もう何時がいつやら,何がなにやらわからない状態だが,いちおう自分のための忘備録として,ここしばらくの事を記入.
2月24日だか25日.アイホールに,dotsの新作を観に行く.チャレンジプロジェクトという,一連の試みの一環.このプロジェクトは,若いアーテストに,それぞれ複数回,舞台公演の機会を与えようという,素晴らしい試み.複数回というのがミソ,プロデューサーの志賀さんはよくわかってらっしゃる.アーティストの選考もすごくいいと思う.
それで,dotsの新作はというと,今まで3回ほど公演を観たと思うが,その中でいちばん良かった.主催の桑折君は,ダンスではなくて演劇でもなくて,あくまでパフォーマンスを作るのだ,という意思がはっきりしていて,そこを起点に試行錯誤を繰り返している.今までは,まだまだ方向が定まらず,いろいろ悩んでいる様子だったが,今回はどうやら自分の風向きをとらえたような感じだった.
3月1日は,僕の母親と妻の誕生祝いを,一緒にやってしまう.それぞれ4日と10日生まれなのだけれど,ちょうどこの日仕事が休みで,しかも10日には僕は京都にいないので,こちらの都合で祝わせていただく.ごめんなさい,何だか勝手な都合で...でもまあ,朝から娘と3人で,なかなか楽しい散歩もしたし,卵や乳製品を使っていない,アレルギー・フリーなバースディーケーキも美味しかったので,よしという事で...
2日は,大阪の精華小劇場へ指輪ホテルの公演を観に行く.珍しく,作品を観るより先に知り合って,しかもそれが国外で,それからは何だか縁があるようで京都でも会い,一緒にご飯を食べに行ったりもして,そして初めて作品を観る.
中途半端なものだったら,貶すのも褒めるのも大変だなぁなどと思っていたのだけれど,十分に面白かった.ちょくちょく噂は聞いていて,それは女の子が半裸で走り回るみたいな類いの事だったけど,まあそういう事もあったかもしれないが,それにはちゃんと理由が付いている感じ.主催の羊屋さんが,性差だ何だかんだに意識的なのかどうかとかも,話題にあがる事があるようだけど,それも別にあざとく受け狙いをしているわけではなく,本人の個性とも相まって,自然とそういう作風になるのでしょう.
僕としては,たぶん「演劇」に分類されるであろう舞台を観るのは久々で,あらま,日本の演劇も捨てたもんじゃないし,日本語使ってても,国外で無理なく公演できる舞台作品が可能かもしれないなと,新たな可能性を感じた公演でした.
そして5日からは,東京芸術見本市でのRefined Colorsのプレゼンと,森下スタジオでのワークショップのため上京.実はこの一週間ほど前から,プレゼンのための資料のプリントと,DVDの編集・焼き増しに追われまくり.映像の編集は,RCのメンバーががんばってくれたが,その出来上がりのチェックとDVDの焼き増しで,Macの前を離れられない日々が続いた.その合間を縫って,色々やっていたのだけれど,さすがに4日は睡眠時間を削って,東京行きの準備.この歳になって,まだまだこんな生活です...
そして,5日午後には麻布の友人宅に荷物を置いて,森下スタジオでWSの設営準備.その合間に見本市のオープニングにちょこっと顔を出すと,各地で出会った知り合いがいっぱい日本まで出向いてきている.まだまだこんなに日本の舞台作品が人気あるなんて,知りませんでした.いちおう関係者なんですが,面目ない.
写真は,上述のケーキ.
Tokyo-Yamaguchi-Singapore
人前で話すのはかなり苦手で,まともな挨拶も満足にできない.どうもそういうのって,嘘臭く思えるのだ.
嘘も方便,必要なら嘘にならない程度に大げさに...という状況も十分に有りだと思うのだけれど,さて己がやるとなるとどうもいけない.でも,そういう機会がだんだん増えてきて,少々話せるようになったかと思ってたんだけど,6日の東京芸術見本市でのプレゼンは,あまりうまく話せなかった.
最初は物珍しさで使ったLEDだが,使ううちに色々可能性が見えてきて,その一部は,舞台表現に留まらないように思っているのだが,どうもそこまで話を持って行けなかった.
どうせ人前で話さなければいけないのなら,もう少しちゃんと思っている事を伝えられるテクニックを身に付けなけりゃなぁと反省.
6日夜から始まったRCワークショップは,とても刺激的だった.
毎回各地で驚かされる事が有るが,今回は特に,僕の思いもかけないアプローチが多かった.
ColorWaveを作っていただいたプログラマー本人まで,参加して下さって,WS中に漏れ聞こえるアプリケーションに対する様々な要望が,翌日には反映しアップデートされるという,かなり贅沢な状況.RCやpathの制作時に,タマさん開発チームに山口まで来てもらった時と同じような,愉快な環境でした.
