発便を押さえたのだが,いつの間にか27日に変わっていた.でもまあ今更変更も出来ないので,僕だけ1日早くGroninguen入りすることに.
このグランドシアターは,不思議な縁で,ダムのダンサーである川口さんが2001年に彼のソロを作ったところでもある.その彼の作品を日本で上演することになり,その時の照明デザインを僕が担当させてもらって,初めてLED照明を使った.そのLED照明が縁で,香港でEaさんと会い今回の仕事になって,今からGrand theatre de Groningenに向かうわけである.
さてさて,パリとハノイとあと実は香港でも動いている人がいて,ちょっとプロダクションのコミュニケーションが悪い感じだが,ついにほとんどのメンバーがオランダに集合する.どうなることか,楽しみだなあ.

Hanoi 2

昨日20日は,ハノイに来てから初めてのオフ.稽古もないし,誰かと会う予定も連絡が入る約束もない.
だいたい,1日の行動のパターンも決まってきて,朝がかなり遅くなってきているので,昼過ぎくらいまではホテル周辺をうろうろ,その後旧市街の散策に.町の真ん中にあるHOAN KIEM湖北側の職人通りが残るエリアを,歩き回る.このあたりはハノイ屈指の観光エリアでもあり,おみやげ物やさんも多く並ぶが,判子屋さんや墓石屋さんや名物料理屋なども,並木の茂る細い通りに軒を並べている.
ちなみにメモ代わりに現在の物価のことなど書いておくと,朝(といってもかなり遅いが)起きて,朝食は日本でも知られているPho(米の幅広か,割りと太い麺)やBun(米の細い麺)やMien(小麦の半乾燥麺)の汁麺.牛肉がのっていたり生ハーブたっぷりだったり,ワンタンが入っていたりして,だいたい10,000ドン(現在約74円).
それからカフェに行って,コンデンスミルク抜きのコーヒーを頼む.お馴染みのアルミ・フィルターで出てくるが,この頃はサービス競争も激化しているようで,コーヒーが落ちるのを待つ間の繋ぎとして,蓮の実のお茶が付いてきたり,コーヒーが冷めないように深めの受け皿にお湯をはってそこにカップが入っていたりする.この苦くてまったりしたコーヒーがだいたい7,000ドン.
それで,一息入れたら,ネットカフェへ.街中のネットカフェはほぼADSL接続なようで,そこそこ速い.何処に行ってもネットゲームにはまっている子供だらけ.
僕の泊まっているあたりでは日本人旅行者をあまり見かけず,まずはマイクロソフトのダウンロードサイトから,日本語フォントを落として入れることから始めなければいけないが,別に誰もインストールするのを咎めるでもなくプロテクトがかかっているでもない.それで1時間ほどメールチェックやニュースサイトを回って,3,000ドン.なんと25円程度.
しかし,日本語をうつのはなかなか難しく,仕方がないのでホテルの自室からアナログ回線/iPass経由で繋いでいるが(ベトナム国内では,僕の使える他のもう少し安い接続ポイントがない),これが1分20数円の料金がかかる.実に街中の60倍!!!他人の弱みにつけ込んだ,悪徳商法としか思えない.
その他,もし街中で売っているDVDを買うと16,000ドン(120円).全身マッサージ1時間,110,000ドン.旅行者相手の綺麗なカフェで,お洒落な定食とビールで56,000ドンくらい.
今日21日は,最終リハ.
僕はフランスの照明スタッフから仕込み図が送られてくるのを,待っている状態.まだ直接彼らと話したことがないので,どういう経過になっているのか,はっきり分からない.言うなれば僕は,あとから組み込まれた形なので,彼らとしてもLEDの詳細などが分からず,戸惑っているのかもしれない.
とにかく,あと数日のハノイ滞在.少し時間に余裕があるのが嬉しい.
写真は,カフェとDJ屋さんとホテルの部屋.DJ屋さんというのは,外から見ててっきりレコード屋さんかと思って入ったら,ぽつんとPCがあるだけ.どうやら客のリクエストに沿って曲を選んで繋ぎながら,CD-Rに焼いてくれるらしい.らしいというのは,言葉が通じず会話が成り立たなかったので...今度誰か通訳代わりを見つけて,もう一度尋ねてみたい.

