Refined Colorsの稽古が終わって家への帰りしな,近くのグラウンドに提灯が見えた.気がつくと,浴衣姿の人がポツポツまとまって歩いている.そうか今晩か.
なぜだか理由は知らないが,「江州音頭フェスティバル」の京都大会が,毎年近所で開かれる.遠くから和製レゲエのようなリズムを聴いたり,提灯の明かりを横目で見ながら自転車で通り過ぎたり,気になってはいたものの,参加することのなかった夏祭りである.
このところ娘にあわせて19時には夕食をとる生活なので,その後にちょいと3人で盆踊りを見に/踊りに行くくらいの時間はある.あまり遅くなると,娘が眠くて大変なことになるが...
会場には十数名が輪になって上で踊れるような,大きな櫓が組まれて,渋いオッちゃんの歌声がループするリズムにのって響き渡っている.まったりとした熱気といい,保存会という名目でチームを組んだオジ・オバちゃん達の気合いの入った浴衣といい,何とも南国,キリキリした今の日本の日常から何処かに飛ばされたようなトリップ感がある.
見よう見まねで,グランド3周くらい輪に入って踊る.最後の方は,人波にも慣れたのか,娘もリズムに合わせて身を振りながら,歩き回っていた.
もし来年また参加できるようなら,浴衣くらい着ていきたいもんである.
ニッポンの夏でした.
Okuribi
祭りネタをもう一つ.
昨晩,久々に送り火を見た.あらためてみると,結構な大イベントである.
生まれ育った実家の自室からは,「大文字」と「舟形」が見えた.もう,その家はないが,送り火の度に親戚が集まっていたことを思いだす.僕の中では,正しいお盆の過ごし方の原風景である.それも祖父の加減が悪くなってからは,ポツポツと集まりが悪くなっていき,やがては途切れてしまった.
去年は確か,まだこの時期はシンガポールかクアラルンプールにいたはずである.
今年は,僕の両親が近くに引っ越してきたので,そのマンションの屋上から送り火を見ることにした.かなり良いロケーションなので,何山見えるか楽しみにしていたら,なんとなんと五山全てが一望できた.
「大文字」「妙法」「舟形」「左大文字」「鳥居」,一度に全てを見たのは,生まれて初めてである.
宗教にも当然エンターティメント性は必要で,それは断食や瞑想などによる人体への操作か,建築的なビジュアルや音響操作によるところが多いけれど,この送り火は三方を山に囲まれた京都の地の利を生かした,独自性のあるとても良く考えられた壮大なイベントだ.
何の宗教的な知識やバックグラウンドが無くても,一瞥しただけで楽しめるのがすごい.僕には詳しい知識はないが,たぶん仏教的な理由があるんだろう「大」という漢字と,神道の象徴である「鳥居」や,祖先の霊を送り返すためであろう「舟形」がシンボルとして描かれて,それらが共存しているところもすごい.
世界各地に色々なお祭りイベントはあるだろうけど,これだけの規模で視覚的なモノが他にあるだろうか?
観光地というのは,実にいろんな要素から成り立っているもんである.
An election
選挙って,こんな字だっけ?
生まれて初めて,期日前投票に行った.手続きが簡素化されたということで,普通の投票とほぼ変わりない.選挙当日に投票に行けない,という宣誓書を書く手間が増えるくらいで,あとは同じ.
候補者と政党を選ぶ投票に迷いはなかったが,最高裁裁判官の信任投票は疑問.最高裁裁判官の名前だけ書いてあって,彼らが裁判官としてふさわしいかどうかと聞かれても...前回の信任投票時は,ニュース23だかステーションだかが,裁判官の主な審判をまとめて特集を組んでいた.どの判決に注目するかで,ずいぶん印象も変わるだろうが,それでも名前だけ書いてあって,何をした人か分からない人物を,最高裁裁判官に適切かどうか判断せよというより,よほどましだ.
何だかんだとやってはいたけれど,とにかく8月中はずっと京都にいた.歯医者の治療は終了.鍼灸院に通って,腰もずいぶん楽になった.毎朝毎晩,娘とも顔を合わせられたし,彼女の変化を実感できたのも嬉しい.僕のひと月は,ほぼ変わりのない毎日の連続だが,一歳九ヶ月の娘には,毎日が新しい.今日も彼女は,初めて自分の名前を,客観的に呼んだ.
さて9月,明日からはドイツ.ミュンヘンとデュッセルドルフを回る.dumb typeのVoyage公演.
そして,帰国当日,朝7時半に関空について,昼からは京都造形大学内Studio21でのRefined Colors公演の仕込みにはいる.
http://www.k-pac.org/kpac/expe/vol24/top.html
8月と比べて,緩急の差がちょっと激しすぎるが,それももちろん楽しい.
心配なのは,台風.
まあ,動きがゆっくりなので,明日朝はまだ飛ぶだろう.