これまでも何度かおこなってきたWSと何が違ったのかと考えると,今回の参加者の方が,個々人の自分の舞台に関するイメージが,はっきりしていたように思う.そのバリエーションが,とっても面白かった.なお,9日のトライアルの順番は下記の通り.
01_nekomimi
02_shirotama
03_oshima
04_ruby
05_ichiri
06_takao
07_shirotama/motohara
08_so sakai
09_izuru
10_mochimoto
11_trail yama2
12_さぐりあい
皆さま,ゴクロウサマでした.
この6日から9日までの間も,見本市に加えて別のミーティングなんかも入って,一日中都内をウロウロ,おかげで東京の地下鉄に少し詳しくなった.
そして,9日夜のWS打ち上げで,かなり開放されたものの,強欲にも翌日山口YCAMでの高谷と坂本さんのインスタレーションLIFEのオープニングに顔を出すと決めていたので,10日朝はドキドキしながら早朝に目覚める.麻布十番から,生まれて初めて羽田空港へ行き,昼に山口宇部空港へ向かう飛行機に乗ったら,何だか顔見知りが一杯.東京でだって,こんなに皆さん顔を揃えないでしょう,という面子がみんな山口へ向かっている...その期待に背く事のない,美しい作品でした.
皆さん,機会があったら5月28日までに是非YCAMへ.
坂本龍一+高谷史郎 “LIFE – fluid, invisible, inaudible …”
http://rsst.ycam.jp
翌日11日は,早朝にYCAMのAsさんに新山口駅まで送っていただいて,のぞみーはるかと乗り継いで関空からシンガポールへ.
12日からは怒濤の仕込み.
朝9時に現場に入って,夜中過ぎに宿に帰る毎日.
6面のスクリーンを吊って,床面打ちまで含めて7台のビデオプロジェクターとLED照明+通常の舞台照明を仕込み,ミュージシャンのステージと観客席用のプラットフォームも設置.
スクリーンもプラットフォームも,専門の業者が入っていて,ちゃんと仕事をしてくれるのはいいが,現場の状況にはお構いなし.こっちが,どんなにバタバタしていても,運んできたものはとにかく現場に搬入してくる.まあ,そりゃ当たり前の事ですが...
で,16日4日目に至も,まだ仕込みは完了してません.
ああ眠い...楽しいけれど,大丈夫か?僕の人生...と家族...
写真は,仕込み風景と,TheatreWorkからすぐ近くのお洒落エリアの風景.ごっつ未来的だけどここいらでは日常的な風景.
In production
ほぼ毎朝,地下鉄で1回乗り換えて駅から10分ほど歩いて,約45分の通勤をしている.
時間は9時前から11時ごろまでとまちまちなのだが,ほぼたいてい一杯の乗客である.東京や大阪なんかでもそうかもしれないが,京都ではこんなにどの時間でも一杯という事はない.帰りは,タクシーの事も多いが,たまに22時とか23時ごろに地下鉄に乗ってもやっぱり一杯.
どの時間帯でも,日本みたいに異常に皆さんダークスーツで,夏でも・秋でも・冬でも・春でもほぼおんなじような格好の男性ばかり,という事はない.僕が乗るどの時間帯でも,老若男女様々な人種のとりどりの格好をした人が乗っている.
なので,表示もこんな感じ.英語に北京語にマレー語とヒンドゥ語と,ほぼたいてい4カ国語表記.
つくづく,日本はモノカルチャーだなぁと(単一民族というわけではないのに),何だかみんな同じ方向を向いている気がして怖くなる.
制作は,ただいま音や映像が出来てくるのを待っているところ.照明は,毎回仕込むので,極端な事をいえば僕のプラン次第で毎回セットアップも変えられるし,LEDだと色も動きも簡単にアップデートできる.
しかし,音も映像も変更可能だとはいえ,一度作って組み込んでしまうと,そうそうは作り替えが利かない.その分初期クリエーションに,莫大な時間がかかる.
でもそのかわり,ツアーなんかだと,圧倒的に照明/舞台の仕事量が多くなる.何しろ,毎回セットアップしてはバラす物量が違う.という感じで,いつもクリエーションの中盤にさしかかると,他のエレメントの出来上がり待ちになる.今回のプランを描いて,スクリーンや灯体を吊り込んだ時点で,実は照明の仕事の半分くらいは終わっているのだ.
Kamoshida San
シンガポールでの制作も,かなり押し詰まってきているのだが,作業の合間に横目で見ていたネットで,西原さんの元夫の鴨志田さんが亡くなった事を知る.いや元夫じゃなくて,今年の始め頃にアルコール依存から離れて,ようやく西原さんとよりを戻したとの事だったから,「元」は取れて夫の鴨志田さんか.