Hanoi 1

10月13日,まずはクアラルンプールへ.
そんなに混んでないだろうし,空港で1時間半もあれば大丈夫かと思って,少しゆっくり家を出ると,いきなり踏切の故障ではるかが止まる.
最初は漫画を読んでいて,ぜんぜん気がつかなかったのだが,新大阪の手前の駅で長い間動かない.結局30分遅れで動き出したが,関空に近づくにつれ,今度は何かが踏切を横断したといっては,何度も停車する.どうやら閉まったままの遮断機を越えて,無理矢理人などが横断すると,それを感知して停車信号が出る模様.
そんなに踏切があるのかと思って,改めて窓の外を眺めると,あるわあるわ岸和田の近くだと思うが,細い道を断ち切るように線路が走っていて,数十メートルおきに踏切が続く.こりゃ,長い間遮断機が閉まったままだと,ぶち切れて渡り出す人もいるだろう.事実,ちょっと広い道には,長い車の列ができている所もあった.正に悪循環.
結局1時間遅れではるかは関空に到着.マレーシアエアラインのカウンターに走ると,今まさに窓口が閉まったところ.エアラインの表示をはずしているスタッフに,柵の外から声をかけて,何とかチェックイン.そのままスタッフ付き添いでセキュリティー・パスコンと通ることになり,本や雑誌はおろか風邪薬も買えず機内に.
クアラでは,チャイナタウンの真ん中に一泊.去年何度か通ったマッサージ屋のすぐ近くなので,さっそく覗きに行くが,店が跡形もない.楽しみにしていたのに,ショック...
夜は,去年お世話になった交流基金の方と,懐かしの屋台でビールがぶがぶ.
10月14日,ハノイへ.
マレーシアエアラインなので,KLcentralステーションでチェックイン.大きな荷物を預けて身軽に空港へ向かう.
昼過ぎにハノイ着.9年ぶり.3年前くらいにも一度ベトナムに来たが,そのときはサイゴン滞在のみだった.
ハノイは,街路樹というには大きすぎるくらいの木々が街中に茂って,相変わらず美しい.これで,バイクや車のクラクションがなければ,世界でも有数の素晴らしい町かもしれない.
めっきり自転車やシクロは減って,街中はバイクの洪水.おまけに信号はあまり見かけず,車も増えて,それらが有機的にお互いを避けながら動いていく姿は,えもいわれずダイナミック.
ホテルに着いてしばらくしたら,Soがリハーサル場へ案内してくれるために,向かえに来てくれる.彼も今日香港から着いたとのことだが,もう既に何度もリハーサルを観に来ていて,よく事情が分かっている.香港−ハノイ間は飛行機で1時間半とかで,僕が思っていたより近い.日本はやはり東の果てだ.
夜20時から,衣装を付けての通しリハ.
ダンサー達は,知ってはいたがすごく若い.Eaさんは彼/彼女らと3ヶ月,扇風機のみでエアコンがない練習場に籠もって,灼熱の中この作品を作り上げていったとのこと.すごい情熱だと思う.
作品は非常に面白い.Soは「まったく今までになかったユニークな作品だ」というが,僕としては必ずしもそうとは言えない.でも,いま世界の何処で公演しても,遜色のないものだとは思う.
今年になって観た幾つかの作品の中で,気になった公演と何処か通じるものがあるのだ.それは,「まったく新しい」ものではないと思うが,的確にいま必要な何かを内包している.
10月15日
ゆっくり寝ようと思っていたら,朝早くからホテルの部屋を引っ越しすることに.
どの部屋も広くて良いのだが,唯一ある窓の外が隣の壁で,ほとんど日が射さない部屋だったので文句を言ったら,一階上に替えてくれた.外の壁が途切れて,空が見えるのは良いが,朝9時から,さあ移れすぐ移れとせき立てるのは,どうよ?
そのまま勢いに乗って,部屋の模様替え.住み心地のよいスモールオフィスへ.
午後にはまたSoが向かえに来てくれて,欧米旅行者御用達のMOCA CAFEに寄ったあと,練習場へ.
まだ作品の流れが掴めていない僕のために,Eaさんの解説込みで全員で流れだけ通してくれる.数人のダンサーの顔とキャラクターが認識できた.
その後,音の編集のため,ハノイでコンテンポラリー・ミュージックの作曲等をしているという,ミュージシャンの自宅へ.僕は作業があったわけではないが,物見遊山でついていく.
10月16日
昼食に招いてもらって,幸せな午後を過ごす.メニューは若鶏のオーブン焼き一人一羽ずつ.小振りの鶏でちょうど良いボリューム.お腹に餅米と蓮の実が詰めてあって,えもいわぬ滋味.
Eaさんは,ダンサー達への小さなプレゼントをパッキングしている.
今晩もフル・リハーサル.連日の通しリハとその後のミィーティングは,稽古というよりは,ヨーロッパ公演に向けてのある種イニシエーションのようなものなのかも?なんといっても,ほとんどのダンサーにとっては,初めての国外公演.しかもコンテンポラリーダンスの公演.ハノイ国立バレエで学んでいる/いた彼らにとっては,自分たちがちゃんと理解して作品を踊っているのかどうか,ずいぶん不安が残っている模様.加えて,見学に来ていたハノイバレエの関係者らしき人々は,おしなべてコメントせずに帰っていく.
それでも作品の強度が保たれているのは,この三ヶ月でEaさんと彼らの間に信頼関係が築かれているからだろう.

