Seville 1


31日の夕方に日本を発って,香港−ロンドンと乗り継いで,2月1日の午後セビリアに到着.既に暖かく,気持ちの良い季候.
劇場は,Teatro Central .以前大きい方のホールで,ダムのS/NとORを公演している.
今回は,130席程度の小さいホールで2回公演.
セビリア万博にあわせて建てられたこの劇場は,万博会場と同じく河を挟んだ旧市街の対岸に建ち,朽ち果てて行くままに捨て置かれている万博跡に寄り添うようにして,そこだけがちゃんと機能している.プログラムも面白いし,設備もそれなり.
特筆すべきは,いつも用意してくれるホテルが,かなり居心地が良い.そんなに宿泊料金の高い宿ではないんだけど,アパートメントタイプで部屋が広く,アンダルシア情緒たっぷりのパティオを囲むように並んでいる.石造りの部屋は,暖房を入れていてもまだ少し寒いけれど,夏の屋内は涼しくて気持ちいいことだろう.
2日は,仕込みとリハ.途中まで快調だったが,床置きのLED照明を仕込んだ時点で,機材が動かなくなりその後暴走.かなり焦る.どうも電源周りが怪しい.
以前も,スペインでは,電源関係で痛い目に遭っている.まあ,アースの付いていない機器を持ち込む方が悪いのかも知れないが...
結局,電源の取り口を換えたり,配線を整理している間に,何とか復旧.しかし,確かな原因は不明.何とも恐ろしい.何とか,夜にリハーサルを通す事ができて終了.そのまま元電でまとめて電源を落として,今朝まずPCから立ち上げて電源を入れたら無事に動いた.
ちなみに,2日の夜は終わったら23時.ホテルに帰って,改めて外に出るのもたいへんなので,ミィーティングを兼ねてみんな集まって部屋で自炊.その朝にメルカドに買い出しに行ってあったので,その材料で簡単な炒め物などを作る.野生種っぽいブロッコリーとズッキーニと蛸をオリーブオイルでさっと炒めて,ついでにエビとアボガドの和え物と,赤ピーマンにオイルと塩とレモンだけの超簡単なサラダ.どの食材も,日本の半値以下の感覚,しかも美味しい.
写真は,街の散策,生ハムを削ぎ切るオヤジ,メルカドの八百屋の並びと,劇場の遠景,それとホテルの部屋でのミーティングというか飲み会.

Sevilla2


セビリアでのオフ.日曜なので,飲み屋とレストラン以外は,ほぼ閉まっている.昼間からちょいとビールをひっかけて,うろうろと散歩した後は,ほとんど寝て過ごす.自分でもびっくりするくらい,長時間寝てしまった...
街の入り組んだ路地には車も通らず,日曜の昼間はとても静かだ.そして所々にある広場では,何だかわからないけれど黒山の人だかり.別にイベントがあるわけでもなく,Barから溢れ出した人達が,セルベッサ片手に盛大に立ち話をしているのだ.彼らは,会話をするためにお酒を飲む.
昨日と一昨日の公演はお客さんの反応も良く,劇場のプログラム・ディレクターであり,今回のツアーをまとめてくれたマノロ氏も,ずいぶん喜んでくれた.彼はパリ公演を観て今回招待してくれたのだが,そのパリでやった旧5人バージョンよりも今回の3人バージョンが良かった,といってくれたのはとても嬉しかった.去年の夏に,みんなで作り替えた甲斐があったというものだ.
ところで,スペインにはコインランドリーが無い.少なくともセビリアにはないと,ホテルの受付のおねーさんが断言していた.しかしそれは,どの家庭にも絶対に洗濯機があるということかな?それとも,手洗いが普通だとか?
明日グラナダに移動なので,ホテルのサービスを使うわけにもいかず,仕方がないのでバスタブで盛大に洗濯.はたして明日までに乾くか?
写真は,公演のステージと客席,2日間通い詰めたバルの親切なオヤジさん.ちなみに,前回のEa Solaツアーでデジカメが壊れて,新たに買い換えた.新機FinePixF11はISO1600と,物凄く暗いところも明るく写る.肉眼より増感して,色も綺麗に映るというのは,何とも不思議な感じ.