漫画家の西原さんも鴨志田さんも,こちらが一方的なファンだというだけで,お会いした事は無いけれど,特に鴨ちゃんには親しみを感じていただけに,何だかショック.
享年42歳って,僕より若いじゃないですか...
公開されているものだから,ここに書いてもいいと思うが,ozmallというエンタメ系サイトの中に,「カモのがんばらないぞ」という,鴨ちゃんの闘病エッセイがあって,制作中に思わず読みふけってしまった.
鴨ちゃん,ゴクロウサマでした.
西原さんには,お悔やみ申し上げます.
Escalator
この3週間程度の地下鉄通勤で,ずっと考えている事が,エスカレーターである.
もちろん,Singaporeに来て,生まれて初めてエスカレーターに乗ったわけではないけれど,普段京都で自転車を活用し,しかも通勤などというものをほとんどした事が無いので,こんなに毎日続けて同じルートを通る事は稀だ.一回の乗り換えを含めた通勤では,ホームへのアクセスを含めて,片道6つのエスカレーターに乗る.これがまあ面白い事に,長さも,速さも,乗り始めと終わりの平坦なパートの有無も違う.
試しに,手摺りに掴まらずに,なるべくそれまでの移動速度を変えないように,エスカレーターに乗り込む.(乗り込むったって,そんな大げさなものではないが...)難しい...そのまま同じ速度で歩き続けて,エスカレーターの終点でも止まる事なく,動かない地面にアクセスする.難しい.これらの難しさは,上りと下りで違いがある.
何の話しかというと,目の話.つまり脳の話.
エスカレーターに乗り込む時点で,処理している情報は,形と距離感(3D)に,速度まで加わっている.しかも平面方向への移動速度には,自身の歩行速度と共にエスカレーターの移動速度が有り,その上,あの踏み板というか階段部がせり上がってきたり下がってきたりする速さも有る.
一般的に,下りのエスカレーターへのアクセスの方が難しいと思うのだが,それは段差が垂直面として見れずに,踏み板上面のパターンでしか認識できないせいだと思う.両眼の視差で距離感や立体を認識しているのは周知の事だが,同じパターンの平面に高低差があっても,それを上からしか見れないと認識が難しい.しかも高さは,あるところまでは刻々と変わっていくので,それを水平面に延びていくパターンの変化から推測しないといけない.
そして,ここが面白いところなのだが,通勤時の6つのエスカレーターは,ハッキリわかるほどに速度がバラバラで,高低差の出来る速さを体感的に経験値として固定できない.つまり,毎回エスカレーターにアプローチするたびに,それに近づきつついくつかの速さを確認し,周囲の状況にも対応しつつ,自身の移動速度を調整していく.
ついでに,Singaporeでは次の地下鉄の時間がホームより上の階層でも刻々と表示されていたりするので,それを見て1分後に地下鉄が来るとかだと,慌てて走ったりする.
この時,目から入った情報は,形や,色,距離,速度といった違うエレメントごとに脳のいくつかの部位で別々に処理されて,しかも,「ああもうすぐ地下鉄が来る」とか,「あれ,あの人知ってるかな」とか,「エスカレーターの階段部って,尖っててギザギザで堅そうで,痛そう」とか,色々考えてもいるわけである.
例えばこれを,ホンダのASIMO君にでもやらせようと思ったら,現在なら出来るのだろうか.確か数年前までは,階段の昇降も難しかったはずだ.
しかも人は,片手に荷物を抱えたりして,物理的な条件も様々で,服によっては動き難かったりもして,大変な事である.それに,いろんな事考えているだろうし,おまけに体内では,そんなこととは関係なく,脳の管理下で摂取したものが分解され,エネルギーに変わり,血液が全身をまわり,侵入してくる細菌なんかにも対応している.
そう思うと,躊躇しながら手摺りに掴まりようやくエスカレーターに乗り込むおばちゃんも,ひょいと飛び乗るちびっ子も,それぞれがものすごい奇跡の産物のように思えるこの頃.
Summer to Spring
3日ほど前に帰国.
不覚にも,深夜のフライトだったのに,「エラゴン」「ロッキー・ファイナル」「ホリディ」(途中まで)と見続けてしまい,一睡もせず関空着.JALだったので,全部日本語吹き替えが付いていて,なーんにも考えずに,何も考えなくていい映画を見ていたのが敗因かと.しかしロッキー,酷過ぎ.都合のいい夢しか見ないアメリカ人が,自分の事だけ考えていいように作った話.ホリディは,面白そうだったのに,主人公二人が家を交換して,1日が過ぎた頃に,飛行機が関空に向かって降下...
