EMPAC OPEN

EMPACが,何とかオープンし,オープニングイベントの「Voyage」も2日間3回公演が無事終了.
まあ贔屓目に見ても,「無事」オープンとは言い難いが,一般のゲストの目から見れば,立派に開いたというところでしょう.
実際,直前の追い込みは凄まじく,ビルディングのコンストラクション・クルーも舞台関係者もフル稼働.こちらが22時に仕込みを終えて帰り,翌朝来るとビルのかなりの部分が出来ている.ついでに前の道も,速攻で整備していた.
それに,例えば持ち込み卓と劇場ディマーのコネクションがうまくいかなくて,ETCのテクニカルに来てくれとオーダーすると,翌早朝5時半に来るというし...
劇場照明チーフのAngel女史は,「私はここに住んでいる.」と断言していたし.皆さん,時間感覚というものが,おかしくなっていた模様.
それでも,開いてからも,舞台裏にはまだ建築関係のクルーがウロウロしているし,グリーンルームの天井は一部開いたままで,何かの線が垂れ下がっているし,その他いろいろ間に合っていない部分はあったけれど,それでもまあ「よく出来ました」の一重丸くらいはつけられる.
ただ惜しむらくは,どの公演も会場お披露目の無料(招待?)公演で,「Voyage」だけではないんだろうけれど,どれも何か余興っぽい扱いに感じてしまう.「これからこういう事をしているアーティストと,いろいろいっしょにやっていくんです.」というようなスタンスの表明というより,「こんなビルが出来ました.中ではこういうような事をやるんで,お楽しみに.」というサンプル扱い.
まあ,舞台スタッフはきちんと働いていたし,出来る限りこちらの要求通り良い公演が出来るようにがんばってくれたので,劇場内は居心地が良かったのだが...外というか,EMPAC全体との繋がりは,希薄に感じた.
でも,きっと皆さんそれどころじゃなかったんでしょう.とにかく開けなきゃいけないし,なんてったってこの建物のオープニング・パーティーは,今回一度しかないんだし,とにかく必死で間に合わせたというところでしょう.
2〜3年経って体制も整って,しかもまだ予算がある時に,また来てみたい感じ.(ただし,EMPAC以外は,まわりにたいしたものは何もないので,遊びに来るのは難しいかな.)
舞台上,公演準備は出来ても,オケピはまだ工事中.
Orchestra_pit

建物のガラスの外殻の中に,巨大な木肌の卵みたいなコンサートホールがある.
Empac_1

コンサートホール内部の天井.ここが,EMPACのメイン施設.
Concert_hall

詳しくは,webで.
http://empac.rpi.edu/building

Road is not for human use

TroyからMontclairに移動して数日.
昨日は,NYのJapan Societyに下見兼打ち合わせに行ったし,今日はMontclair UniversityのAlexander Kasser Theaterへ打ち合わせにも行った.
なので,別に閉じこめられているわけではないのだが,何でしょねこの閉塞感.
NYは,鉄道で1時間程度と,京都から大阪に行くような感じで,余裕で日帰りも可能.宿から徒歩圏内に,アメリカンな巨大スーパーマーケットもある.
しかし,とにかく,道を人が歩くようには出来ていない.山ほど走っている車の運転手も,どうも道を人が歩いてる事なんて,まあ有り得ないと思って運転している気がする.
なので,のんびり散歩気分でホテル周辺を歩くなんていうのは,危なっかしくて出来ない.いつ曲がり角から,車が全速で現れるか分からない.
それに,ホテルから劇場やNY行き鉄道駅,ショッピングセンターなんかに行くには,ホテルのシャトルのお世話になるしかない.無料サービスで,頼めば来るけれど,場合によっては15分や30分は,ぼーっとシャトルが来るのを,駅や劇場の前で待つ事になる.どうにも他力本願というか,何だか手も足も出ない感じ.
昨日,NYに行って,ヒトが一杯歩き回っていて,自分の足で到達できる範囲にいろいろな店や駅があるのが,どんなに新鮮だった事か!
ダムのメンバーの一人が言ってたけど,「ルームランナー」がなぜこの広大なアメリカで売り出されたのか,腑に落ちた.なんてケタクソ悪い環境でしょう.
とにかく車がないと,ここではヒトは消耗して死んでいくばかりだという気がする.
今年の1月に,Eaさんのツアーでまわった時もそうだったけれど,大学キャンパス内は,それはそれでけっこう美しく完結している.学食やカフェ,歴史ありそうな建築に溢れる木々と芝生.その中で生息する分には,必要十分な気もするが,どうもひどく胡散臭い.一歩外に出れば,まったくもってぜんぜん違う世界が広がっているのだ.そんな所で後生大事に知識を貯め込んで,そのギャップに疑問も抱かなかったとしたら,外に出た時に何か勘違いしないか?
ひょっとしたら,この合州国自体が,世界に対してそういう勘違いな場所なんじゃないか?