Ea sola

明日から,新しい作品に参加.
今年の年始に,香港で出会ったアーティストの新作パフォーマンスに,LED照明を持って加わる.ベトナム人で,パリ在住のEa Solaさんの作品で,僕にとっては全くの未知数.彼女は,この5年間劇場作品を作るのは休止していたということで,僕はDVD以外では彼女の作品を知らない.それでも,彼女との会話とその映像を見て,参加を決めた.
ハノイ/ベトナムで作って,グローニンゲン/オランダでリハーサル,パリ/フランスとその他2都市で公演.結構長い旅になる.
初めて一緒に仕事をするので,コレがどういうふうに進むのかも分からないが,彼女は極めて明確なヴィジョンを持っていて,それを現実化していくような人だという印象を受けたので,今まで僕が思いもしなかったようなLEDの使い方ができるかもしれない.つまり,僕のイメージが先行するという作り方じゃなく,まず彼女から何か課題が出てくる可能性が大きい.
未知の人との仕事は,不安もあるが楽しみだ.
11月の上旬は,パリで公演.
とりあえず,明日はトランジットで,クアラルンプールに一泊.
去年,Refined Colors公演でお世話になった人達と,再会の予定.
時間があれば,チャイナタウンのマッサージ屋にも寄りたいなっと.

LED lecture

Refined Colorsの副次的な影響というか,5日に造形大の椿さんのクラスで,LED照明に関して話をした.
3回生が,この年末に某ホテルのライティングデコレーションを実際に担当してみるという企画が進んでいて,それがLEDを使ったモノだという事.
まずは,コンピューターでLEDを制御するというところから話をしようと思ったら,あまりコンピューターを使った作品を作ること自体が身近でないということで,ほんのさわりながら二進法の話からする.でも,あまり準備が的確でなく,PBG4の画面をS端子経由でプロジェクションすることになり,見にくい映像でレクチャーすることに.すいません,申し訳ない.
でも,それよりももっとショックだったのは,「電気の作り方,知ってる人」という質問に,20数名の誰も答えなかったこと.ホントに知らなかったのかなぁ...