シンガポールでの制作/公演は,楽しかった.
Eaさんとの制作は,どちらかというと彼女のイメージを具現化する作業だったけれど,今回は自分のイメージを作品に嵌め込んでいくような作業だった.しかも,まったくゼロからの新作制作は久々.全体的な構成には疑問もあるけれど,それはディレクターのKa faiとの方法論の違いか.でもとにかく,出発点としては良いモノができたと思う.問題は,他の場所で,同じシステムが再現できるのかどうか.たぶん,ダウンサイジングしないとダメだろうなぁ.
京都は,桜満開.しかも花冷え,寒の戻り.
とても京都らしい時期だけれど,シンガポールの気候に3週間ほども馴致された身体には,かなり辛いです.せっかくの,満開の桜なのに,寒くて夜に散歩する気にもならない.
早く暖かくなって欲しいです.
写真は,
・Drift Net会場/TheatreWorks のクレジット.
・あくまでもお洒落な会場,TheatreWorksのエントランス.
・舞台と,パフォーマーのRizman氏.
・けっこう毎朝お世話になったカフェの,ココナッツミルク風味のご飯と甘いコーヒーしめて240円くらい.
“lost” creation
めずらしく京都で制作中.そして,なかなかに規則正しい生活.
短いパフォーマンス作品を,Monochrome Circusの二人と創っているのだが,まだ公演予定はない.こういう作り方も初めてなのだが,とにかく彼らも僕も4月中に時間があって,練習場所も確保されており,少し暖めていたイメージも持っていたので,何処でいつ公演するかというのは創ってから探すことにして,基本的な構造を組み立てはじめた.
おかげで,午前中は自宅で事務仕事や図面作業をして,午後は京都芸術センターへ通う毎日.しかも土日は作業は休みで,彼らはワークショップ・フェスティバル,僕は土曜は別の作業で日曜は子供の世話.
いやいや,先だってのシンガポールのように,通常はどこかで滞在制作というのが多いので,制作となると2週間なり3週間なり,ほぼスタジオ/劇場に籠もって集中するということになる.それは,どちらかというと非日常の時間なのだけれど,今回はその時間が日常の中に流れ込んできて,気がつけばそれは大学生の頃の生活のようでもある.午前中が一般教養で,午後は制作みたいな...
ちなみに,それじゃあいつもは京都にいる時は何をしているのかというと,こちらも制作には違いないのだけれど,図面や企画書制作,メールでの打ち合わせなどと,ひたすらコンピューターの前に座っているのだった.
作品のタイトルは,まだ仮題だけど「lost」.12灯のLED照明と,中古を譲ってもらったスタジオモニター用スピーカー1セット,それにダンサー独りの作品.5m四方以上の踊れる空間があれば,あとは家庭用の壁コン1個から取れる電力だけでOK.ギャラリーなんかでまわりが白い空間ならかなり強力な公演ができると思うが,別に床も壁も白くなくても上演可能な作品になってきている.
ところで写真は,近くの疎水を観光シーズンだけ運行している十石舟に乗った時のもの.桜の季節とも相まって,なかなか侮りがたい.花筏も美しく,普段とは違う目線で見たご近所の風景は,とても新鮮に映った.
端的に言えば子供へのサービスの一環として,観光客に交じって乗った訳だが,改めて普段何百何千回と見ている景色の中に,どれほど見えていないものがあるかを実感.なかなかのお勧め.できれば一人ではなく,誰かと一緒に乗るのが楽しかろうと思います.
Mt. Daimonji
あまり連休とか祭日に縁のない生活をしているが,たまたま今日は家族三人休みだったので,出かけることに.娘3歳半にして初登山.大文字山の山頂を目指す.
正確に言うとてっぺんではなくて,頂上近くの「大」の字の広がっているフィールドである.
銀閣寺の横から歩き始めて,どれくらいかかっただろうか?まわりは終始,人がいる.大文字山,えらいこと人気のスポットらしい.平日の方が人が少ないのかというと,それはそれで幼稚園や小学生の遠足で,ごった返しているという話もある.
中には,スカートを履いて登っている人もいるぐらい,なめられている山だが,いやいやなかなか変化に富んで面白い道.今までの人生で2〜3度登ったことはあるが,途中の道はあまり覚えていない.登り切った時に広がる京都の町の風景しか記憶になかったが,緩急のある坂に階段に,急に広がる広い空間もあって,新緑の登山道は楽しかった.
好天に恵まれたせいもあるのか,娘はほとんど自力で上まで登り切った.
本当によく聞く弁ではあるが,いやホント,あっという間に大きくなるもんだ.