写真は,舞台と観客席と,毎晩通った飲み屋の親父さん,息子さん,とうとう中に入ってみんなで記念撮影.素敵なホテルの中庭とエントランス,街中のナランハの樹.

Granada

Sevillaから列車でGranadaに移動.シェラネバダを望む,古い都.
15年ほど前に,ダムの公演で訪れたはずだが,街の様子はほとんど記憶にない.かろうじて,アルバイシン(旧ユダヤ人街,つまりアラブっぽく入り組んだ街並みの下町)地区とアルハンブラ宮殿だけ何となく覚えている程度.
ここの主催は,Teatro Alhambraなのだが,EU法で非常口のない劇場は使えなくなったとかで全面リノベ中らしく,街の周縁にあるTeatro Jose Tamayoで公演することに.この劇場は,新興地方都市の文化センターという趣で,ファーストフード店みたいに味気ない.ただし,スタッフはみんな親切で,しかも英語を話す人も多くて,たいへん助かる.でも,非常口がないという,つまり相当古くて,しかも街の中心にあるTeatro Alhambraで公演する方が,ビジュアル的には相当面白かった気がして,少し残念.
街中から遠い分,集客が不安だったのだが,昨日の初日には多くのお客さんが来てくれた.380席程度の客席がほぼ埋まって,しかもシアター・スクールの生徒達がかなりいたようで,反応は上々.公演後にもいろいろ声をかけてくれた.簡単な英語は皆話せるので,喜んでくれたことはわかるのだが,それ以上の話はスペイン語の応酬で内容は身振りから推察するのみ.それでも,陽気に話しかけてくれる,彼らが嬉しい.
明日は,早朝にバスでマラガに向かい,着いたらそのまま仕込み突入.今ツアーでもっともタイトな1日.でも,昼休みはきっちり14時から16時までの2時間とるんだなぁ.基本的に仕事は朝10時から14時までと昼食後16時から21時か22時まで.晩ご飯は,その後ゆっくり飲みながらとる模様.でももちろん昼にも,ワインかセルベッサは欠かせない.
スタッフがいうには,事務職は朝8時半から働いているらしい.早くからがんばっている人もいるんだと,よくよく聞いてみると,その場合は15時で全ての仕事を終えて帰宅するんだと.良いなぁ,スペイン人.それで別に国として困ってるわけではなさそうだし...
写真は,遠くシェラネバダを望み二足直立するレッサーパンダのごときM鍋氏と,劇場,劇中、バラシ後の乾杯!フラメンコのリズム

Malaga

2月10日-12日
5時45分起き.タクシーでバスターミナルへ向かい,7時発の便でマラガへ.9時過ぎに,最終公演地であるTheatre Canovasに到着.
ステージ前半上部のスノコ高が5m程度しかなく,その後舞台奥までの3mくらいは,天井まで10m以上ある変な構造.前は,何に使われていた建物なんだろう?
また,もっとも注目すべきは,その舞台の高さ!客席床から舞台框まで,1m20cmをゆうに超える.つまり,ダンサーが舞台奥で床に寝ると,姿が消える...
劇場から断面図が送られてこなかったので,現場に入るまで何の対処もできなかったのだが,急遽客席前2列をブロック.どの席から見ても,観客の頭が舞台上を遮ることはないのだが,この2列からは立ち上がりでもしない限り,舞台上で何が行われているのかわかりゃしない.劇場スタッフも,問題は心得たものらしく,交渉はスムースに進む.前のグラナダでも,あまり床面は見えなかったのだが,それはそれで新たな見せ方ができたので,ここでもダンサーを含めてみんな,悲観的な様子は見せずに立ち位置を決めていく.実際僕も,リハを前で見てみるが,ダンサーの動きと光の関係が,新鮮で面白い.
もっとも心配されていた「紐」のシーンも,床面があまり見えなくてもどうやら内容は伝わるらしく,公演後に聞いた感想でも,あまり的はずれなものはなかった.もっとも,シンプルな英語かジェスチャー混じりのスペイン語の感想だけれど...
とにかくまあ,反応は上々.ただ,どうも観客の年齢層が,グラナダよりだいぶ高い感じだった.
この劇場は,美術大学やら音大に囲まれたところに建っているのだが,どうもそこの生徒より先生の方が多く観に来てくれていた模様.
ちなみに来月3月19日には,Ryoji Ikeda [C4I]も同劇場で公演予定.もしその頃近くにいる人は必見です.
写真は,劇場外観と問題の高〜い舞台,終演後の記念写真,モテモテダンサー,夜食で乾杯,あとグラナダのバスターミナルで早朝から,荷物をぶちまけて忘れ物を確認するM鍋氏.(紛失した高価なイアホンは,後発のダンサーによって,ホテルのベットと壁の間に挟まっているところを無事救出される.)