Refined Colors@Studio21

京都造形大Studio21でのRefined Colors公演も,先週に無事終了.
ドイツから帰って,あっという間に仕込み・ワークショップ・クリエーションと過ぎて,一気に本番.メンバーのほとんどが京都に住んでいるだけに,客席には知った顔も多い.ありがたいことです.
内容も,これまで各地で現地のダンサーを交えて展開していたゲストシーンを廃して,最初から最後まで3人のパフォーマーだけで通した.そのために新たに作ったパートも,何とか収まった感じ.最後に,ぎりぎりまで粘って音を作ってくれていた,大度君のがんばりが結構効いている.
その他のシーンも,幾つかブラッシュアップされて,全体的にずいぶん良くなってきたと思う.ただし,照明はちょこちょこ手を加えすぎて,細かなエフェクトが多くなりすぎたきらいがある.次回からは,余分なものを削ぎ落とすような思考に替えていきたい.
日曜の公演が終わったら,次はダム倉庫の引っ越しで,これも2日ほどかけて何とか一段落.ようやくオフィスと倉庫のモノモノ全てが,新しい場所に運び込まれた.
木曜には,近江八幡にあるボーダレスギャラリーNO-MAに「ものと思い出」展を観に行く.娘を連れて,家族3人での初めての小旅行.といっても,近江八幡は案外近い.実は,この春に取り壊した北大路の家がウクレレになって,この展覧会に展示されている.展覧会の趣旨に添って,個人の住居を保存したウクレレばかりを選んで展示してあり,その中の一本.こちらへの引き渡しの前の展示となったので,まだ僕たちも写真でしか見ていなかったウクレレに,NO-MAでご対面.そのうち手元に来るのかと思うと,かなり嬉しい.
その後,八幡堀を半時間程で巡る屋形船に乗る.かなり良いです.他に客も居ず,3人で貸し切り状態.周りの景色が素晴らしい.録音された音声ガイドが,こちらの会話が難しいくらい大きすぎるのが玉に瑕.どうも,ボリューム調節ができないっぽい.それでも,満足できるくらい,気持ちの良い時間でした.
昨晩は,11月に開かれるというアートサミットのプレイベントを見に行く.
http://artists-summit.jp/program/pre/
(このURL,artistsと複数形になっているため,うろ覚えだと検索しづらい.アートサミットとかアーチストサミットでは,googleでもヒットしないので,ちょっと難あり.)
パネリストが,
タナカノリユキ(クリエイティブディレクター、アートディレクター、映像ディレクター)
黛まどか(俳人)
茂木健一郎(脳科学者)
山下泰裕(柔道家、東海大学教授)
それにモデレーターが椿昇という,いかにも椿さんが選んだ感じの方々が集う.
少々寒かったが,ちゃんと雰囲気の作られた野外で,面白い話が聞けた.しかも無料.
京都も,捨てたもんじゃない.

Tent (Altstadtherbst kulturfestival)

Dusseldorfで催されるAltstadtherbst kulturfestivalでの,Voyage公演.
この町では,去年もVoyageを公演している.同じ町で,同じパフォーマンスを2年続けて公演するなんて,たぶん初めてのことだ.作品を作った最初と,数年間ツアーを回った最後の締めに,同じ都市でというのは,あるけれど...
そして,面白いことに同じ都市でも,公演場所はずいぶん違う.去年は,ピナバウシュ・フェスに招かれて,Schauspielhausというかなり大きな劇場での公演.今回はテント.
テントといっても千人近く入る巨大なモノ.その横にはバーラウンジや小さなステージの付いたライヴのできるテントもあり,スタッフや僕らが休憩/食事をするグリーンルームもテント.その横に,シャワー・トイレと楽屋のコンテナが置いてある.
何せテントなので,扉を開けるとすぐ外で,日光が差し込んでくる.強風でバタバタはためいて,ぎいぎい鳴る.雨が降るとザアザアいう.
何ともすごい場所だが,祝祭的な雰囲気も溢れていて,かなりのことまで許せてしまう.フェスの名前も「秋の収穫祭」的な意味らしい.働いているスタッフも,ボランティアの若者が多くて,あまり頼りにはできないが,その楽しそうな様子はこちらにも伝わってくる.
こういう物凄いラフな場所で,緻密なパフォーマンスができれば,それはそれですごく良いと思うが,どうも僕は,ついつい場所に合わせて,まあこんなもんでいいかと思う心にひきずられそうになる.
いかんなぁ.