Montclair Holiday Inn

Montclairでのダムの公演も,あと2日.
この写真は,ここ10数日を過ごした,ホリディインの自室からの風景.

Holiday_in_1

一階の部屋で,ホテルエントランスを左手に見る,駐車場の真ん前.
さすがに,いつもは紗幕みたいなカーテンを閉めていて,開け放した事はない.
カーテンを閉めるとこんな感じで,

Holiday_in_2

外からだと,日中はまったく中は見えない.

Holiday_in_3

夜は,分厚い遮光カーテンを閉める.
たぶん,ホテルに言えば部屋は替えてくれるだろうし,誰が悪いわけでもないが,こんなホテルを設計した建築家は,頭がおかしいと思う.
僕はまあ,単にいったん荷物を広げたのに,わざわざ引っ越しするのが邪魔臭くてここにいたわけだが,でもまあ毎日部屋から見える空はずっと快晴で,こういう景色の部屋で暮らしてみるのも,それなりに面白かった.駐車場観察日記でも,付けてみようかと思ったくらいだ.
ダムの公演は4日間で4回.ちょうど良いサイズの劇場で,うまくセットも収まって,良い出来の公演だと思うのだけれど,いかんせんお客さんが少ない.なかなかNY市民は,ここまで足を伸ばさないようだ.せめて今日・明日(土日)と,沢山来てくれる事を願おう.

@NY

昨日から「true」公演のためにNY入り.
折しも今日は,大統領選投票日.今こちらは夜23時過ぎで,TVをつけると,聞こえてくるのはOBAMA,OBAMAと,どうもオバマの勝利は確実みたい.McCAINの勝っている州もあるのに,アナウンサーの口からは,McCAINの名前はほとんど出てこない.
でも,NYの街中にいる限り,そんなに熱狂的な,例えばサッカーのワールドカップの時のような,大騒ぎは見受けられない.TVをつけると,何処かに物凄い人数が集まって,開票結果を固唾を呑んで見守っているのが映るのだけど,ホテルの窓から見る限り街は普段と変わりない.
でもまあ,そうは言っても,今日のセットアップは,選挙結果が気になるから早く帰りたい,という事で20時過ぎには終わったから,やっぱりみんな関心があるのは間違いない.何たって,国民が直接投票して選ぶんだからなぁ.
しかし,史上初のアフロ・アメリカンの大統領,もしくは初の有色人種の米大統領というのは,めでたいとは思うけれど,こんな莫大な負の遺産をブッシュ政権から譲り受けて,何とかなるんだろうか?
忘れっぽい民衆の記憶の中で,いつの間にか「やっぱ黒人の大統領なんてダメじゃん」と,全ての責任を押し付けられて,一期で消えていかない事を祈るばかりだ.大統領になった後で,「俺の政策がうまく行かないのは,みんな前ブッシュのバカのせいだ」なんて言っても,誰も納得はしないだろうし...
「true」@NY公演は,舞台の天井高4mという,今まで経験した事のないような条件下での公演.でも,現場での10日間の準備期間をもらい,リクエストどおりの音響システムも長期間借りてもらい,しかも舞台装置の建築足場は,天井高が低くて入らないからと,普通はレンタルするものをわざわざ購入して足を切ってもらうという,なかなか恵まれた公演でもある.契約はずいぶん前だとはいえ,こんなに経済が悪化している時に,きちんと対応してもらえるのは,ありがたい話だ.
舞台は,組み上げてみると,それなりの格好はついてきている.もちろん,オリジナルの舞台とは,見た目も受ける印象もずいぶんと違ったものになるだろうが,きっとこれはこれで面白いモノになるという確信じみたものはある.何より,普段のJapanSocietyの舞台を知っている人が見に来たら,その変わりようだけでも楽しめる事だろう.
さて,仕込みは明日まで.明後日からは,久々に腰を落ち着けて「true」のアップデート.ニュージャージーでのダム公演から東京に戻りDAF2008,その後京都での休憩を経て,山口でYCAM開館5周年をお祝いして,とってかえしたNY.楽しんでいきましょう.