Refined Colors@Studio21
京都造形大Studio21でのRefined Colors公演も,先週に無事終了.
ドイツから帰って,あっという間に仕込み・ワークショップ・クリエーションと過ぎて,一気に本番.メンバーのほとんどが京都に住んでいるだけに,客席には知った顔も多い.ありがたいことです.
内容も,これまで各地で現地のダンサーを交えて展開していたゲストシーンを廃して,最初から最後まで3人のパフォーマーだけで通した.そのために新たに作ったパートも,何とか収まった感じ.最後に,ぎりぎりまで粘って音を作ってくれていた,大度君のがんばりが結構効いている.
その他のシーンも,幾つかブラッシュアップされて,全体的にずいぶん良くなってきたと思う.ただし,照明はちょこちょこ手を加えすぎて,細かなエフェクトが多くなりすぎたきらいがある.次回からは,余分なものを削ぎ落とすような思考に替えていきたい.
日曜の公演が終わったら,次はダム倉庫の引っ越しで,これも2日ほどかけて何とか一段落.ようやくオフィスと倉庫のモノモノ全てが,新しい場所に運び込まれた.
木曜には,近江八幡にあるボーダレスギャラリーNO-MAに「ものと思い出」展を観に行く.娘を連れて,家族3人での初めての小旅行.といっても,近江八幡は案外近い.実は,この春に取り壊した北大路の家がウクレレになって,この展覧会に展示されている.展覧会の趣旨に添って,個人の住居を保存したウクレレばかりを選んで展示してあり,その中の一本.こちらへの引き渡しの前の展示となったので,まだ僕たちも写真でしか見ていなかったウクレレに,NO-MAでご対面.そのうち手元に来るのかと思うと,かなり嬉しい.
その後,八幡堀を半時間程で巡る屋形船に乗る.かなり良いです.他に客も居ず,3人で貸し切り状態.周りの景色が素晴らしい.録音された音声ガイドが,こちらの会話が難しいくらい大きすぎるのが玉に瑕.どうも,ボリューム調節ができないっぽい.それでも,満足できるくらい,気持ちの良い時間でした.
昨晩は,11月に開かれるというアートサミットのプレイベントを見に行く.
http://artists-summit.jp/program/pre/
(このURL,artistsと複数形になっているため,うろ覚えだと検索しづらい.アートサミットとかアーチストサミットでは,googleでもヒットしないので,ちょっと難あり.)
パネリストが,
タナカノリユキ(クリエイティブディレクター、アートディレクター、映像ディレクター)
黛まどか(俳人)
茂木健一郎(脳科学者)
山下泰裕(柔道家、東海大学教授)
それにモデレーターが椿昇という,いかにも椿さんが選んだ感じの方々が集う.
少々寒かったが,ちゃんと雰囲気の作られた野外で,面白い話が聞けた.しかも無料.
京都も,捨てたもんじゃない.
LED lecture
Refined Colorsの副次的な影響というか,5日に造形大の椿さんのクラスで,LED照明に関して話をした.
3回生が,この年末に某ホテルのライティングデコレーションを実際に担当してみるという企画が進んでいて,それがLEDを使ったモノだという事.
まずは,コンピューターでLEDを制御するというところから話をしようと思ったら,あまりコンピューターを使った作品を作ること自体が身近でないということで,ほんのさわりながら二進法の話からする.でも,あまり準備が的確でなく,PBG4の画面をS端子経由でプロジェクションすることになり,見にくい映像でレクチャーすることに.すいません,申し訳ない.
でも,それよりももっとショックだったのは,「電気の作り方,知ってる人」という質問に,20数名の誰も答えなかったこと.ホントに知らなかったのかなぁ...
CDG-KL-KIX
Angoulemeからパリに戻り,18日はオフ.
19日の昼にCDG空港を発ってクアラルンプールへ.翌20日朝にKLに着いて,大阪への出発は同日夜の23:55.つまり,ほぼ1日マレーシアに滞在.チケットをお願いした旅行代理店のがんばりで,マレーシアエアラインのトランジットホテルサービスをゲット.朝早く現地に着いて出発が夜中ということは,もしホテルに滞在するとなると,2日間の宿泊になる.それはあんまりなので,ということだと思うのだけれど,朝から同日夜までのホテルが割り当てられるサービスがある.希望者が多いと,必ず泊まれるとは限らないらしいが...
無料のサービスなので,たぶん空港近くの辺鄙なホテルか,KL市内の安宿だろうと予想していたが,実際は予想を超えていた.
空港で乗り込んだシャトルは,走る走る.何度かKL市内まで車で走ったことがあるけれど,どうも道が違う.そのうち高速にのるが,標識が出るたびに,Kuala Lumpurと別方向にあるJohor Bahru方向へ向かう.
1時間ほど走って着いた先はSeremban.KL市内からも,1時間ほどかかるところらしい.ここに,もとHiltonホテルで,今はRoyal Adelphiという名前のホテルがある.