Munich

9月6日に日本を発って,ミュンヘンとデュッセルドルフ2カ所の,ダム「Voyage」公演ツアー.ミュンヘンMuffathalle劇場(というか大箱のライヴハウスのようなところ)での公演は10日(土)に無事終了し,本日デュッセルドルフに移動.
Muffathalleは,元水力発電所跡を利用した場所で,川沿いの森の中に建つ,なかなか趣のある建物.95年に,古橋と一緒の「S/N」公演を,最後にした思い出深い場所だ.
3本の水平可動ブリッジの下に,グリットに組んだトラスを吊って,そこに照明も幕類も全部吊る.今回はデュッセルドルフの劇場も,同じようなトラス構造で,プランニングにミスがあると,なかなか修正が難しい一発勝負.しかも,ドイツらしく,僕たちが着く頃には,先方の機材はほとんど吊り込んである.ありがたいことだけれど,それだけに図面上にできるだけ情報を書き込んでおかないと,時々呆れるくらいの勘違いがあり,そんな場合はかえって大変だ.ありがたいことに,今回はそんなことはなく,快調に事は進んだ.
それにしても,構造上の少々の不自由はモノともせず,不平も言わずにむしろ楽しそうにセットアップに取り組んでくれる,現地スタッフは頼もしい限り.日本と違って,「管理」専門の人などいない.
そういえば,此処ドイツでも日本の選挙への関心は高かったようで,昨日今日とテレビのニュースや新聞のトップでも,コイズミの笑った顔写真が見られた.何でまた,あんないい加減な受け答えとキャッチコピーばかり繰り返して,まともなことを言わない人を日本の多くのヒトが再度選ぶのか,僕には理解できないが,結果は結果,コイズミ圧勝だったようですね.うーん...
今回は2カ所のみの公演なので,19日には帰国.その足で,京都造形大Sutudio21へRefined Colors公演の仕込みに向かう.今回は大きなシーン変更の予定もあり,ワークショップもする盛りだくさんな内容.できるだけ多くの人に観に来てもらいたいなぁ.まだまだ変わり続けている作品だけに,僕自身も楽しみです.
写真は,すっかりステージをバラしたあとのMuffathalleと,ミュンヘン市内で見つけた,見事に垂直緑化された建物(といっても夏の間だけだろうが…).写真では周りが写っていないが,かなりの繁華街の中に忽然と建っている.ひょっとしたら,ガイドブックとかに載っているくらい有名な場所かも.

An election

選挙って,こんな字だっけ?
生まれて初めて,期日前投票に行った.手続きが簡素化されたということで,普通の投票とほぼ変わりない.選挙当日に投票に行けない,という宣誓書を書く手間が増えるくらいで,あとは同じ.
候補者と政党を選ぶ投票に迷いはなかったが,最高裁裁判官の信任投票は疑問.最高裁裁判官の名前だけ書いてあって,彼らが裁判官としてふさわしいかどうかと聞かれても...前回の信任投票時は,ニュース23だかステーションだかが,裁判官の主な審判をまとめて特集を組んでいた.どの判決に注目するかで,ずいぶん印象も変わるだろうが,それでも名前だけ書いてあって,何をした人か分からない人物を,最高裁裁判官に適切かどうか判断せよというより,よほどましだ.
何だかんだとやってはいたけれど,とにかく8月中はずっと京都にいた.歯医者の治療は終了.鍼灸院に通って,腰もずいぶん楽になった.毎朝毎晩,娘とも顔を合わせられたし,彼女の変化を実感できたのも嬉しい.僕のひと月は,ほぼ変わりのない毎日の連続だが,一歳九ヶ月の娘には,毎日が新しい.今日も彼女は,初めて自分の名前を,客観的に呼んだ.
さて9月,明日からはドイツ.ミュンヘンとデュッセルドルフを回る.dumb typeのVoyage公演.
そして,帰国当日,朝7時半に関空について,昼からは京都造形大学内Studio21でのRefined Colors公演の仕込みにはいる.
http://www.k-pac.org/kpac/expe/vol24/top.html
8月と比べて,緩急の差がちょっと激しすぎるが,それももちろん楽しい.
心配なのは,台風.
まあ,動きがゆっくりなので,明日朝はまだ飛ぶだろう.

