CDG-KL-KIX

Angoulemeからパリに戻り,18日はオフ.
19日の昼にCDG空港を発ってクアラルンプールへ.翌20日朝にKLに着いて,大阪への出発は同日夜の23:55.つまり,ほぼ1日マレーシアに滞在.チケットをお願いした旅行代理店のがんばりで,マレーシアエアラインのトランジットホテルサービスをゲット.朝早く現地に着いて出発が夜中ということは,もしホテルに滞在するとなると,2日間の宿泊になる.それはあんまりなので,ということだと思うのだけれど,朝から同日夜までのホテルが割り当てられるサービスがある.希望者が多いと,必ず泊まれるとは限らないらしいが...
無料のサービスなので,たぶん空港近くの辺鄙なホテルか,KL市内の安宿だろうと予想していたが,実際は予想を超えていた.
空港で乗り込んだシャトルは,走る走る.何度かKL市内まで車で走ったことがあるけれど,どうも道が違う.そのうち高速にのるが,標識が出るたびに,Kuala Lumpurと別方向にあるJohor Bahru方向へ向かう.
1時間ほど走って着いた先はSeremban.KL市内からも,1時間ほどかかるところらしい.ここに,もとHiltonホテルで,今はRoyal Adelphiという名前のホテルがある.
此処の部屋に泊めてもらいました.はい.
部屋は良いです,今回のツアー1ヶ月半で初めて,バスタブのお湯に浸かりました.ぎりぎり間に合った朝ご飯も,お粥やカレーなどマレーシアらしくバラエティーに富んでいてナイス.しかも夕方までゆっくり眠れる.
ただねぇ,ちょっと約束してたんですよ,クアラルンプールの住人と.帰りに寄るから,その時は...
まあ,ちょっとした旅行気分でした(仕事とは違う個人的な旅行).しかもわざわざ,KLから約束していた人が訪ねて来てくれて,見知らぬ町のニョニャ(マレー・中国混血の人)レストランで夕食.なんだか嬉しかったです.
しかし何だってHiltonはあんなところにホテルを建てたのか?マレーシア政府に騙されたのかな?
それで,夜中にKLを発って,翌21日朝に関空到着.
久々に会った娘は,この1ヶ月半の間に段違いに言葉が増えていて,「○○が××したの.」というように助詞を使うようになっていた.今回出発前は,「〜する」とか,「堅い(彼女の意思としては,難しいという意味)」とか,単語でしか話さなかったのに,帰ってきたらちゃんと文章を話している.鸚鵡返しに言葉を模倣しているのではなくて,どうもちゃんと会話が成り立つ.
いやいや,人間の脳は凄いなぁ.
今回,パリのルーブル近くのKEIBUNSYAで,初めて日本語の本を買った.どうも値段が高いのが悔しくて,海外で日本語の書店に行くのは避けてたんだけど,今回は行きの関空で時間がなくて何も本が買えず,活字に飢えてました.ネットで見る日本語と本の活字は別物です.
それで迷いに迷って買ったのが,野村進さんの「脳が知りたい!」.面白かったです.3回も読んじゃいました.決して暇だったからではなく,いろいろインスパイアされました.野村さんの「コリアン世界の旅」も凄く面白かったけれど,一見ぜんぜん畑違いに見える「脳」の話しも,まさにプロフェッショナルなノンフェクションライターといった仕事です.買って良かった.
その中に助詞の話や,LEDにも関係のある色や動きなどの視覚の話も出てきて,色んな興味が広がった.何たって,脳は誰でも持ってるし,他でもない自分のことでもあるんだから.
娘の脳も,色んな能力を獲得しているようです.

Books

R.I.P. Noriko Ibaragi san

スペイン・ドライブの続きを書こうかと思っていたら,茨木のり子さんの訃報を知った.
数日前に,亡くなられたそうである.
面識は全くないが,茨城さんの詩集の一冊「自分の感受性くらい」は,もうずいぶんずいぶん前から,僕の本棚にある.ほとんど詩集のたぐいは持っていないのだけれど,茨城さんのこの本は,いつも本棚の前面に置かれている.
シンプルな言葉と表現で,何かを騙すようなところはひとつもない.
「左官屋」という詩が好きで,そして表題の「自分の感受性くらい」は,気持ちがぶすぶすした時に力になってくれる.
聞けば,孤独死というか,亡くなられて数日後に見つけられたとか.それも,茨城さんに関して言えば,凛とした生き様の延長だったような気もする.
ご冥福を,お祈りします.
ゴクロウサマでした.

Book 2006 04 23

旅に,本は欠かせない.
去年Eaさんの公演でパリにいた時には,野村進さんの「脳が知りたい!」がすごく面白かったけれど,今回また良い本に出会った.それも2冊.この頃は,こういう出会いは滅多にない.たぶん,僕の読書量が激減しているせいだと思うが...
まずは,Ken Grimwoodの「REPLAY」.
SFである.サイエンス・フィクションというと,荒唐無稽で何でもありなような気もするが,実はそれなりにきちんとつじつまを合わせておかないと,たちまち興ざめして読む気を失う.昔は,その説明がなかなかうまくできずに大変だったけれど,いまならシミュレーション・ゲームを例に取れば分かりやすいか.幾ら起こりえないような.つまり今まで想定されなかったようなことが起こったとしても,そこにはある種のルールがあって,それが貫かれていないと現実感は保てないし,そうなるとたちまち読み手はついてこなくなる.
その点,この「REPLAY」は,むちゃくちゃな設定なのに,いつの間にか本の世界のルールを納得し,しかも最初は(僕の)予想の範疇内だった展開をはるかに上回り,しかも最後まで落胆せずに読めた.関空の書店で見かけた時に,「本の雑誌(か何か)の,この数十年回のベストスリー」というようなポップに惹かれて買ったのだけど,それだけのことはありました.今までにもたくさんの人を楽しませてきたというのを,十分納得しました.面白かったです.
2冊目は,和田伸一郎「メディアと倫理」.
画面は慈悲なき世界を救済できるか,というサブタイトルが付いている.
少々言い切りすぎというか,断定的な見方が鼻につく部分もあるけれど,それを我慢して読み進んでよかった.僕のように哲学にあまり詳しくない読者にまで分かるように,噛んで含めるように,ビリリオからハイデッガーまで多くの引用を交えて,少々付け過ぎなくらい傍点を付けて,今の危機を解き明かしてくれている.
日頃どっぷりネットに浸かりながら,それでも何とか世界の状況にコミットしていきたいと思ってきたんだけど,その難しさを改めて理解しました.でもね,「映画」(もちろん全ての映画がではない)だけが,観る者を救済するというのは,違うと思うぞ.断じて,[だけが]ということはない.
もっとも,著者も言葉としては「映画だけが」といっているわけではなく,読後感としてそんな感じを受けるだけで,逆に「そんな断定はしていません」と,突っ込まれそうだけど...
でもとにかく,インターネットという超巨大メディアが登場した以降の現実感を,とても分かりやすくしかも危機感を持って提示してくれている.僕は,いろいろ参考になりました.