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true in NYC 081108

trueのクリエーション/アップデートが続くが,みんな時差ボケに悩んでいる.
僕はどちらかというと,日本に居た10日間の方が時差ボケがひどくて,こちらに来てからだんだんと回復している様子なのだけれど,二徹や三徹夜くらい何ともないはずの他のみんなが,夜19時を過ぎるともう眠くてたまらない様子.
でも,とりあえず,今回一番の懸案だった「社会」のシーンは,そうそうにかなり再編集された音が出来てきて,振り付けが進んでいる.
音も照明も,一度データを変えればそれは定着するけれど,人体はそうはいかない.それに,明確に出来る事と出来ない事がわかるテクニカルに比べて,身体の動きはやってみないと当事者にも分からない,という事がパフォーマーにはある.ほとんどの事が,コンピューターを介してプログラマブルにできるようになった今,それでも人体を介したパフォーマンスが面白いのは,コンピューターを使う「ヒト」自体が,一番制御し難いモノだからと思う.
(でも,その人体の文字通り「顔」である顔面の表情筋をコントロールして見せている,true_音響・振動・システムデザイン・プログラミング担当のM鍋氏のYouTube動画は,ただいまホットに物凄いアクセスを記録している.http://jp.youtube.com/watch?v=YxdlYFCp5Ic
まあ,だからといって,今のところ本人にすごく良い事があったというわけでは無いようなので,誰か彼に幸せを運んであげて下さい...大きなお世話かもしれないけれど...)
明日の日曜は,今回唯一のオフ.もともとは休みじゃなかったんだけれど,NYC滞在という事で,そんなにぎちぎちに詰めればいいというものでもなさそうなので,休みになりました.この機会に面白いものを観れて,次にいかせればいいのだけれど...いまのNYCが,そんなにわくわくするほど面白いのかどうか,僕には分からない.ホテルと劇場以外,何処にも行っていないんだから,分からなくて当たり前か.
で,それでもやはり眠らないNYCというのは健在らしく,時差ボケで眼が明いた夜明け前5時過ぎでも,ホテルの向かいのビル群の明かりは煌々と灯っている.まあ,点けっ放しで帰るんだろうけど,朝7時頃にカーテンを開けると,もう向かいには人影が見えたりするから,本当に忙しい街なのだ.車のクラクションも,気にしだせばずっと響いてるし...

Nyc_night

そんな中,水曜の午前中は,Japan Society向かいの公園には,市が立っていた.たぶんニュージャージーからの,新鮮な野菜や果物,蜂蜜やオーガニックフードの屋台が出ていて,思わず買い求めた,しっとりとしたアップルケーキが,とても美味しかった.
あと,たぶんカリフラワー/ブロッコリーの亜種だと思うが,見慣れない野菜があって驚いた.何処かアジアの小国だとか,南アメリカなんかもそうだけど,市に行けば必ず見た事も無い野菜と出会うが,NYのど真ん中でも知らないものはあるのだ.
Strange_vegetable_01Strange_vegetable_02

そして,trueの進行状況.
なんだか,わざわざトリミングしたみたいに,映像が横長で上下切れてます.実際もこんな感じなのですが,でもそれで,作品の何処がマイナスなのかというと,照明灯体が目に入って眩しいという以外,さしたる違いは有りません.
こんなtrueが観れるのは,たぶん今回のみなので,皆さんお誘いあわせの上,是非おいで下さい.
Truenyc_01Truenyc_02

お待ちしています.