Cindy Sheehan

Cindy Sheehan.
結構ニュース番組が好きで,朝も昼も夜も,仕事の合間に時間が空けばテレビをつけるが,なぜだかまだ日本のニュースでは聞かない名前だ.
イラク戦争で息子を亡くした彼女は,ブッシュが今休暇を過ごしているテキサスの牧場の近くで,ブッシュにイラク戦争に対する釈明を求めて,座り込みを続けている.そして,その彼女の行動が話題になり,全米から賛同者や,ライフルを空に向けてぶっ放して彼女らを脅す,ブッシュ擁護派が集まってきている.
そのことがアメリカのマスコミには,結構な話題になっているらしい.要するに,ここに来てやっと,アメリカでもイラク戦争反対に声を上げる人に,マスコミがバッシングではなく,通常の報道をするようになったらしいということ.
彼女が引き金となって,反戦運動が広がっているという話しもある.
日本語での詳しい情報は,
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/
911の衝撃で対人恐怖症状態になっていたアメリカが,ようやく普通の思考に戻り始めたのか,それともほんの小さな灯火もしくは亀裂を,一部のメディアが大きな希望のように煽っているのか,日本からネット経由で見ている限りではよく分からないけれど,座り込み自体は事実だろう.
「小泉の放った刺客」というトピックは確かに面白いけれど,シンディ・シャーハンの「シ」の時も出てこないのは,やはり何か日本のマスコミに,バイアスがかかっている気がする.

Okuribi

祭りネタをもう一つ.
昨晩,久々に送り火を見た.あらためてみると,結構な大イベントである.
生まれ育った実家の自室からは,「大文字」と「舟形」が見えた.もう,その家はないが,送り火の度に親戚が集まっていたことを思いだす.僕の中では,正しいお盆の過ごし方の原風景である.それも祖父の加減が悪くなってからは,ポツポツと集まりが悪くなっていき,やがては途切れてしまった.
去年は確か,まだこの時期はシンガポールかクアラルンプールにいたはずである.
今年は,僕の両親が近くに引っ越してきたので,そのマンションの屋上から送り火を見ることにした.かなり良いロケーションなので,何山見えるか楽しみにしていたら,なんとなんと五山全てが一望できた.
「大文字」「妙法」「舟形」「左大文字」「鳥居」,一度に全てを見たのは,生まれて初めてである.
宗教にも当然エンターティメント性は必要で,それは断食や瞑想などによる人体への操作か,建築的なビジュアルや音響操作によるところが多いけれど,この送り火は三方を山に囲まれた京都の地の利を生かした,独自性のあるとても良く考えられた壮大なイベントだ.
何の宗教的な知識やバックグラウンドが無くても,一瞥しただけで楽しめるのがすごい.僕には詳しい知識はないが,たぶん仏教的な理由があるんだろう「大」という漢字と,神道の象徴である「鳥居」や,祖先の霊を送り返すためであろう「舟形」がシンボルとして描かれて,それらが共存しているところもすごい.
世界各地に色々なお祭りイベントはあるだろうけど,これだけの規模で視覚的なモノが他にあるだろうか?
観光地というのは,実にいろんな要素から成り立っているもんである.

Bon Odori

Refined Colorsの稽古が終わって家への帰りしな,近くのグラウンドに提灯が見えた.気がつくと,浴衣姿の人がポツポツまとまって歩いている.そうか今晩か.
なぜだか理由は知らないが,「江州音頭フェスティバル」の京都大会が,毎年近所で開かれる.遠くから和製レゲエのようなリズムを聴いたり,提灯の明かりを横目で見ながら自転車で通り過ぎたり,気になってはいたものの,参加することのなかった夏祭りである.
このところ娘にあわせて19時には夕食をとる生活なので,その後にちょいと3人で盆踊りを見に/踊りに行くくらいの時間はある.あまり遅くなると,娘が眠くて大変なことになるが...
会場には十数名が輪になって上で踊れるような,大きな櫓が組まれて,渋いオッちゃんの歌声がループするリズムにのって響き渡っている.まったりとした熱気といい,保存会という名目でチームを組んだオジ・オバちゃん達の気合いの入った浴衣といい,何とも南国,キリキリした今の日本の日常から何処かに飛ばされたようなトリップ感がある.
見よう見まねで,グランド3周くらい輪に入って踊る.最後の方は,人波にも慣れたのか,娘もリズムに合わせて身を振りながら,歩き回っていた.
もし来年また参加できるようなら,浴衣くらい着ていきたいもんである.
ニッポンの夏でした.