此処の部屋に泊めてもらいました.はい.
部屋は良いです,今回のツアー1ヶ月半で初めて,バスタブのお湯に浸かりました.ぎりぎり間に合った朝ご飯も,お粥やカレーなどマレーシアらしくバラエティーに富んでいてナイス.しかも夕方までゆっくり眠れる.
ただねぇ,ちょっと約束してたんですよ,クアラルンプールの住人と.帰りに寄るから,その時は...
まあ,ちょっとした旅行気分でした(仕事とは違う個人的な旅行).しかもわざわざ,KLから約束していた人が訪ねて来てくれて,見知らぬ町のニョニャ(マレー・中国混血の人)レストランで夕食.なんだか嬉しかったです.
しかし何だってHiltonはあんなところにホテルを建てたのか?マレーシア政府に騙されたのかな?
それで,夜中にKLを発って,翌21日朝に関空到着.
久々に会った娘は,この1ヶ月半の間に段違いに言葉が増えていて,「○○が××したの.」というように助詞を使うようになっていた.今回出発前は,「〜する」とか,「堅い(彼女の意思としては,難しいという意味)」とか,単語でしか話さなかったのに,帰ってきたらちゃんと文章を話している.鸚鵡返しに言葉を模倣しているのではなくて,どうもちゃんと会話が成り立つ.
いやいや,人間の脳は凄いなぁ.
今回,パリのルーブル近くのKEIBUNSYAで,初めて日本語の本を買った.どうも値段が高いのが悔しくて,海外で日本語の書店に行くのは避けてたんだけど,今回は行きの関空で時間がなくて何も本が買えず,活字に飢えてました.ネットで見る日本語と本の活字は別物です.
それで迷いに迷って買ったのが,野村進さんの「脳が知りたい!」.面白かったです.3回も読んじゃいました.決して暇だったからではなく,いろいろインスパイアされました.野村さんの「コリアン世界の旅」も凄く面白かったけれど,一見ぜんぜん畑違いに見える「脳」の話しも,まさにプロフェッショナルなノンフェクションライターといった仕事です.買って良かった.
その中に助詞の話や,LEDにも関係のある色や動きなどの視覚の話も出てきて,色んな興味が広がった.何たって,脳は誰でも持ってるし,他でもない自分のことでもあるんだから.
娘の脳も,色んな能力を獲得しているようです.

Tsubaki Class, LOVERS, Uchihashi
11月30日:
京都造形大3回生への,椿さんの授業として,京都ブライトンホテル・ロビーのデコレーションを手伝う.
僕の担当としては,入り口近くのLEDを仕込んだパートの制御がうまく行くように,バックアップするというモノ.それ自体は簡単なことなのだけれど,全体的なセットアップは,学生らしい果敢なチャレンジもあって,困難を極める.ハッキリ言って,無謀なトライも多し.
気がつけば,久々に徹夜のセットアップに付き合うことに...
12月4日:
京都芸術センターでの,LOVERSセットアップ初日.
悌二がこの作品を作ってから,もう10年以上.ようやく,京都で展示できる.
今日は,基本的な空間作り.9日がオープニング.
9日と16日には,ゲストを招いての,パネルディスカッションも予定されている.
12月12日には,大阪の現代美術センターで,僕自身別のディスカッションに参加.
内橋さん達に会うのは,7月のpath以来.
どんな展開になるのか,予想もつかないけれど,会えるのは楽しみ.
2 years
昨日6日は,娘の2歳の誕生日だった.
彼女が産まれた時には,僕はパリでダムの公演中.その後も,家を空けることが多くて,久々に会う時は,いつも彼女は大きく成長している.いやいや,母ちゃんまったくゴクロウサマです.
2歳というと,反抗期.
育児の知識としては,当たり前らしいが,僕は知らなかった.それに例え知っていても,2歳児の反抗期なんて,よほど本人の近くで長時間過ごす者にしか,つまりたいていは親にしか,実感できないと思う.長じて人格のハッキリしている個人の性格がいきなり変われば,傍目から見てもわかるだろうが...実際,保育園の先生やばあちゃん達の前では,前とあまり変わらないようです.
でもとにかく,何でも嫌.おまるも嫌,パンツをはくのも嫌,ズボンも嫌,シャツも嫌,手を洗うのもご飯もおやつも嫌...
おまけに娘の強情っぷりは,僕が見ても見事.嫌なことは何が何でも全身で号泣しながら反抗します.
先日も,ばあちゃん達の家から自宅まで,ベビーカーに固定されながら反り返り,「ベビカー嫌ぁ〜!!!」と叫び続けてました.僕はもう,時節柄犯罪者のように周りの人からじろじろ見られ...
この12月/1月と家に居る機会が多い.
この機会に腰を据えて,これからまた長いツアーに出ても忘れられないように,お付き合いさせて頂きます.