Casares


2月13日
前日無事に,Malagaでの最終公演終了.
機材をパッキングの後,みんなで教会横のレストラン街へ繰り出すが,日曜夜とあってあまり活気はない.僕たちだけ盛り上がって,乾杯.
とにもかくにも無事全公演が終了.完成には至らなかったが,何度も作り直しているシーンのサウンドトラックを,またほぼアップデートできたのも大きな収穫.秋には,新しい音で公演できるはず.
そして,この朝には.ダンサーのユカ嬢と音響のM鍋氏と僕の三人で,レンタカーを借りてアンダルシアのドライブに出発.
実は今を去ること15年前の1991年にも,GranadaでのpH公演の後に,ダムのメンバーと同じようなルートを回っている.しかしその頃は好奇心満タンですごいハードスケジュールをこなし,結局バタバタとした印象だったので,今回は僕としてはもう少し気楽にのんびりこの辺りを回りたいところ.(前回はグラナダから出発し,南はモロッコのタンジェ,西はポルトガルのリスボン,そして最後に北はマドリッドに戻るという行程を,一週間でこなした.)
日程は4泊で,最終日はSevillaに戻って,翌日5時起きで空港へ.
とりあえず,白い村として有名なCasaresに向かう.
途中,「ナビは任して下さい」と豪語していたM鍋氏によって迷い込んだ,何処ともわからない姥捨て山,もといリタイア老人の楽園らしきリゾートで,錯乱したM鍋氏が着衣のまま2月の海に飛び込む(写真参照)という珍事があるが,あとは概ね順調.
Casaresuは,どのガイドブックにも載っているような有名な村になってしまったが,前回訪れた時は,本当に素朴な山中の小さな村だった記憶がある.
今回到着時は,村の入り口近い道の路肩には,縦列駐車の車が列をなし,観光バスもそれに混じり,本気で引き返そうかと相談したのだが,村の中に入ってしまえばそれほど観光客で溢れかえっているという状況じゃなかった.宿泊施設は2軒しかなく,安い方は前と同じ街の広場に面したバルの上階で,近所にある肉屋さんの経営.相変わらずまったく英語の通じないおばあさんが部屋の鍵を渡してくれるが,家業の肉屋はガラスケースだけ残して廃業していた.宿代は,一人一部屋借りて,トイレシャワー共同で,20ユーロ.
街の中は車とバイクとバルの数がずいぶん増えていたが,その佇まいはあまり変わらない.もっとも大きな変化といえば,頂上にある教会の廃墟が改修され始めていたことだろうか.
夜は,バルを何軒かハシゴした後,マラガのスーパーで買い込んだワインをがぶがぶ.