August

7月28日に大度君が京都に来て,南君も何とか時間を作って,久々にRefined Colorsチーム全員集合.ようやく何とか形になってきた新パートを観て,9月の製作までに予め準備をしておく.
びわ湖ホールで観た「d’avant」は,とても面白かった.ヨーロッパで売れっ子のダンサー/振付家4人が集まって作った作品である.4人の男性が古歌を歌いながら,劇場らしい様々なトリックを使い,でも基本は自分の身体と存在感で時間を埋めていく.一件何の変哲もないプレーンな床に見える(実は全体が台で上げてある),基本の舞台装置も抜群に良かった.
なかなか4人のスケジュールが調整できず,ヨーロッパでも再演が難しい作品である.当のダンサー達は出来ればこの作品をやりたいらしいけれど,それぞれ別の仕事も抱えているし,そうそう思い通りにはいかない.その作品を日本で単独公演するとは,びわ湖すごいなぁ.

話は戻って,Refined Colorsの稽古は8月5日まで.それ以降,モノクロームサーカスのメンバーは,8月後半に京都芸術センターと東京の森下スタジオで公演する,フランスのダンサー/振付家デディエ・テロンの作品の稽古に入る.そんでもって,ちょうどそれが終わった頃から,僕とダンサーのひとりはダムのツアーに出る.帰国はなんとRefined Colorsの仕込み初日早朝.僕は別にディディエの作品には何の関係もないので,8月はずいぶん時間がある.9月の準備をしつつ,のんびり過ごせるかなぁ.

Biwako summer festival

ロンドン2度目のテロ.エジプトもテロ.おまけに東京で地震.
被害に遭われた方,お見舞い申し上げます.
地震は別だけれど,どうしたらいいんだろう? きっと,どうしたらいいんだろうと考える人の数が増えることが,まず先決なのかな.テロを起こしそうだと思われる人達は,全員隔離するか?殺すか?監視するか?そんなことが出来ると思う人は想像力が無さ過ぎる.
そんなことを思いながらも,びわ湖ホール夏のフェスティバル公演のひとつ,白井剛の『質量, slide , & .』を観に行く.実は明日観る予定だったが(明日も観るが),急に公演後のアフタートークに参加することになって,今日も滋賀まで向かうことになった.白井さんがまだ学生の頃,ダムのS/N公演を観てくれていて,それが良かったとか,去年のYCAMでのRefined Colors制作時に,発条トも滞在制作していたとか,そういう縁である.ちなみに,9月のRC公演とこのびわ湖夏フェスのプロデューサーも同じ.

公演は面白かった.
アフタートークではそこまで話せなかったけれど,プリンス(後でややこしいサインで表象する事になって,またその後元に戻ったあのパープルレインのプリンス)の,「sign of the times」と,印象がすごく被った.プリンスはあのアルバムを,今で言う宅録で作った.「ひきこもり」である...世界との接続を絶って世界の安寧を思う...
ボルヘスの短編の中に,テロを行うためにまず世間との関係を絶って自室に閉じこもり,自身の考えに考えを重ねた上に,それまでのしがらみをチャラにして,それでも行動に出るテロリストの話がある.そんな内証に内証を重ねるような作品だった.でも,無理矢理思いこんでというよりは,あくまでも楽しみながら,『質量』に向かい合っていた.
そうだなぁ,『質量』と『重力』の違いについても,聞き忘れたかな.人前で話すのは,いつまでも苦手だ.
明日は,C, de la B のSidi Larbiが踊る「d’avant」を観に行く.