Cadiz-Sanlucar de Barrameda


2月14日・15日
Casaresでの一泊のあと,Algecirasを通過してCadizへ.
モロッコに渡りたい,という気持ちもないではなかったが,スケジュールを考えると無理.なので,ひたすら走って午後のわりと早くに街に入り,駐車場と安宿も確保.前は,夜中過ぎに着いて,午前中には出発した街だった.それでも,町の古い佇まいが妙に印象に残っていて,今回はそれをなぞるようにゆっくり街中を歩いてみた.
昔から栄えていた港町というのは,独特の感じがある.特にスペインでは,北のLa CorunaやSan Sebastianが忘れられない.南と北ではずいぶん印象が違うけれど,Cadizも素晴らしい.
そして港町は,食べ物が美味しい!特に,このCadizの海沿いのわりと寂れた地区にある,たぶん超有名レストラン+バルで食べた「あさりのサフラン煮,溶き卵とほうれん草入り」は,今回最大の美味.新鮮な小魚のフライや貝類,エビなどももちろん美味しかったが,料理という意味では,これが一番美味しかった.
翌日は,わりと近場のSanlucar de Barramedaへ移動.
Cadiz周辺では,シェリー酒の産地であるJerez de La Fronteraが有名だが,Sanlucarはそのシェリー酒の中でもManzanillaという,特に有名なお酒の産地.Jerez周辺で採れるブドウで作られる,独特の製造法のワインをシェリーと呼び,その中でもSanlucar de Barrameda産のものをManzanillaと呼んで区別するらしい.
街中には,ボデガと呼ばれる,要するに造り酒屋の酒蔵が何軒もあり,見学できる.しかも海辺でシーフード.
しかし,目的地をここに決めたのは,それだけじゃない,「地球の歩き方」によると,近くにスペインいちの国立公園があり,この町からツアークルーズが出ている.夏季は朝と夕方の2便,冬季は朝のみ,ツアー行程3時間半,水辺の野鳥や湿地の生き物,スペインの野生動物見ほうだい出会いの旅!
これは行かねば,という意見がM鍋氏と一致して一路CadizからSanlucarへ向かうが,何だかなかなか着かない.どうやら,一度Sevilla近くまで北上してから,また海辺に南下した模様.
しかも,さすがに「地球の騙し方」.意気揚々とツアークルーズ申し込みのためビジターセンターに行くと,「次に船が出るのは土曜日です」とのこと...また,騙された.
仕方がないので,夜はマンサニーニャがぶ飲み,シーフードやけ食いバルはしご.ローシーズンで格安の雰囲気のあるリゾートホテル(ダブル47ユーロ・シングル31ユーロ)に帰り着く頃には,ベロベロ.あー美味しかった.
写真は,Cadizの南方情緒溢れる聖堂と引き潮の海岸,Sanlucarの酒蔵とかとか.

Sevilla-Paris


2月16日・17日
16日,Sevillaへ戻り,10日ほど前と同じホテルに落ち着く.スペインの郊外は,非常に走りやすいが,街中はややこしい.Sevillaに入ってからは,かなり迷う.
ホテルは,やはり素晴らしい.
夜は,前にお世話になったバルへ.バルの親父さんが,テレビで僕らの公演の紹介を見たといってくれた.そういえば取材に来ていたなぁ.
あと,親父さんはずっとこの町にいるが,若い頃から店に日本人が来たり他の国の人もたくさん訪れているようで,それで親父さんは英語が話せるし,日本語も少し覚えたとのこと.灯台みたいな,飲み屋である.
帰り際に(どうも僕らが演劇関係者だという思いこみもあったようで),僕ら三人にそれぞれ,スペイン語の小説本をくれた.わざわざ,買いに行ってくれた模様.また来ます.
17日,朝5時起き.
迷いつつ,空港へ.途中でぼそっとM鍋氏が,「僕,タクシーで行こうかな」というほどの,ピンチ.(三人とも次の目的地が違い,彼が一番早いフライトだった.)でも,まあ結果は無事に余裕で到着.
彼を送り出してから,今度はレンタカーの返却場所を探して,空港の周りをうろうろ.インフォメーションで聞いても,要領を得ない.国際空港のインフォメーションが,片言の英語しか話せないのは,いかがなものか?
でも,何とか間に合って,僕はパリへ.ユカ嬢は,リスボンへ.
パリでは,仕事のミィーティングをひとつ.その後,現在パリ在住のダムのダンサーYuuと再会.今晩Teatre de la Villeである,Alain Platelの新作が見れるかどうか,チケットは売り切れなのだがトライ.
結果は,階段通路に直座りだが,チケットゲット.客席は,超満員.しかし作品は,もはやAlain Platel様式というか,決まったパターンをなぞっているような感じで,理由が伝わってこない.セットは良くできていたけど...
明日は,12時間ほどかけて,香港へ.
写真は,今回のM鍋氏4態.スペイン到着初日に泥酔・マラガの街角でシェスタ・劇場前の公園で爆睡・カサレスの教会跡で孤独をかみしめるM鍋氏.
本人の手の届かないところでの,誹謗中傷は望みではないが,これはいちおう事前にことわってもいるし,何より責めるつもりは毛頭ない.いやぁー,楽しい公演ツアー+旅でした.面白かった!